競合相手から調達も 電機各社、“合従連衡”で生き残りを模索
国内電機各社が復活してきた。各社は多角化の失敗や中国、韓国メーカーとの激しい価格競争で2008年のリーマン・ショック後に存亡の危機に直面したが、不採算事業から撤退し、赤字体質を脱しつつある。ただし海外勢に比べて稼ぐ力はまだ弱く、人口減少で母国である日本の市場が縮小するという国内企業特有の逆風にもさらされており、合従連衡で生き残りを模索する動きも鮮明になっている。
電機各社は00年代初頭、薄型テレビやDVDレコーダーなどのデジタル家電、原子力発電などに力を入れ、急成長を遂げた。だが、リーマン・ショックで世界の需要がしぼむと、逆にこれまでの巨額投資が重荷となり、大幅な赤字に陥った。
高付加価値に注力
この苦境から抜け出すための施策が「総合電機」からの脱却だった。海外勢との価格競争にさらされやすい製品からは撤退する一方、他社にまねされにくい高付加価値の事業に注力するなど事業構造を転換。18年3月期決算では東芝を除く電機大手6社がそろって最終利益を増やした。
とはいえ、各社の経営体力はバブル期やリーマン前に比べれば弱い。本業の稼ぐ力を示す営業利益率(売上高に占める営業利益の割合)は2〜8%台。韓国サムスン電子の営業利益率が20%を超えることを踏まえれば見劣り感は否めない。サムスンは売上高でも約25兆円をあげ、10兆円に満たない国内電機各社に大きく水をあける。
収益力の弱さは、事業絞りこみの副作用という側面もある。大手銀から債務者区分を引き上げられる東芝は、財務健全化の過程で収益の柱だった半導体子会社を売却。結果として「稼ぎ頭の不在」という課題に直面している。しかも国内電機各社の主力市場である日本は人口減少で縮小を余儀なくされ、さらなる事業モデルの転換を促す要因となっている。
このため、国内電機各社はさまざまな“合従連衡”を模索し始めた。
競合相手から調達も
日立製作所は今秋、自社ブランドのテレビ「Wooo(ウー)」の国内販売から撤退。系列販売店ではソニーのテレビを扱う。国内テレビ事業の採算が低迷したため、競合相手から製品を調達する異例の決断だ。
日立と東芝、東京電力ホールディングス、中部電力の4社は8月下旬、原子力事業で提携協議に入った。東電福島第1原子力発電所事故後、収益性が大きく落ちた原子力事業を本体から切り離したいとみられ、将来的には事業再編につながる可能性もある。
このほかオーディオの老舗として親しまれた名門企業のパイオニアは、事業をカーナビなどの自動車関連事業に絞ったものの、復活の糸口は見当たらないままだ。18年3月期まで2期連続の最終赤字に沈み、9月に香港を拠点とする投資ファンドから支援を受けることで基本合意した。
国内電機各社は窮地は脱したものの競争環境は厳しい。さまざまな形の「再編」はしばらく続きそうだ。(飯田耕司)