呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

中国の最新情報を上海・東京・神戸を拠点に活動する株式会社TNCリサーチ&コンサルティングの呉明憲が紹介します。

大家のために働くという構造

2012年11月29日 | 日記

 長沙といえば日本の平和堂が進出しているということで日本人の間でもそこそこ知名度のある都市です。湖南省の省都で人口は約650万人、いわゆる二級都市でそこそこの都会であるといえます。そんな長沙という都市に昨年12月にプレオープン、今年4月にグランドオープンした長沙悦方ID MALLというショッピングモールがあります。

 

 

 

 総面積12万㎡、入居ブランド数170のうち、70%が欧米、日本、韓国、香港、台湾ブランドで、うち70余りが初めて長沙にやってきたブランドです。入居率は90%を超えており、開業1年未満にしてはまずまずといえるでしょう。ところがこのモールに入居している店子のうち30以上が賃料を滞納しているという噂が流れました。では実際のところどうなのかというのをとあるメディアが取材に行ってきたのですが、見たところユニクロやH&Mなどはちゃんと営業しており、しかしながら地下1階から5階まででおよそ10数店が閉まっているとのこと。騒がれているような30以上もの店舗が閉鎖しているという状況でもないことがわかりました。そもそも閉鎖している店舗は小さい店舗ばかりです。閉鎖した店舗は来客数も少ないので、賃料を下げるべきだとして交渉しており、ロケーションはまずまずとのことなので、賃料さえ下がれば出てく理由はないというのが店子の言い分です。店子側としては最初は歩合家賃でやってほしいという考え方です。ということは、固定賃料を取られているのでしょう。

 

 業界内ではショッピングモールというのは開業当初は人の流れも多くないため、賃料の取り方も初期は最低保証条件付きの歩合家賃、成長期に入った段階で固定家賃と歩合家賃のいずれか高い方、そして成熟してきた段階で高めの固定家賃にした方が良いという考え方があります。成熟期になると家賃が高めでもみんなが入居したがるのでウェイティングになります。とにかく全国的にあちらこちらでショッピングモールができていますが、中国ではとにかく箱を持っている側の立場が強すぎます。さすがに最近は中国の賃料は安くないと認識されつつあると思うのですが、このような長沙で起こっているのと同じ現象が今後他の都市でも見られるようになるのではないでしょうか。飲食業なんて家賃負担が高すぎて大家のために働いていると揶揄されているくらいです。また、北京では一流企業を集めるべくCBD(Central Buisiness District)に高級オフィスビルを用意し、多くの一流企業が入居したものの、あまりに家賃が高すぎてどんどん出ていこうとする企業もあるようです。とにかくオフィスの賃貸期限満了にともなう継続交渉での家賃の上げ幅が普通じゃないという声をよく聞きます。ショッピングモールやオフィスビルも「大家のために働いている」と揶揄される日はそう遠くないかもしれませんね。


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