呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

中国の最新情報を上海・東京・神戸を拠点に活動する株式会社TNCリサーチ&コンサルティングの呉明憲が紹介します。

外国人も社会保険加入へ

2010年10月29日 | 日記
 日経新聞でも紹介されていたので既に知っている人もいると思うが、社会保険法(原文はここ)が施行されるのに伴い、中国で就労している外国人に対しても社会保険の加入が要求されるようになった。来年7月より実施される。新聞記事では企業の負担増について触れているが、まさにそのとおりだ。

 中国で就労している外個人には二種類いる。駐在員と現地採用だ。一般的にはいずれのケースでも日本の保険会社の海外旅行傷害保険で医療面はケアされており、駐在員に関してはその他社会保険は会社が面倒を見て日本で納付している。一方で、現地採用の場合は年金等の部分は自己負担しなければならず、海外にいることもあり納付していない人も多いと思われる。おそらく駐在員に対しては会社がケアする方向になると思うが、問題は現地採用社員だ。現地採用社員は表面的な給与が中国人と比べて高いかもしれないが、社会保険部分がなかったので、それを勘案すると中国人社員と比べてべらぼうに高いというわけでもないだろう。しかし、社会保険が義務付けられるとこの議論は成り立たなくなる。中国の社会保険は結構高いからだ。企業がその部分の負担を吸収するためには給与面を調整する以外の方法がなくなるだろう。現地採用社員から見た場合、所詮中国の医療保険でカバーされる範囲は一般的に付保されている海外旅行傷害保険よりも低レベルだし、失業保険てなにそれ?と思うだろう。なぜならば、雇用がなくなれば就業ビザの概念が成り立たなくなり、国内滞在要件が満たされなくなるからだ。そんな人に対して失業保険??また中国の年金だって別に欲しくないだろう。一般的に高齢者が中国に滞在するビザの取得は難しく、この観点から見た場合年金なんて関係がないからだ。逆にこれを根拠に、海外傷害保険切られる方が困るだろう。

 クエスチョンマークを感じる人も多いだろうが、日本の場合でも(まじめに納付するかどうかは別として)外国人は年金の納付は要求される。日本の場合、「社会保障協定」を結んでいる国については、日本で納めた保険料は母国の年金に反映されることになり、払い損(掛捨て)にはならないそうだ。母国と日本の2つの国の保険料を支払う「2重負担」がなくなるということだ。ちょっと調べてみたところ、2010年現在でドイツ、イギリス、韓国、アメリカ、ベルギー、フランス、カナダ、オーストラリア、オランダ、チェコの10カ国と協定を結んでおり、また、スペイン、イタリア、アイルランド、ブラジル(7月に新たに署名)とも協定について署名済みの状況だ。日中間では協定が結ばれていないので、2重負担になるのだろう。

 さて、これから現地採用はどうなるのだろうか。コストが上がってしまうので企業側としてはそのコストに見合う人材のみを確保するという方向がより強まっていくだろう。新聞では「外国人が中国に就職先を求める流れを後押ししそうだ」とあるが、企業がより採用を厳選する方向に行く流れになった場合、必ずしも「後押し」には繫がらないだろう。個人的には日本人の現地採用者は女性の能力が男性に比べて相対的に高い。もちろん属人的に男性でも優秀な人はいますが。ということは、今後現地採用者は減少していき、特に男性の現地採用者は大きく減少していくのではないかと思う。現地採用社員は駐在員と比べてコストは抑えられるが、現地中国人社員でも能力の高い人はおり、社会保険加入によりコスト競争力もなくなるとすれば、外国人への社会保険がスタートすることで外国人の就労が後押しされるとはあまり思えないのだが。。。



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