呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

中国の最新情報を上海・東京・神戸を拠点に活動する株式会社TNCリサーチ&コンサルティングの呉明憲が紹介します。

労務派遣、同工同酬に福利と社会保険を含まないの意味は?

2013年09月02日 | 日記

 労務派遣が大きく制限されることになると言われています。中国ビジネスに携わっている人であればご存知かと思いますが、労務派遣は臨時的、補助的、代替的な業務に限られ、条文の中で次のように定められています。

 

臨時的

継続期間が6 ヶ月を超えない職位

補助的

主要業務を行う職位にサービスを提供する非主要業務の職位

代替的

使用単位の労働者が職場を離れて研修したり、休暇を取得する等の理由で勤務できない一定期間において、他の労働者が代替可能な業務を行う職位

 

 この条文から、臨時的、代替的はしょうがないけれども、補助的業務という位置づけであれば労務派遣を続けられるという考えもあります。たとえば、営業助理(営業アシスタント)、財務助理(財務アシスタント)のように、助理というアシスタントに相当する肩書は補助的な業務なのだという考えですが、まあ言葉遊びの世界ですね。

 

 さて、人力資源社会保障部の担当者が示したところによりますと、労務派遣従業員は「同工同酬」(同一労働同一賃金)を受けるべきだが、「同工同酬」は福利と社会保険を含まないとのことです。この辺りもう少し踏み込んでみましょう。

 

 なぜこのような考え方が出てきたのでしょうか。人力資源社会保障部や全国総工会は「同工同酬」に福利と社会保険を含むべきと希望しているのですが、一部の部門や中央企業から猛烈な反対を受けたために福利と社会保険は含まずとトーンダウンしたようです。とある中央企業の年間利益は300億元あり、もしその労務派遣従業員に本来的な意味の「同工同酬」、つまり福利と社会保険も正式従業員と同等な扱いにすれば、福利と社会保険だけで260億元が吹っ飛んでしまうそうです。企業からするとこれが実施されると確かに大きなダメージであるのは間違いありません。反対派の勢いに押されてトーダウンしたのは間違いないでしょう。

 

 ここからがわかりにくいのですが、先ほどの人力資源社会保障部の担当者によりますと、これは使用単位が派遣従業員に対して福利と社会保険を提供しなくてよいという意味ではない、《労働契約法》では使用単位は使用職場に関連する福利待遇等を支払うべきだ、としております。ただし、「同工同酬」は福利と社会保険を含まないというのは、福利待遇において企業は正式従業員と労務派遣従業員の基準を自ら把握することができることを意味しているとのことです。言ってることがよくわからないですね。

 

 また、「同工同酬」には条件があり、同一職場の同一量の労働による同等業績を取得する労働者は同一の労働報酬を獲得すべきで、単純に職位が同じであれば同じ給与をもらえるわけではないともコメントしており、これは確かにわかるのですが、評価するがその裁量でなんとでもできてしまうように思える表現ですね。

 

 労務派遣従業員に関する論争はもうずっと続いていますが、もういい加減に落ち着いてほしいですね。少なくとも便利だからと言うことで形式的に労務派遣の形態を取り、正規従業員と登壇の差をつけていない企業にとっては関係ない話ですからね。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。