呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

中国の最新情報を上海・東京・神戸を拠点に活動する株式会社TNCリサーチ&コンサルティングの呉明憲が紹介します。

中国のホテルマーケット

2012年09月13日 | 日記

 上海駅近くにあったインターコンチネンタルホテル、上海のディベロッパーが15億元かけて造り上げたもので、それをインターコンチが運営していたわけですが、わずか2年余りでその看板を下ろすことになりました。インターコンチがこのように看板を下すのは初めてではありませんし、そのような事例はほかにもあります。上海だとリージェントホテルでもありましたし、北京だとマリオットでも同じようなことがありました。いうならば提携関係解消のようなものでしょう。物件オーナーは別のホテルをまた新たに探せばいいですし、ホテル側もまた別の物件を探せばいいわけですから。もちろん大きな商売なのでそうそう簡単に見つけられるものではないでしょう。合弁会社はよく結婚でたとえられます。二つの会社が一緒になって同じ方向に向かって行くことからそのようにたとえられますが、ホテルも同じようなものですね。ホテルブランドのコンセプトに合う建物で、ブランド価値を最大化して効率経営を行っていく、まあホテルの場合はこういう方向でしょう。ところがオーナー側はとにかく5つ星ホテルにさえ入ってもらえればいいという考え方のところも多いようです。5つ星ホテルだってそれぞれ個性があり、例えばハイアット、シェラトン、ウェスティンが同じコンセプトかというと全く同じというわけではないですよね。結局、実際に運営するホテル側とコンセプトがかみ合わないケースが見られるようになってしまうわけです。まあ、インターコンチの場合はロケーションが悪かったと思います。上海駅は確かに駅前の立地と言えば聞こえはいいですが、決して柄のいい場所ではないのでそもそもハイアットであれインターコンチであれあまりふさわしくない場所だと思います。そういえば以前の上海のリージェントホテルも車で行く人はいいのですが、地下鉄駅からはそれほど近いというわけではなく交通の便が良くなかった印象があります。またインターコンチに話が戻りますが、なにせガラの悪い場所、建物は豪華なのですが、玄関付近には近所の住民がうろうろしており、5つ星ホテルの玄関前の風景とは言えない、インターコンチとしては耐え難くなったのかもしれません。

 

 オーナー側もホテル側も中国ホテル業界に商機あり、ということであまり時間をかけずに立地選定をして失敗してしまっているともいえます。で、そもそも本当に中国のホテル業界に商機はあるのかというと、やりようによってはそれはあると思います。なんだかんだいって成長しているマーケットですから。

 

 

 しかしながら、ホテルマーケットの調査を行っているSTRグローバルによりますと、中国のミドルハイエンドのホテルの今年1-7月の宿泊率は59.9%しかなく、前年比落ち込んでいるとのことです。60%切っているというのはちょっと低すぎますねえ。こんな状況であるにもかかわらず、アジアパシフィック地区の今後3-5年における新ホテルのプロジェクトの56%が中国に集中しているという事実もあります。当然増えれば増えるほど競争は激しくなっていく訳です。万博の時には不足したホテルも、その時に過剰に用意した分だけ今は余ってしまっているのでしょう。

 

 まあ、看板を下ろすという行為は簡単に言えば失敗したわけで、その原因は色々とあるのだと思います。ホテル側の管理者が中国マーケットを理解していないだの、理解していない人だからすぐに首がすげ替えられ、落ち着いたオペレーションができないだのと言う意見もあるようですが、インターコンチに関して言えば立地が悪いというのが最大の理由でしょう。そもそもあんなところに5つ星ホテルを運営しようということ自体は的外れなのは上海在住者であれば言わずもがなだと思うのですが、おそらく海外のみから中国マーケットを見た人が事情も分からずに物件オーナーに言いくるめられたというのが本当のところなのかなあと思います。「中国市場はパイが大きい」、「将来性がある」というのに目がくらんで事前にちゃんとリサーチをしなかったツケと言えますよね。


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