呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

中国の最新情報を上海・東京・神戸を拠点に活動する株式会社TNCリサーチ&コンサルティングの呉明憲が紹介します。

総経理になると人格が変わってしまうケース

2013年06月03日 | 日記

 いつも読んでくださっているマニアの方々、ありがとうございます。書いている本人は多くの人に見てもらうつもりで書き始めたのですが、どうも読者はマニアックな方が中心だということが最近分かってきました。まあ中国ネタにほぼ限定して、しかも非日系に関する情報の比率も高いのでマニアックにもなりますね。さて、今日の話題は「総経理」についてです。

 

 中国の現地法人に駐在される駐在員は日本本社勤務の人が派遣されるのが通常です。最近では人材のグローバル化も進んできており、日本採用の外国人も増えてきています。ただし、日本採用の外国人にも二通りあり、日本育ちでアイデンティティが限りなく日本に近い外国人と、あとから日本にやってきた外国人、端的に言えば日本留学してそのまま日本に住み着いた外国人で、こういう人たちのアイデンティティーは日本にはあまりないでしょう。そして現地の総経理として派遣される人の中で後者のアイデンティティーが日本にはない外国人、中国の現地法人だとアイデンティティーが日本にない中国人が派遣されるケースがあります。そもそも中国人だし、言葉も当然できるし、その辺の日本人よりよっぽど中国のことをわかっているからという理由で選ばれていると思うのですが、こういう理由で選ぶというのはよく理解できますし、ありだと思います。しかし、こうした「アイデンティティーが日本にない中国人」が困った存在になるケースはよく聞きます。

 

 アイデンティティーが日本にない中国人も駐在員として派遣されるくらいですので、日本本社でも非常によく働く真面目な社員であるのは間違いないと思うのですが、どういうわけか中国の総経理として派遣されると「人が変わってしまう」ケースがあります。誤解のないように付け加えますともちろん全員がそうなるわけではありません。ただ、よく聞こえてくるのです。前職時代にあった話ですが、とある現地法人の副総経理の依頼を受けて私の上司がその会社に行ってきたところ、なんとその会社の総経理はつくえの上に足を乗せたまま話してきたそうです。あり得ない話です。こういう人なので当然問題で、だからこそ副総経理は社内を何とかしたいという思いからコンサルティング会社に来てもらったのですが、それにしてもびっくりです。不満に思う人は当然たくさんいるわけですが、現地の副総経理レベルが日本本社に総経理に関する不満を伝えても日本本社の方から言い返されてしまうそうです。なぜならば、そういう総経理は往々にして日本本社の偉い方とつながっていて、それこそ不満を伝えようものならかえって自分の身が危うくなってしまうのです。で、結局誰もそういったふるまいを止めることができず、現地で総経理は好き放題してしまうというパターンですね。結局この時の話は総経理がコンサル会社なんて全く必要ないということで、現状を変える機会にすることはできませんでした。

 

 この手の話は今でも時々聞こえてきます。先日も知人と話していたところ、現地に派遣された日本採用の中国人総経理の話になりました。なんでも日本にいるときは非常にまじめに働いていたのですが、現地に行ってからはやるべきこともちゃんとやらず、周りがとがめると露骨に嫌がったりして、非常に困っているという話です。私が、「派遣されてからその人は人が変わったでしょ」、「本社の偉い方にかなり気に入られている人でしょ」というと、まったくその通りですという返事でした。なにせ偉い方に気に入られていることもあって周りがおかしいと言っても受け入れられないのです。現地では総経理という権限も持っているだけにたちが悪い。まさにアイデンティティーが日本にない中国人の悪い意味での典型的な例と言えるでしょう。

 

 こういう話ってなかなかなくならないものですね。


改正労働契約法があと1ヶ月で実施

2013年06月03日 | 日記

 改正労働契約法が7月1日より施行されます。この改正で最も大きな話題となったのは派遣従業員の定義が明確になり、明確になりすぎたがゆえに派遣という形式を使いづらくなるのではないかところにあります。あらためて復習しますと、明確になった内容というのは派遣というのは臨時的、補助的、代替的な業務で行われるべきものであるということです。それぞれの定義は次の通りになります。

 

臨時的

継続期間が6 ヶ月を超えない職位

補助的

主要業務を行う職位にサービスを提供する非主要業務の職位

代替的

使用単位の労働者が職場を離れて研修したり、休暇を取得する等の理由で勤務できない一定期間において、他の労働者が代替可能な業務を行う職位

 

 次に、派遣の形式で問題となっているのは「逆向派遣」と呼ばれる形態です。これは使用会社がすでに労働者と事実上の労働関係を構築し、しかし使用会社は労働者と労働契約を締結せず、労務派遣会社を探して労働者と労務派遣契約を締結し、労働者は派遣従業員の名義で使用会社で勤務することを指します。フェスコや中智のような人材派遣会社を経由するパターンがこれですね。非常によくみられるパターンです。しかし、これは厳密には違反だという見方があります。中国では労働契約が基本で、あくまで労務派遣は補充的な形式にすぎず、臨時的、補助的、代替的な業務でのみ適用されるべきという考え方からです。そして、それを判断する基準として以下の三点があげられています。

 

1.労働者が労務派遣会社と契約を締結する前に、既に使用単位で勤務していたか否か。

2.労働者と労務派遣会社が自由意志であるか否か、使用単位の強制を受けたか否か。

3.労務派遣の職位が臨時的、補助的、代替的に当てはまるか否か。

 

 労働契約法の条文を厳しく解釈するともう派遣形式はほとんど使えなくなるなあと感じる人が多いでしょうし、私もそう思います。今のところまだスタートしているわけではなく、7月1日から施行されてからどのように運用されるか様子を見ていこうという人が多いでしょう。

 

 派遣形式が使いづらくなることに対してどのようにリスクヘッジばかりを考えているところが多いのではないかと思いますが、そんな小手先のことでなく、労働契約法をのものを受け入れて、それに基づいて会社としての人事制度・労務管理を行うのが本来あるべき姿ではないかと思います。