呉明憲コンサルタントの中国ビジネス日記

中国の最新情報を上海・東京・神戸を拠点に活動する株式会社TNCリサーチ&コンサルティングの呉明憲が紹介します。

腰をすえて

2011年09月19日 | 日記

 上海にあるとあるスペインの靴屋さんのお話です。店舗の名前はel navalonといいます。靴屋なのですが、具体的には伝統的になスペインのブーツを扱っていおり、商品構成としては男性ものが女性ものよりも多いです。

 

 ここのオーナーが店舗の立地を選ぶにあたり重視したのが建物の雰囲気です。扱うものがスペインブーツですので、ちょっとこじゃれた昔風の洋館が選ばれました。外国人が結構うろうろしている通りで、立地は三叉路にあり、地下鉄駅からもそこそこ近く、人の流れもそこそこついてくるだろうと見込んだわけです。

 

 また、靴屋、特に大衆的な靴屋が並んでいるところにスペインブーツのお店なんか出しても浮いてしまうので、自らのグレードを上げられるような場所を選んでいます。だからこそこじゃれた通りなんでしょうね。

 

 さて、店舗の運営実態についてみて行きます。

 

1.初期投資

 初期投資は約15万元必要で、その内訳は最初家賃・保証金、在庫及び内装費です。店舗面積は20㎡と小さいのですが、スペインブーツは種類が多いわけではなく、在庫さえある程度おくことができればそれほど大きな面積を必要としません。ひとつのデザインにつき数足しか在庫がなかったりします。ほかの人と同じは嫌、という人にはいいかもしれません。

 

2.コスト

 毎月の支出で最も大きいのが家賃で、毎月1万元程度です。従業員が2名いて、このコストが3000元程度(これは福利厚生も含めてということなので個人的には安過ぎるように思います)、これらと光熱費等を合わせて毎月のコストが14000元です。これをまかなうためには毎月11足のブーツを売る必要があります。3日に1足のペースですね。

 

 

3.ターゲット顧客

 扱う商品はスペインブーツですが顧客の中で外国人が占める比率は大きくなく、中国人メインです。当然購買力がある人である必要があり、さらにはファッションセンスも持った人となります。小ぶりなテンポなので外国人だけを対象にするようなレベルかと思いきや、中国人がメインになっているんですね。ちなみに会員カードを発行しており、会員のリピート率、購入単価とも高い傾向にあるとのことです。囲い込みができているということがいえますね。

 

 中国に進出するに当たり、何を以って成功というか、会社によって異なるでしょう。日本で年商数百億売っている会社が中国で数億円しか売れず、それが中長期のビジョンの中での入り口の部分であればまだしも、それが最終形になるようであればやらないほうがましといえるでしょう。逆に、日本で年商数億円レベルの会社が中国で数千万売れれば、会社規模としては成功といえるかもしれません。このあたりははっきりさせる必要があるでしょう。ここで紹介した靴屋がどのレベルを成功としているかはわかりかねますが、個人が行っているレベルの商売で、特に知名度が高いブランドでもなく、店舗の規模も小さいことから、食べていければいいというレベルを成功としているのかもしれません。もしそうなのであればすでに成功しているということになりますね。私としてはこの店舗のオーナーはスペインから中国にやってきて腰をすえてやっている点に注目してもらいたいのです。なんとなく中国で売れればいいなあという軽い気持ちで片手間程度に中国での販売を手がけている会社は少なくないと思いますが、やはり腰をすえてやらないと。腰をすえてやることで現地の制度、習慣、流行、顧客の声、こういったものがわかったり入ってきたりするようになるので、これを反映させることで顧客ニーズにあった展開を行うことができるようになります。そういう意味で、確かにこの靴の店舗は小さいかもしれませんが、腰をすえてやっているという点は尊敬に値するのではないかと思うのです。