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上司の退職

2006年06月24日 | 日記

直属の上司ではないが、同じ部の上司が今日で退職された。
30年近く勤められ、会社の基盤を作られた。
たくさんのことを教えて頂き、またたくさん怒られた。
大変お世話になった。

考えてみると、その上司からは怒られてばかりだった。
でもその上司の言葉も忘れない。
「俺はな、真剣なヤツしか怒らない。
どうでもいいヤツには、何もいわんぞ。
冗談でも言って、笑ってりゃいいんだ。」

その上司はいつもプロ意識をもっていった。
とにかくいつも強く強くあり、弱いところは見せない(ようにしていた)人だった。

周りからは、その上司はエネルギッシュで、いつも冗談(おやじギャク)ばかり言う面白い人間と思われていた。
でも、その見方は表面的だ。

以前商談で同席し、その上司と二人きりになった時に言われたことがある。
「俺はな、本当は人と話もできない、暗い人間だったんだ。
こうやって大きな声を出したり、冗談を言うのはワザとだぞ。
業者には笑って、余裕があるところを見せるんだ。」
自分は仕事中は殆ど笑うことはないが、それ以来商談中は出来る限り元気に対応し、笑うようにしている。

直属の部下である私の先輩は、私以上にその上司と付き合いが長い。
二人の間では殆ど冗談や仕事以外の話はなかった。
でも、二人が一番分かりあっていた。

最後の挨拶で、我々ひとり一人からの挨拶があった。
その先輩は、自分の番になっても何も言わず、ただ小さな涙を滲ませた。
その後の我々のコメントは、その先輩の後ではどれも安っぽく聞こえた。

本人の希望で、特別な送別会はなかった。
それもその上司らしかった。
最後まで明るく笑っていた。
最後まで、「強く」あり続け、「気持ち」を出さなかった。

残念ながら、社内では、いや部内でも、会話はあっても対話はない。
立場を超えた本音の意見交換はなかった。
少ない人数で仕事をやり、それぞれの責任が思いので、皆自分を守ることで精一杯だ。
その上司の口ぐせも「ガードを固めろ」だった。
心に大きな隙間を持っている人であった。
この会社に10年以上勤める人間は皆、大なり小なり心に隙間を持っている。
もちろん、自分もそうだ。

誰ももその上司の今の本当の気持ちは分からないだろう。
直属の部下であるその先輩以外は。

その上司が急にいなくなって大丈夫か、という人がいる。
自分は心配していない。
その先輩がいるからだ。
本人が自覚している以上に、大きなものを引き継いでいる。
(すでに先輩のオヤジギャクは誰もまね出来ない域に達している)

確かにしばらくは大変かもしれない。
でもきっと、やってくれるだろう。
いや、その先輩しかできない。

その上司は我々を真剣に怒り、指導してくださった。
その真剣な先輩に、自分も真剣にできる限り協力したい。

これが、自分がこの会社にいる間にできる、せめてもの恩返しだ。


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2 コメント

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確かに・・・。 (心の友♪)
2006-06-24 21:49:01
確かにあの師弟関係は誰にも邪魔できなかった。

あんなに信頼しあえる上下関係はなかなかないような気がする。



あの上司の孤独を軽くしていたのは、長年付き合ってきた社長でも同期仲間でもなく、「彼」だったよね。
返信する
ぜひそういう人を目指したいです (ニャンコ星人)
2006-06-26 11:19:32
ポリシー持って叱ってくれる人って宝物ですね

たとえ自分と違っても、ぶつかったエネルギーで新しいものが生まれる感じがします。
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