日々の恐怖 6月30日 仮住まい(2)
そんなある日、俺が学校からマンションに帰ってくると、なにやら奇妙な視線を感じた。
“ 友達が来てるのかな・・・。”
と思って見渡しても誰もいない。
おかしいなと思っていると、あることに気が付いた。
隣の部屋、Aの住んでいた部屋の扉が少し開いているのだ。
そのマンションの扉はドアクローザーが付いていて勝手に閉じる仕組みになっていた。
なので少し空いてるということは、誰かが裏で押えて開けているか、何かがつっかえて閉じないかのどちらかということ。
“ 何だろうな・・・・・・。”
って思ってジーッと扉を見てると、急に、
“ バタン!”
と扉が閉まった。
その時は驚いたけど、マンション古いし建て付けが悪くなって閉まんなかったんだろうと自己解決してしまった。
ところが翌日再び学校から帰ってくると、また扉が少し開いている。
“ やっぱ建て付けが悪いのかなぁ・・・。”
と思ってその扉の前を通り過ぎようとしたら、今度は、
“ キィッ。”
と少しだけ扉が閉まった。
その時になって初めて、誰かが扉の向こう側にいるって気が付いた。
でもその時俺は隣のおばさんらは引っ越したと思い込んでいたので、泥棒が潜んでいると勘違いして慌てて家に逃げ帰った。
そして両親が帰ってくると、
「 隣の引っ越したはずの部屋に誰かいた!」
と訴えた。
ところが、
「 お隣は○○さんでしょ? なに言ってるの?」
みたいにすんなり返されたのを覚えている。
どうやら姿を見かけなくなってはいるものの、時々隣の部屋から生活音が聞こえていたらしい。
だから両親はまだ隣にAの家族が住んでいると知っていたんだろう。
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