日々の恐怖 6月16日 お守り
小学校2年生くらいのときから、妙な光の玉を度々見るようになった。
家族にその話をしても嘘つき呼ばわりされるので、今度その光の玉を見たときは、証人となる人を連れてきて、一緒に見ようと頑張った。
あるの夕方、近所の神社の前で光の玉を見つけた。
自分は急いで家に帰り、母親を連れてやってきた。
母親は、
「 何?これ?」
と、信じられない物をみるようにそっと手を伸ばしたが、急に、
「 帰ろう。」
と言って、自分の手を引いて家に帰った。
夕食の時間、自分は光の玉の話を持ち出した。
「 お母さんも見てるんだから、嘘じゃないよ、ね。」
と母親の方を見たが、母親は無反応だった。
無反応と言うより、何か怒っているようにも見えた。
兄貴が、
「 嘘だ、嘘つき。」
と冷やかしてくるので、
「 お母さんも見たじゃん。
ねぇ、見たでしょ?」
と母親に証言してもらおうとすると、
「 いいから早く食べなさい!」
と怒鳴られた。
暫くたって、伯母さんが家に遊びに来て、自分にお守りをくれた。
「 ○○ちゃんが、事故や病気をしないようにってお守りだから、いつも持っているんだよ。」
と言って、首からさげてくれた。
それから、風呂に入ったり、プールに入ったりする以外は、いつもお守りを身につけた。
ある日、家に帰ると、伯母さんが遊びに来ていた。
「 ○○ちゃん、お守りどうした?」
と聞かれて、初めて無くなっていることに気が付いた。
「 あれ?どこかに落としちゃったのかな?
探してくるよ、多分学校かな?」
と出かけようとすると、伯母さんは、
「 あぁ、いいよ、いいんだよ。」
と出かけるのを止めた。
「 また持って来てくれるの?」
と聞くと、
「 もういいよ、役目が終わったんだからね。」
と、無くしたことは怒られなかった。
母親も怒っているかと思ったが、何も言わなかった。
その後、妙な光の玉を見る事は極力少なくなったが、光の玉の話をすると、伯母さんがやって来てお守りを渡された。
中学生くらいの頃から、妙な光の玉を見ることは無くなった。
そして、伯母さんからお守りを渡されることも無くなった。
母親が何を見たのかは、今でも分からない。
高校時代に一度聞いたことがあるけれど、
「 そんなこと、あったかねぇ。」
と忘れた風を装っている。
母親は四姉妹の一番末っ子で、母親の実家に住んでいる長女が、近くのお寺からもらって来たお守りを三女の家に郵送で送り、ソレを三女の伯母さんが自分に持って来てくれるのです。
子供心に、なぜ長女の伯母さんが直接家に郵送しないのかが不思議でした。
米やら野菜やら色々送ってきてくれるから、住所を知らなかった訳でもない。
夏休みに長女の伯母さんの家に遊びに行った時に、聞いた事もありましたが、ただ笑って、質問の答えは返って来ることはありませんでした。
それに、そばにいる他の伯母さんたちが、話を逸らすふうにも思えました。
なんとなく聞いてはいけないことなんだと子供心に思いました。
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