日々の恐怖 6月21日 捕まえようぜ(1)
俺も含めて地元の子供たちが遊ぶ小さい山があった。
その山頂は、ちょいちょい山火事があるせいで高い木が一本もなく、だだっ広い草原になっていた。
大人の目が届かない、とんでもなく広い場所だから、そこは子供たちの格好の遊び場だった。
草原の端っこの方には、ばかでかい岩があった。
岩のてっぺんには○○神社と書かれた小さい祠が建てられていて、中にはサッカーボールより一回り小さいくらいの、しずく形の石が祭ってあった。
それは風化してボロボロだけど、丸いニコニコ顔で、稲穂のようなものを持った神様の像だった。
俺らは岩登りをして遊んだついでなどに、神社を拝んだり五円玉を供えたりしていた。
この山で遊ぶ子供たちの間には、
“ 登り下りの途中、山道から外れてはいけない。”
というルールがあった。
それは、親や先生に言われたからではなく、みんながみんな、なんとなく知っていることだった。
実際、山頂までの道の両脇は、大人でも余裕で迷子になるくらい雑木が茂っていたから、うかつに入り込めばかなり危険なことは、子供でも常識的に理解できた。
それでも、子供は基本的にアホだから、テンションが上がると大事なことをすぽーんと忘れてしまうことがある。
俺と友達の合わせて四人で、いつものように山道を登っていたときが、まさにそれだった。
山道を登り始めて三十分、山の中腹くらいで道の脇の藪が、ガサガサっと音を立てた。
猿か、それともイノシシかと俺らが身構えると、藪から出てきたのは雉だった。
滅多に見ない生き物だから、俺らのテンションはマックスになった。
誰かが、
「 捕まえようぜ!」
と言ったとたん、俺らは雉を追いかけて雑木林に突入していた。
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