大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 6月3日 笹舟(2)

2016-06-03 18:42:56 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 6月3日 笹舟(2)



 翌日、その川に行ってもその子には逢えなかったし、周りの友達に聞いても、誰も、

「 そんなヤツは知らないし、今は転校生もいない。」

と言っていた。
 それからしばらく経った頃、懲りずにその川で遊んでいたら、草むらの陰に、

『 危ない!ここに入らない!』

と子供が川で溺れている絵看板が折れた状態で倒れており、傍に花束と小さな箱に入っている飴のお菓子が置いてあるのに気がついた。
 その看板があの子と別れた岸辺の辺りにあったのが妙に気になった俺は、川で遊んでいる事を怒られるのを覚悟で学校の担任に聞いてみた。
すると、

「 10年くらい前になるけど、その川で小学校3年生の男子学童が溺れて亡くなった。」

と聞かされた。
 そして、

「 二度とその川で遊んではいけないぞ!」

と厳しく怒られた。
 その時の俺は怒られた事よりも、あの子がその男子学童だろうと考えた。
そして不思議と怖いとは感じずに、気の毒にと、子供ながらに思った。
 先生には怒られたが、その後も懲りずに川で遊んでいたけれど、とうとうその子には逢えなかった。
もしかしたら、ただ偶然親戚のところに遊びに来ていた違う校区の子供だったかも知れないが、当時の事を思い出すと、なぜかそうじゃないという変な確信がある。
 なぜかというと、別れ際にその子が、

「 これ、あげるよ、また遊ぼうね。」

と言って、何とも寂しそうに笑いながら、ポケットから珍しい小さなお菓子を俺にくれたからだ。
そのお菓子は、オブラートに包まれ甘酸っぱい味のオレンジ色をした小さなボンタン飴だった。
 このことを思い出すと、今も何ともうら寂しい気持ちになってしまう。
昔に住んでいた家の少し離れたところだったが、この場所は、何かの波長もしくはメッセージを感じる場所だったのかも知れないと思う。












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