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読んだ本の感想と旅行の日記を書いていきます。
後、その他なんかあれば・・・

23冊目:「坂の上の雲(七)」

2010-10-17 14:19:31 | 
総評:★★★★★ 以下、一巻から変わらず
面白い度:★★★★★ 
読みやすい度:★★★★☆ 
ためになる度:★★★★☆ 
また読みたい度:★★★★★ 


日露戦争も終盤に差し掛かった七巻は、日本の最後の力を振り絞っての陸軍の一大決戦、奉天会戦と、日露戦争クライマックスの戦いとなる日本海海戦の最初の部分を描いている。


陸軍の日本とロシアの兵力は、以前から変わっておらず、日本はロシアの3分の1程度しか兵をもっていない。しかも旅順や遼陽の戦闘などで、兵力の消耗がとても激しく、兵員も十分に休んでおらず、兵力は疲弊の一途を辿っていた。

ロシアの将軍クロパトキンは、日本のこの消耗を知らないので、まだ兵力があるものと考えて、大きな攻勢はまだ仕掛けていなかった。
日本はここでロシアに攻められたらひとたまりもなく、ひとたびロシアにこの状況を感づかれたら、一挙に崩され、壊滅することは必至であった。


戦費調達や補給などの限界もあり、日本はこれ以上戦争は続けられない。日本はこの状況から、奉天で最後の総攻撃を仕掛け、戦況を押し切る形で終了し、後はロシア側との講和に持っていくというシナリオを描いた。

一方ロシアのクロパトキンの方も、偶然ではあるが、同じような総攻撃の計画を同時期に練っていた。

どちらも総攻撃の計画をしており、ロシアの兵力が日本を上回っていることから、このまま当たってしまうと、ロシアに大きな分がある。
ただしここで大きく影響するのが、両者のトップに立つ将軍の力である。


奉天会戦は結果的に日本軍の奇跡的な勝利となるが、ここで勝敗を分けたのは、日本の常に先手を取った戦略と、クロパトキンの拙い統帥能力によるものであっただろう。


日本は奉天会戦を先手を取る形で火蓋を切った。
事前に練った作戦を計画通りに行い、戦闘に突入したが、ロシアは先手を打たれた分、状況に対応しようと後手に回ってしまった。
そこから、ロシアの当初の計画が崩れてしまった。

またクロパトキンは乃木軍を過大評価しており、乃木軍出現の報を受けるとそこに兵力を集中させるように、兵を不必要に移動させてしまった。
そこで戦闘に参加できないロシア軍もあり、日本を若干ではあるが有利にさせた。


今までもそうであるが、ロシアは決死の総攻撃をかければ、日本はもろくも崩れ去ったであろう。
しかし、いまだ日本の現状を知らないクロパトキンは日本にはまだ兵力があるものと勘違いしている。

日本の攻めの勢いは鬼気迫るものがあったらしい、クロパトキンはその勢いや勘違いもあり、日本に対してはずっと防御の姿勢をしいていた。
日本を(勘違いではあるが)恐れるあまり、その恐怖がクロパトキン自身を支配してしまい、ここでも退却戦を演じることになってしまった。


日本も作戦は練ってはいたが、兵力の差から、勝てる見込みは全くないような作戦であった。しかし、クロパトキンの性格や兵法を今までの戦闘から知っていたからこそ、このような攻勢の形で、それも奇跡に近いような勝利で終わらせることが出来たと思う。
ただし、奉天の日本の犠牲もただならぬものがあった。

明らかに劣勢の状況からかろうじて勝利を収めることは出来たが、この勝利は相手の将軍が自滅したようなもので、10回に9回は失敗するようなものであったのではないかと思う。この勝利に慢心し、日本は強い、だったり、無敵と思って天狗になってしまったことから、太平洋戦争のような馬鹿みたいな戦争を後年にてしてしまったのではないかと思う。



この奉天の勝利のあと、日本陸軍の将軍、児玉源太郎は戦争を収束に向かわせるために、本国の大本営に講和の意見を具申しに行っている。
また同じころ外国も、この戦争から漁夫の利を得ようと、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカなどの勢力がそれぞれ様々な思惑の元、外交戦略を行ってきている。

日本とロシアの問題だけではなく、他の国にも大きく影響を与える戦争のなかで、自分が国がどれだけ利益になる形で戦争を終わらせることが出来るか。その着地点をそれぞれが探している。
外交の難しさというのが、こういった所から分かった。



最後に、日露戦争のクライマックスである日本海海戦という戦闘があるが、日本海での海戦は、日本とロシアの心理戦から始まっていた。

ロシアはベトナムの辺りから日本に向かっていくのだが、その目的は日本をかすめて、その奥のウラジオストックの港に入港することであった。
日本は、そのロシアの艦隊を一隻たりともウラジオストックに入れてはいけない。

よって、日本はロシアの艦隊が、日本海経由で来るのか、または太平洋経由で来るのかという疑念があった。
日本は日本海にて入念な準備の下、ロシア艦隊を待ち伏せていた。
ここでロシアが太平洋経由でウラジオストックに入る経路をとってしまった場合は作戦が失敗となってしまう。

主人公である秋山真之は、日本海軍作戦参謀として、第一軍の旗艦に乗っているが、自分が立てた作戦が果たして成功するのか、日本海経由の読みは当たっているのかとの疑心暗鬼をもちながら、精神は憔悴していた。。。
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