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読んだ本の感想と旅行の日記を書いていきます。
後、その他なんかあれば・・・

24冊目:「坂の上の雲(八)」

2010-10-19 15:00:18 | 
総評:★★★★★ 以下、一巻から変わらず
面白い度:★★★★★ 
読みやすい度:★★★★☆ 
ためになる度:★★★★☆ 
また読みたい度:★★★★★ 


坂の上の雲もこれで最終巻である。
八巻は、日露戦争の最後の戦闘、日本海海戦をメインに書いている。

日本海海戦では、読みすすんでいくにしたがって、緊張感が大きくなってくる。
司馬遼太郎もこのクライマックスを書くに当たって、ただならぬ想いをもって書いていたのだろうと思う。その迫力が伝わってきた。


日本海海戦では、ロシアは日本が予想した通り、対馬を通る日本海ルートで来たので、万全の体制で戦闘を開始することが出来た。

今回の日本海海戦の作戦立案をした秋山真之はこのことが今まで自分の大きな悩みの種であり、この疑念が自分の精神を大きく蝕んでいたので、日本海ルートという報を聞いて踊りだしたと書いてある。

その後、日本海第一艦隊が戦場となる対馬海域に向かって出航する際、秋山が発信した有名な電文、「本日天気晴朗ナレドモ浪高シ」が大本営に向かって打たれた。


日露戦争の勝敗を決する運命の一戦ということはすでに分かっており、海軍内部での認識は一致していた。
日本海海戦が開始された時には、いわゆる「Z旗」というものが掲げられている。
この時の意味は、「皇国の興廃此の一戦に在り、各員一層奮励努力せよ」となっており、これを見て、海軍兵士はさらに奮い立ち、涙を流すものまでいたという。


真之は、この一戦を終えたら軍人を辞めようと思っていたらしい。
今までの戦争で、死亡したり、負傷した兵を見ており、また自分の立てた作戦により死傷していくロシアの兵も見ており、自責の念に駆られ、ショックを受けたのが原因と言われる。

また戦争を通じて、奇跡にも近い体験が何回かあったらしく、人智を超えた力を信じるようになったらしい。
それ以降、宗教にのめり込むようになってしまったようだ。
そういった真之の心情が、(身勝手ではあるが)自分にもなんとなく分かったりもする。


日本海海戦は完璧な作戦と、それを忠実に遂行した東郷平八郎や、臨機応変に戦機に対応した第二艦隊司令官上村彦之丞などの活躍によって、予想を上回る速さで勝利を手にすることができた。

その勝因としては、ロシアの日本に対する認識が不十分であったり、訓練を今まで行っていなかったり、日本の地の利に帰するものもあったと思う。
しかし何よりも、日本が今までの準備期間から出来る限りの事を行い、あらたな砲撃のやり方を見出したり、命令系統や指揮系統をはっきりさせ、常に今の課題を改善していくような仕組み作りや行動を行っていったことが大きいと思われる。
当然こういったことは全然今の社会にも適用できることは多いのだが。



一ヶ月で一気に八巻まで読んだが、本当に面白い小説だと思った。
明治時代の人々の活気だったり、戦争の悲惨さだったり、作戦の奥深さ、各国との外交や対外関係だったりが、魅力的な登場人物と共に伝わってきた。

主人公は秋山好古、真之兄弟、正岡子規となっているが、途中からは主人公達の影が薄れてしまう程に、本当に色々な登場人物が出てきた。
特に自分のお気に入りは東郷平八郎と児玉源太郎です。


はるか上に続く坂の先に浮かぶ雲、
雲の形はイビツで、具体的な形は分からない。
これからの日本がどのようになっていくか、それはその雲の形のように、不明瞭である。
それでもはるか長い坂の上の雲に手が届くことを信じて、明治を彩った人々は一生懸命に坂を登りながら精一杯手を伸ばしていた。。。


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