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読んだ本の感想と旅行の日記を書いていきます。
後、その他なんかあれば・・・

207冊目:「小が大を超えるマーケティングの法則」

2024-07-23 02:43:16 | 
総評:★★★★☆ なかなかすごい。
面白い度:★★★★☆ いい感じに面白かった。
読みやすい度:★★★★★ とても読みやすい。
ためになる度:★★★★★ スルメ本。
また読みたい度:★★★★☆ 中小企業の診断時に是非とも見返したい。



今までサッカー→野球と続いてきたが、久しぶりの知識本になる。

本自体は結構前に読み終わっていて、中小企業診断士の勉強をしていた時にマーケティングの教科書として予備校の先生に勧められた本であった。なので当時の勉強の合間にさらっと一読した本であった。

内容としては、タイトルの通り、小さい企業が大きい企業を超えるにはどうしたらいいかが書いてあった。
中小企業診断士のマーケティングの科目で教えられたことがほぼほぼ書いてあり、この本のエッセンスがそのまま2次試験の事例Ⅱ(マーケティングの科目)で使える内容だった。
てかこの本の著書の岩崎邦彦先生が中小企業診断士2次試験の事例Ⅱの科目の作問者だと言われている。

概要について簡単に言うと、
「何を」売るかではなく「なぜ」買うのか?というターゲットのニーズから考えていくこととか、マーケティングの4P で言うと、製品として、「こだわり」「専門性」を活かして品質と深い品揃えで勝負するとか、場所として「地域密着」を押し出すこととか、価格として低価格で勝負してはいけないこととか、プロモーションとして「人的コミュニケーション」「双方向コミュニケーション」を重視するとか、試験にはあまり出てこないが、口コミを利用するとか、そういった小さい企業が大きな企業に勝っていくための方法論?というか方向性が書かれていた。


そんなんで、事例Ⅱの教科書的な本なので、これを読んでおけば試験は問題なし!という内容であるのだが、実際自分は53点で合格点には未達となってしまった。。
まあ、自分はマーケティングは苦手でした。。この本を読んで受かるほど2次試験は簡単ではないですね。。

そんなんで、自分の中で知識の定着まではできなかったが某予備校では必ず読んでおけ!くらいに勧められるので、中小企業診断士を受ける方は一読して損はないかなという本でした。


最後に興味深かった内容について抜粋する。

・これまでの多くの小さな企業の試みをみると、自社の商品を何とか売り込もうと努力を続けてきた感がある。「商品が売れない。だから、何とかして、商品を売り込もう」。
 実は、これは、「販売の発想」である。マーケティングの発想は逆である。「マーケティング」は、どうしたら消費者が買いたい気持ちになるのかを考える。
 「つくったものをいかに売るか」が販売であり、「買いたくなる商品をいかに提供するか」がマーケティングだ。換言すると、販売活動のスタートポイントは「商品」だが、マーケティング活動は、「顧客」がスタートポイントになる。顧客が買いたくなる仕組みをつくること。それがマーケティングの目的なのである。
 ピーター・ドラッカーは、マーケティングの狙いは、販売を不要にすることであると言っている。消費者が商品を買いたくなってくれば、無理に売り込む必要はなくなるということだ。
 「どうすれば、商品を顧客に売ることができるのか」と考えるのではなく、「どうすれば、顧客が商品を買いたくなるのか」と考えることが大切なのである。

・消費者の関心があるのは、商品そのものではない。関心があるのは、その商品が自分にとって、どのような価値があるのか、どのような便益をもたらしてくれるのかだ。だから、人は「何を」にではなく、「なぜ」に動かされる。顧客の求める価値の前に、自らを正しく位置づけること。これがマーケティング活動の第一歩である。
 価値を浮き彫りにするためのキーワードも、「なぜ」だ。「なぜ」という問いを繰り返すことによって、自社が顧客に提供している潜在的な「価値」を浮かび上がらせることができる。

 「なぜ、消費者はこの商品を買うのだろうか」
 「なぜ、顧客は当社を選んでくれるのだろうか」

 これらに対する答えが、商品の「価値」であり、自社の「価値」である。
 「価値」は、売り手が決めるものではない。買い手が決めるものだ。たとえ自らが「価値」だと思っていても、消費者にとって魅力がなければ、それを「価値」と呼ぶことはできない。逆に、売り手が、大した価値がないと思っていても、消費者からみれば、魅力的なこともある。
 顧客の目線で、商品や自社の「価値」を把握できたら、あとは、それを磨きあげ、徹底的に伸ばしていくのである。
 企業の方に、「今は、が売れますか?」「これから売れる商品はですか」と聞かれることが多いが、こういった「の発想」ではマーケティングはなかなかうまくいかない。マーケティングに成功するためには、「何」の代わりに、「なぜ?」と問いかけることが重要だ。

・大きな企業には、顧客数の追求という「量のマーケティング」が要求されるためである。量の競争の先は「同質化」だ。同質化すれば、「価格競争」になる。そして、価格競争の行きつく先には、体力勝負の「消耗戦」が待っている。

 量の競争の結果、ニーズがあるのに空白になる地帯が生まれることがわかる。図中に「真空地帯」と示したエリアだ。規模が小さく「量のマーケティング」が要求されない企業は、「真空地帯」にポジショニングすることによって、小規模を強みに変えることができるということだ。
 大きな企業には、大きな企業のポジションがあり、小さな企業には、小さな企業なりのポジションがある。
 量を追求した結果、似てしまうという現象は、小売業以外でも、いろいろな場面でみることができる。たとえば、民放のテレビ番組は典型的な例だろう。消費者の娯楽へのニーズが多様化しているにもかかわらず、各局の番組はとても似ている。ある局で、お笑い芸人が出演するトーク番組の人気が出ると、他局でも同じような番組が始まる。ある局で頭脳を活性化させるようなクイズ番組が流行ると、他局も同じような番組をつくる。やさしくニュースを解説する番組が受けると、他の曲でも同じような番組を始める。これほど娯楽が多様化しているのに、なぜか?
 その理由は、きわめて単純だ。民放各局は「視聴率」という量の競争をしているためである。視聴率至上主義の行きつく先は、画一化、没個性化だ。それが今日、若者などにみられるテレビ離れの一因なのかもしれない。
 需要が多様化すればするほど、「不特定多数の人をたくさん集める」というビジネスモデルは成立しにくくなる。小さな企業が目指すべきは、「量的成長」でなく、「質的成長」なのである。

・一般的に企業は、自社が「売りたい人」をターゲットとして設定することが多い。ターゲットの選定の基準としてよく用いられるのは、「年代」や「性別」といった人口統計的特性や、「職業」や「収入」などの社会経済的特性などだ。たとえば、「当店のターゲットは、20代のOL」「当社の商品のターゲットは、50代以上の富裕層」といったイメージである。
 だが昨今、人口統計的特性や社会経済的特性による顧客セグメンテーション(分類)が、うまくいきにくくなっている。なぜなら、性別も年代も同じで、家族構成も収入も同じような人たちでも、求める価値が大きく異なってきたからである。
 そこで本書では、前記とは逆の発想をとることにしよう。ここで提案するのは、小さな店が「売りたい人」ではなく、小さな店で「買いたい人」、すなわち「小さな店にひかれる人々」をターゲットとしたマーケティングである。
 ターゲットとなる「小さな店にひかれる人々」の特性を調べ、その特性に十分適合したマーケティングを構築し、実行する。そうすれば、ターゲットのほうから、その企業を選択してくれる。顧客に無理な売り込みをしなくても、顧客が向こうからやって来てくれるはずである。

・この図から分かる、「小さな店にひかれる人々」の特性は、以下の通りだ
 特性1 「本物志向」が強い
  小さな店にひかれる人々は、「個性」「こだわり」「専門性」を重視する消費者層である。
 特性2 「人的コミュニケーション志向」が強い
  小さな店にひかれる人々は、「店員からのアドバイス」「店員とのコミュニケーション」「店員の親しみやすさ」を重視する消費者層である。
 特性3 「関係性志向」が強い
   小さな店にひかれる人々は、「『買い物はここ』と決めている店が多い」「気に入った店は、できるだけ長く使い続けたい」と考える消費者層である。つまり、企業との関係性=きずなを重視する。一度、気に入ったくれたらリピーターになってくれる。ターゲットとして、とても魅力的な顧客層だ。
 特性4 「地元志向」が強い
  小さな店にひかれる人々は、「家の近くで買い物をしたい」「歩いて行ける範囲で買い物をしたい」と考えている消費者層である。
 特性5 「低価格志向」ではない
  72ページの図表3-2をみると、「低価格志向」から「小さな店にひかれる」への矢印だけ、符号がマイナスになっている。つまり、小さな店にひかれる人々ほど、「価格の安さ」「安売り・バーゲンセール」を重視しない、非価格志向の消費者層である。

・「ほんもの」「きずな」「コミュニケーション」という3つの力の英語の頭文字は、A、B、Cとなっている。すなわち、潜在的な「小規模力」を現実の「チカラ」に変えるためには、「A・B・C」の3つの力が柱になるということだ。
 以下、具体的に見てみよう。
 ①A(Authenticity)「ほんもの力」
 1つ目は「ほんもの力」である。「小さな店にひかれる人々」の期待に応え るためには、個性、こだわり、専門性から生み出される力、すなわち「ほんもの力」の強化がポイントだ。低い価格で顧客をひきつけようとする戦略はとるべきではない。なぜなら、小規模店志向の消費者ほど、低価格を重視しない、非価格志向であるからだ。

 「ほんもの力」=個性×こだわり×専門性

 ②B(Bond)「きずな力」
 2つ目は「きずな力」である。店との「きずな」を重視する消費者ほど小さな店を好み、地元志向が強い消費者ほど小さな店にひかれている。したがって、「小さな店にひかれる人々」をひきつけるには、「顧客とのきずな」と「地域とのきずな」という、2つの「きずな力」を強化することがポイントだ。

 「きずな力」=顧客とのきずな×地域とのきずな

 ③C(Communication)「コミュニケーション力」
 3つ目は「コミュニケーション力」である。人的コミュニケーション志向が強い消費者ほど、小さな店に魅力を感じている。したがって、「小さな店にひかれる人々」をひきつけるためには、人を通じた「コミュニケーション力」を強化することが大切となる。「店員の親しみやすさや態度」といった接遇に関するコミュニケーションのレベルアップはもちろんのこと、顧客の声を吸い上げること、さらには「顧客へのアドバイス、提案、情報提供」など、人を通じた専門知識の伝達も大切なポイントになるだろう。

 「コミュニケーション力」=接遇×情報の受信×情報の発信

・成長の裏に「シンボル」あり
 大企業をみても、「核商品」が成長のキーポイントとなっているケースが多い。たとえば、我が国有数の中華料理チェーン、「餃子の王将」。もしも店名が 「中華の王将」だったら、今のように成長できただろうか。
 「餃子」をシンボルとして、個性を発信する手法が、顧客を集め、顧客の支持を得たのである。「餃子の王将」には、餃子以外にも、ラーメン、チャーハン、焼きそば、レバニラ炒め、八宝菜、ちゃんぽん、皿うどんなど多様な中華メニューがある。だが、「中華の王将」として、「ラーメン、チャーハン、焼きそば、その他、中華なら何でもあります」といった訴求方法をとっていたならば、今日のように顧客の支持を得ることはなかったはずだ。
 アパレルのトップ企業の「ユニクロ」も、成長のきっかけはフリースへの集中だ。柳井正社長も、「何かに特化していかなければと思った」と語っている。「フリースに自信あり」という広告を打ち、フリースに経営資源を集中したのである。


一旦こんな感じだろうか?
他にも「きずな力」「コミュニケーション力」にも色々タメになる内容はあったが重要なエッセンスは記載できたかなと思う。

何か診断士の勉強をしていた時には時間もなくテンパっていたせいかさらっと流し見してしまったが、こうやって改めて見てみるととても重要なエッセンスが凝縮された良書だなと思った。

ちなみに先日、中小企業診断士の実務補習という実際の診断を経験してみましょうという補習をやっていたのだが、そこでお世話になった指導員の先生(結構えらい方)も、前述したピーター・ドラッカーの「販売を不要にすること」論について、自分たちに教えてくれた。
この本を改めて見返して、先生が言っていたことだ!と思いだしたが、この教えは診断士界には常識なのであろうか?気になった。

そんなんで、中小企業を経営されている方に是非ともお勧めしたい本であった。
ということで今回は以上☆
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