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僕の消灯時間まで

ブログの引越しをしました。
愛する方々へ、遺書のように。

遠藤じいさん

2014-04-26 07:48:27 | 日記
昨日。
高校の同級生の良平から写真が送られて来た。
彼は母校の教師になった。
当時は剣道部だが今はヨット部の顧問で青空応援団。
その彼から、
「なぜかヨット部部室にあった。びっくり。」
そのように言葉が添えられて送られて来た一枚の写真。
大好きな遠藤じいさんだった。
「了さん!よく耐えたなぁ!頑張ったなぁ!」
おじいさんにそう言われて泣いたことがある。
とても優しい人達で、本当の僕のおじいちゃんとおばあちゃんみたいだった。
おばあちゃんと二人で抱きついて来て泣かれた。
そして、もらい泣きをしたものだ。

遠藤商店という駄菓子屋さんが学校のすぐそばにあって、お菓子を買って食べていた。
一年生の頃、麩菓子を買い食いしに行ったのが最初だった。
遠藤じいさんは、そこの店主。
おばあちゃんと仲が良くて、ヨボヨボとジュースを開けてくれたり、完璧に気の抜けたコーラをくれたりするおじいさん。
丹野商店という駄菓子屋みたいなパン屋さんもあったんだけど、僕は遠藤商店がとても好きだった。
「最近、みんな来なくなっちゃってね。応援団かぁ。辛いだろうけど、何があっても逃げずに、男なら最後まで頑張るんだぞぉ。三年生になるまで頑張るんだぞぉ。」
と言われた。
一年生の頃はとても辛くて、やめたくてやめたくて仕方がなかったけど、やめなくて良かった。
おじいちゃん達は、僕をとても可愛がってくれた。
10円のモノを買っても4~50円のサービスをしてくれて、申し訳ない気持ちになったものだ。
毎日行ったから(笑)ものすごい損害を与えたんだろうけど、もう、恩返しは出来ない。
相談に乗ってくれたりもしたなぁ。
文化祭では売上に貢献しようと思って、遠藤じいさんからお菓子を買って駄菓子屋をやった。
もちろん、全く売れず。
売れ残りは殆ど、阿部先輩(青空応援団副団長)と食べた。
「残らず全部売れたよ!」
と嘘をついてごめんなさい。
僕が団長になって、二高との決戦間近の日。
遠藤商店の前を通ることにした。
じいさんはいつでも震えながら僕の写真を撮ってくれてた。
「了さんは、大物になる。だから写真撮っておくんだよ、ねぇおばあさん?」
桜が咲けば一緒に写真を撮り、うどんを煮たから食べなさいと、お店でごはんを食べさせてくれては写真を撮り、応援の結果報告が勝ちなら写真を撮り、負けでも写真を撮り…
焼き増しをして、いつも僕にくれたんだ。

この日、いつもの汚いボロランではなく、キレイな正装を着た僕を大きな拍手と、
「了さん、いいぞ、いいぞ、やっつけて来い!」
とかすれた涙声の声援で見送ってくれた。
そして、やはり写真を撮ってくれた。
僕にカメラを向けて、涙を拭きながら出陣を見送るおじいさん。
その時の、その瞬間の写真が送られて来たのだ。


とても懐かしい。
ガラスの一番下の部分には鏡のような金属板が入っていたこと。
減らない縄跳びの束。
何と言っても、遠藤じいさんの腰の曲がり具合。

この年。
僕たちは勝った。
いの一番に報告に行った。
泣きながら、頷きながら、いつまでもいつまでも拍手をしてくれた。
おばあちゃんに、もっとだもっとだと目で合図をし、鳴り止まない拍手をしてくれた。
そして文頭に書いた言葉に繋がる。
「了さん!よく耐えたなぁ!頑張ったなぁ!」
忘れられない、忘れてたまるか。

卒業式の日。
来てくれた。
式次第にはない、僕の飛び入りでの口上とエール。
舞台に上がり、謝辞を述べた。

遠藤じいさんは、大きく何度も頷いて、カタカタとしたいつもの手で涙を拭きながら大きな大きな拍手をしてくれた。
「よく耐えた!」

おじいさん。
僕ね、耐えるの得意になったよ。
おじいさんのお陰です。
あの時は、お菓子をたくさんありがとう。
お店がなくなってしまう時、お手伝いが出来て良かった。
「娘と暮らすんだ、娘と孫達と。」
「そうか。それはいいね。」
「うん。でも。ボロいけど僕のお店。了さんとも知り合えた僕のお店。大変だったこともあったけど、了さんの先輩達が支えてくれた僕のお店。小さな子達がお店の中じゃ小さいままなのにね、ガラス戸の向こうじゃ一気に大きくなる。不思議でした。了さんなんて、すぐ三年生になっちゃって。」
「淋しそうな顔すんなよ。」
「うん、でも淋しんだよ。」
「淋しくないよ。いつでも来てよ、団室にも。」
「うん、ありがとう。ありがとう了さん。」
「先輩達がどうだったかは知らない。でも、今は僕が団長です。おじいちゃん、団室入ってみる?」
「ええええ??恐れ多い!!」
「さすがに女性のおばあちゃんはダメだけど、おじいちゃん、いいよ。先輩達もきっと歓迎するはずだ。ばあちゃん、ごめんね、待っててください。おじいちゃん、行こう!」
団室を見回して、
「あの子たちは、こうして育ったのかぁ」
とニコニコしてた。
いつだってニコニコしてたか、カタカタしてたか、メソメソしてたか。
遠藤じいさんにも、花火は見えただろうか。
耐えること。
それを教えてくださり、ありがとうございました。
僕は元気です。
仲間に恵まれ、楽しくやってます。
僕を応援してくれてありがとうございました。
恥じぬように生き、期待に応える男になりたいと思います。


青空のような男になろうと思います。
コメント (5)
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