The Phantom of the Opera / Gaston Leroux

ガストン・ルルー原作「オペラ座の怪人」

踊り子

2007年05月18日 | ルルー原作「オペラ座の怪人」
よく踊り子にはパトロンがいたのだとか聞きます。
原作でもラウルの兄のフィリップとソレリの仲むつまじい関係など描かれています。


ヴェロン博士の当時もオペラ座の踊り子やコーラスガールというのは、今日のタレント志願のようなもので、建前はスターを夢見ながら、実際にはお金持ちのパトロンを見つけて、その愛人になる事を現実的な目標としていました。

それは少女達の・・・というよりも母親の願いでもありました。

桟敷席に陣取る貴族やブルジョワにとって、オペラ座はかわいい愛人を調達する場所であったようです。

ですから、彼等の願いは楽屋に出入りして、狙った少女と直接話をつけることでした。
が、ヴェロン博士以前は、政府の役人が管理していたので、よほどのコネがない限り楽屋裏には入れてもらえなかったのだそうです。

ヴェロン博士は現実的で合理的な人物だったので、殺風景な楽屋裏の練習場を改造して豪華なサロンに変身させ、政府関係者、マスコミ、出資者である金満家連中を自由に出入りさせる事にしたのです。
彼等はバレリーナや歌手の練習風景を見ながら物色し、お気に入りがいれば、早速母親を交えて扶養条件の相談に入ったそうです。

お陰で政府関係者、マスコミ、出資者である金満家連中、そして母親たちからは感謝されたそうです。

一方,オペラ座を高級娼館に変えた、という非難も浴びせかけられました。



映画で支配人達が子爵を楽屋に案内する場面、お金持ちに媚を売る踊り子の姿など思い出したりしてしまいます。

ファントムも焦って姿を現すはずです。


また原作中の「ジリーおばさん」ですが、自分の娘が皇后になるかも・・・という夢と欲に目がくらんで怪人の使い走りになっているのも分る様な気がします。
もともとこのジリーおばさん、コーラスガールか何かだったのか支配人の前で歌ったりしているので、果たされなかった願望を娘に託していたのかも知れませんね。
でも男爵夫人になったのですから大したものです。




鹿島 茂 「かの悪名高き」参考


絵はドガ「踊り子」

もちろんドガの描いた踊り子達はオペラ座のだと思います。