The Phantom of the Opera / Gaston Leroux

ガストン・ルルー原作「オペラ座の怪人」

悪魔のロベール 3

2007年05月17日 | ルルー原作「オペラ座の怪人」
ヴェロン博士はルペルティエ街の老朽化したオペラ座の修復をも手がけます。当時のオペラ座は仮建築でした。ですから天井や桟敷の痛みもひどく、照明も暗くガス灯を導入する必要もありました。
工事費用は支配人負担でした。

他に人員削除などオペラ座に改革をもたらします。


・・・で、本題の「悪魔のロベール」です。
内務大臣の許にあるあるオペラ座監査委員会では、ずっと以前からこのオペラの上演は決定されて、マイヤーベアーとも契約が結ばれていました。


しかしこのヴェロン博士の慧眼なのはこのオペラが脚本も音楽もいかにもドイツ的で、冗長で成功するとはまったく考えていなかったことでした。

つまり確実に損失を蒙るというのを前提として上演するからには10万フランの保証金を出せ、と委員会に主張したのです。
しかたなく委員会はこの条件を飲みます。

そしてここからヴェロン博士が凄いと思うのは、前渡しで受け取った金額の全てを「悪魔のロベール」の舞台装置につぎ込んだのです。


時は七月革命後、観客の好みが音楽そのものよりも、舞台装置の豪華絢爛さにある、と見抜いていたのでした。
すでにオペラ座の観客が音楽の分る貴族でなくブルジョワに変わってきていたのでした。

博士は舞台監督を呼び、各場面ごとに舞台装置を全て換えるように指示。
現在は当たり前でも、当時は画期的でした。

博士はマイヤーベアーの重苦しい音楽を派手な舞台装置で隠したのでした。
しかもスタッフと相談して観客が退屈しそうな部分はマイヤーベアーにカットさせました。しかも演出にも変更を加え、作曲者を怒らせますが、結局はこのオペラは、その舞台装置と巧みな演出で、観客のロマンティックな嗜好にかない、見事大成功を収めたのでした。

そのうちに音楽も理解され、高く評価されるようになりました。







しかもヴェロン博士の下でオペラ座の踊り子と貴族の愛人関係が、もっとフランクに堂々となれるようにもなりました。

踊り子というのは、たいていが貧しくオペラ座でお金持ちのパトロンを得たい、と母子で考えていたようです。

そのあたりはまた明日・・・



ドガ「楽屋の踊り子達」