あけたてば せみのをりはへ なきくらし よるはほたるの もえこそわたれ
明けたてば 蝉のをりはへ 鳴きくらし 夜は蛍の 燃えこそわたれ
よみ人知らず
夜が明けると蝉のように一日泣き暮らし、夜は蛍のように燃える思いに身を焦がし続けていることよ。
「をりはへ」はいつまでも続ける意の動詞「折り延ふ」の連用形ですが、ここでは名詞的に使われていますね。昼夜隔てなく恋の思いに苦しむ身の上を詠んだ切ない歌です。
あけたてば せみのをりはへ なきくらし よるはほたるの もえこそわたれ
明けたてば 蝉のをりはへ 鳴きくらし 夜は蛍の 燃えこそわたれ
よみ人知らず
夜が明けると蝉のように一日泣き暮らし、夜は蛍のように燃える思いに身を焦がし続けていることよ。
「をりはへ」はいつまでも続ける意の動詞「折り延ふ」の連用形ですが、ここでは名詞的に使われていますね。昼夜隔てなく恋の思いに苦しむ身の上を詠んだ切ない歌です。
はるたてば きゆるこほりの のこりなく きみがこころは われにとけなむ
春立てば 消ゆる氷の 残りなく 君が心は 我にとけなむ
よみ人知らず
春になると残らず消えてしまう氷のように、あなたの心も私にうちとけてほしいものよ。
「なむ」は、ここでは他に対する願望を表す終助詞。
巻第十一「恋歌一」もこの歌を含めて残り10首。ここからは四季の順に歌が並びます。
よそにして こふればくるし いれひもの おなじこころに いざむすびてむ
よそにして 恋ふればくるし 入れ紐の 同じ心に いざ結びてむ
よみ人知らず
遠く離れていて恋い慕うのは苦しい。入れ紐のように互いに同じように思い合って、さあ契りを結ぼう。
weblio古語辞典によれば、入れ紐とは「『直衣(なほし)』や『狩衣(かりぎぬ)』『袍(はう)』などの首回りや裾についている紐。紐の先が輪になっている側(女紐)に、結び玉になっている側(男紐)をかけてとめる。」とあり、男女の固い結びつきの喩えに用いられるようです。
こころがへ するものにもが かたこひは くるしきものと ひとにしらせむ
心がへ するものにもが 片恋は 苦しきものと 人に知らせむ
よみ人知らず
自分とあの人の心を取り換えられるものならばなあ。片思いは苦しいものだとあの人に教えられるものを。
「もが」は願望を表す助詞。片思いがどれほど苦しいものか、心を交換できるならあの人にもそれをわからせることができるのになあ、というわけです。なんだか現代の流行歌にも出てきそうなフレーズですね。 ^^;;
うちわびて よばはむこゑに やまびこの こたへぬやまは あらじとおもふ
うちわびて 呼ばはむ声に 山びこの こたへぬ山は あらじと思ふ
よみ人知らず
思いわずらって呼び続ける声に山びこで応えない山はないと思う。だからあの人も私の思いに応えてくれるだろうか。
「呼ばふ」は、「『呼ぶ』の未然形+反復継続の助動詞『ふ』」がひとつの動詞として用いられるようになった語で、「呼び続ける」の意。呼び続ければ山びこが返って来る。それと同じようにあの人も、との期待ですが、その期待は叶わないとの予感を持っての切ない歌のように思えます。