ゆふされば いとどひがたき わがそでに あきのつゆさへ おきそはりつつ
夕されば いとど干がたき わが袖に 秋の露さへ 置きそはりつつ
よみ人知らず
夕方になると恋しさが募り、涙に濡れて乾きがたくなる袖に、秋の露までもが置き加わってくることよ。
袖の乾く間もないほど恋しさに涙しているところに、秋露までもが加わって袖を濡らすという、なんとも切ない歌ですね。「夕されば」は夕方になるとの意で、同じ句で始まる百人一首の歌(第71番)が思い出されます。
ゆふされば かどたのいなば おとづれて あしのまろやに あきかぜぞふく
夕されば 門田の稲葉 おとづれて 芦のまろやに 秋風ぞ吹く
大納言経信
(金葉集 巻第三「秋」 第173番)