美術の旅人 Voyageur sur l'art  

「美術」との多様な出会い。見たこと、感じたこと、思ったこと。

染付 藍が彩るアジアの器 7月16日 東京国立博物館

2009-07-20 13:45:24 | レビュー/感想
時代や地域によって多様な展開を見せる「染付」の器を短い時間で概観できる良い機会だった。最も心引かれたのは元時代の「青花蓮池魚藻文壷」。完成された中国の水墨画がイリュージョン(バーチャルリアリズム)の現出に主眼があるとしたら、この元時代の「染付」も同じ目的を持っていると思う。ただし前者は写実性、後者は装飾性において。展示会の解説に述べられているごとく、描かれた池中の世界は、アニメーションを見るかのようだ。壷の回りを巡りながら眺めていると、まさしく揺らめく藻を縫って多様な魚が泳ぐ水中世界に引き込まれてしまうかのように感じる。口縁の波濤文、唐草文が絶妙なリズムを刻み、装飾化された魚や水草がゆったりしたメロディーを奏でる。見る者をひとつの音楽的な世界に導くよう、卓抜な筆先の力が駆使されているのである。展示の最後には江戸後期、伊万里の染付大皿の見事なコレクションを見ることが出来た。イリュージョン的な中国絵画の影響を脱し、空間と形態の造形的表現において独自の発展の道を辿り浮世絵において大衆化した日本美術の特徴は、この伊万里の大皿の染付にもはっきり見て取れた。大陸との真っ向勝負を避けることで見出した独自性の要は、歌麿や写楽などの浮世絵と同じトリミングの妙にある。

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