わくわく CINEMA PARADISE 映画評論家・高澤瑛一のシネマ・エッセイ

半世紀余りの映画体験をふまえて、映画の新作や名作について硬派のエッセイをお届けいたします。

もし、大ベストセラー「もしドラ」が映画になったら♪♪

2011-06-07 18:59:18 | 映画の最新情報(新作紹介 他)

Img436“もし…”ではない、人気の大ベストセラー「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」が、ついに映画化されました(6月4日公開)。ヒロインの女子マネ・川島みなみ役に、アイドルグループ“AKB48”の前田敦子。彼女をサポートする後輩マネージャーに、やはり“AKB48”の峯岸みなみ。入院中の元マネに、TVドラマ・CM出身の川口春奈。野球部員に、瀬戸康史、池松壮亮ら。みなみに経営学の父といわれるピーター・F・ドラッカーの著書「マネジメント」を紹介する書店主に、“まいう~!”の石塚英彦。そして、事なかれ主義の野球部監督に大泉洋といった出演者の顔ぶれです。
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 キャストの中心メンバーが、ほとんどTVでおなじみのアイドルか、コメディアン。案の定、きわめて軽~い「もしドラ」が出来上がってしまいました。弱小野球部のマネージャーになった女子高生が、ドラッカーの名著に出会い、甲子園出場という目的に挑戦するという物語。みなみが、ドラッカーの経営学書から引き出したキーワードは、「真摯さ」「感動」「イノベーション」などなど。監督の田中誠と原作者・岩崎夏海が共同脚本に当たっているのだが、どうもドラッカー理論が明確にドラマに反映されていない。むしろ、弱小チームが這い上がるという、よくある平凡なスポ根映画になっている。みなみの親友の元マネの死、怠惰な野球部員と監督のやりとりなども、甘ったるいメロドラマのタッチです。
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 高校野球と経営学を結びつける-このバツグンのアイデアが、若者からビジネスマンに至る幅広い読者層を獲得したのでしょう。この考えかたは、元東北楽天の監督・野村克也氏の理論に共通する点があるけれども。でも、そうしたアイデアが、アイドル映画に変貌してしまったのは、驚くべき現象です。強いて言えば、もしドラ・マネージャーのターゲットになる野球部のメンバー、やる気のないエース役の瀬戸康史(「ランウェイ☆ビート」)や、キャッチャー役の池松壮亮(「信さん 炭坑町のセレナーデ」)らの強烈キャラが目立つくらいかな。監督の田中誠は、過去に「タナカヒロシのすべて」や「うた魂♪」を手がけてきた人。アイドル映画とはいえ、もう少し知的な部分があってもよかったのでは?


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