わくわく CINEMA PARADISE 映画評論家・高澤瑛一のシネマ・エッセイ

半世紀余りの映画体験をふまえて、映画の新作や名作について硬派のエッセイをお届けいたします。

カトリーヌ・ドヌーブ in「隠された日記/母たち、娘たち」

2010-10-12 19:14:31 | 映画の最新情報(新作紹介 他)

Img346 フランスの名女優カトリーヌ・ドヌーブは、67歳になるいまも美しさを保ち続け、現役として活躍しています。彼女の新作は、フランス・カナダ合作「隠された日記/母たち、娘たち」(10月23日公開)。三代に及ぶ母娘の葛藤を描いた作品で、ドヌーブはフランスの田舎の海辺で開業する医師マルティーヌを演じている。あるとき、カナダで働く彼女の娘オドレイ(マリナ・ハンズ)が帰省してくる。だがマルティーヌは、なぜか、この娘に冷たく接する。やがて、海辺にたたずむ亡き祖父の家で休暇を過ごすことになったオドレイは、戸棚の奥に隠されていた一冊の古い日記を発見。それは、50年前に失踪した祖母ルイーズ(マリ=ジョゼ・クローズ)のもので、彼女の秘めた思いがつづられている…。
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 作品のテーマは“女性の自立”の問題です。祖母ルイーズは、1950年代、女性が社会に出て働くことがむずかしかった時代、苦悶したあげく子供たちを残して失踪する。孫のオドレイは、キャリアウーマンでいることが当たり前の現代の女性で、結婚する予定のない男性との子供を妊娠している。ドヌーブ演じるマルティーヌは、その中間に当たる世代。自分を捨てた母ルイーズについて話すことを拒否し、幼いころ母と過ごした時間が短かったため、オドレイとどのように向き合えばいいのかわからない。かたくなで、苛立ちを隠せない孤独な母親の心理を、ドヌーブは巧みに表現する。またオドレイが、幻のように出現する祖母ルイーズと対話を交わすくだりが、不思議な効果を生み出しています。
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 監督・脚本(共同)・脚色・台詞を手がけたのは、37歳の女性監督ジュリー・ロペス=クルヴァル。「現代女性の立場と、ここ数十年間の女性の社会的地位の変化、たとえば女性の社会的役割や、女性が勝ち取ってきた自由について語りたいと思った」と言う。そうした主題を、同監督は、ぎくしゃくした家族関係の中で、オドレイが家族のことを調べ始める、というユニークなプロットで解き明かしていく。そして、最後に明らかになる衝撃的な祖母失踪の秘密。ドヌーブと対比的に描かれる娘オドレイ役のマリナ・ハンズ(「レディ・チャタレー」)が、自由闊達な現代女性を好演。それにしても、若い監督が悠然と女性の自立史に取り組むことができるフランス映画界は、やはり懐が深いと言わざるを得ません。

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猛暑の夏を乗り越えて


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