エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;韓国のスマートグリッドは大規模かつダイナミック)

2010-12-18 08:03:06 | Weblog
韓国では、韓国電力公社(KEPCO)が済州島で3000世帯規模のスマートグリッド実証事業の対象となる団地を選定して事業を推進しています。KEPCOはさらに,20年までに消費者による需要応答などを盛り込んだスマートグリッドを構築する計画で、09年末から13年にかけ政府と民間の資金810億ウォン(約63億円)を投じ、各種のスマートグリッドの機能と効用を検証する作業を進めています。30年までに韓国全土でスマートグリッドの完全構築を目指しています。
韓国におけるスマートグリッドの開発と普及に関しては、アメリカとの官民協力でプロジェクトを推進していることが特徴です。このため、09年6月にスマートグリッド分野の業界団体である韓国スマートグリッド協会とアメリカのグリッドワイズアライアンスが共同投資フォーラムを開くとともに、協力了解覚書(MOU)を締結しました。韓国側はLS算電や韓国電力、現代重工業、暁星重工業、日進電気、SKテレコム、KTなど、アメリカはグーグルやIBM、ゼネラル・エレクトリック(GE)、PJMなどが参加しました。
その他アメリカとの連携としては、スマートグリッド関連業界団体(米・GridWise Alliance と 韓・Korea Smart Grid Association(09年8月設立))の協力、 企業間の技術協力(GEの韓・ヌリテレコムへのスマートグリッドに係る技術協力)、米韓FTAがあります。また、EUとの連携も進めており、欧州の技術・市場へのアクセスの足がかりとして、EUREKA(マーケット志向の研究開発協力を行う欧州のプロジェクト)への欧州圏外で初めての加盟(09年6月)、 EU-韓FTA仮署名(09年10月)があります。いずれも、FTAが絡んでいることがポイントで、アメリカ、EUいずれともFTA締結が遅れている日本は、スマートグリッドの国際連携でも、韓国の後塵を拝しています。 
韓国企業は海外でも積極攻勢に出ています。サムスン物産と韓国電力公社(KEPCO)の韓国コンソーシアムが、総額70億カナダ・ドル(Cドル、1Cドル=約84円)の大規模な風力・太陽光発電事業をオンタリオ州で開始します。風力発電に必要なタワー、ブレード、太陽光発電に必要なインバーター、モジュールを州内で生産し、同州の電力需要量の約4%に当たる2,500メガワット(MW)の電力発電を目指しています。1万6,000人もの雇用を生み出す大型プロジェクトです。韓国コンソーシアムは、第1段階としてオンタリオ州南部のチャタム・ケントとハルディマンドに400メガワット(MW)規模の風力発電施設を建設するほか、同州西部の農地を利用して100メガワット(MW)規模の太陽光発電施設を建設する予定で、どちらも12年の稼動を目指しています。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;アメリカで膨大な需要を喚起している「PACE」)

2010-12-17 00:22:29 | Weblog
スマートグリッドの「革命」としての条件には、膨大な需要を喚起して「ムーアの法則」(性能対価格比が、18か月ごとに半減する現象が長期にわたり継続するという経験則)がハードに妥当するようにするとともに、、「メトカーフの法則」(ネットワークの価値は、ネットワークに参加する人数の2乗に比例して増加するという経験則)によりその価値がユーザに広範に浸透する環境を早期の段階でつくることが必要です。
アメリカでのスマートグリッドの市場拡大には、この観点からすると、政府の制度設計が大きな役割を果たしています。日本は、太陽光発電、電気自動車、エコキュート、エネファームなどの普及のため、補助金制度一辺倒となっていまが、膨大な財政赤字を抱えている現下の情勢で、日本政府の関係者は、もう少し「チエ」をひねる必要があります。
アメリカ政府の制度設計で注目されるのは、省エネ設備や再生可能エネルギー設備の設置促進ができるよう08年から導入された「PACE」(Property-assessed clean energy)というユニークなプログラムです。
この「PACE」は、アメリカの家庭・オフィスの省エネ改修を促進し、エネルギーの節減とCO2排出削減を促進するために08年に設けられた制度で、09年1月カリフォルニア州バークレーで最初の債券が発行されて以来、わずか12ヶ月の間に、コロラド州、イリノイ州、ルイジアナ州、メリーランド州、ネバダ州、ニューメキシコ州、オハイオ州、オクラホマ州、オレゴン州、テキサス州、ヴァーモント州、ヴァージニア州、ウィスコンシン州 の15州で発行されています。フロリダ州、ハワイ州ではPACE債券の発行権限はすでに存在しており、アリゾナ州とニューヨーク州では導入を検討中です。10年にはさらに多くの州に拡大し、「PACE」券の発行は5000億ドルに達すると予想されています。
 アメリカにおけるエネルギー使用とCO2排出の約40%は家庭・オフィスの建物におけるものであり、これらの省エネ改修が重要な課題となっています。このため、納税者にほとんど負担をかけることなくプログラムの成功を期しうるものとして、「PACEは」考案されました。「PACE」をスタートさせるためには、州が州法により適用対象となる市町村の区域を指定し、それに基づき市町村が「PACE」特別区域を設定します。その「PACE」特別区域内にある家庭・オフィスの建物所有者は、省エネ措置あるいは太陽光発電などの創エネ措置を行おうとするときは、市町村あるいは指定金融機関(ファニーメイ、フレディマックなど)に対して「PACE」債券の発行を申請することができます。
この「PACE」債券には州政府の政府保証がつきますが、「PACE」債券の購入者には先取特権が付与されます。家庭・オフィスの建物所有者は20年間に渡る固定資産税の上乗せ徴収により、省エネ措置あるいは太陽光発電などの創エネ措置に要した費用を償還するという仕組みです。
この「PACE」による効果はエネルギーの節減とCO2排出削減ばかりではありません。省エネ措置あるいは太陽光発電などの創エネ措置に要した費用に相当する需要の拡大、雇用の増進のみならず、家庭・オフィスの資産価値の上昇、担保価値の増進を通じて不動産取引の活発化を促進するという大きな効果もあります。

政府の新成長戦略・グリーンイノベーション政策の盲点(「グリーンカラ-・エコノミー」という視点が必要)

2010-12-16 00:32:57 | Weblog
注目すべきは、オバマ政権の「グリーン・ニューディール」がトップダウンの政策スローガンから国民運動へと進化しつつあることです。この点で、『The Green Dollar Economy』(邦訳『グリーン・ニューディール』)は、アメリカの「グリーンカラー・エコノミー」(Green Collar Economy)への動きを迫力をもって伝えてくれます。著者のヴァン・ジョーンズは、アメリカではいち早く「グリーンカラー・ジョブ」(Grenn Collar Job)の重要性を訴え、わずか2年で一介の市民運動家から普遍的なグリーン・エコノミーを創出する国民運動の旗手に駆け上がった人物で、グリーン・エネルギー産業への職業訓練の強化を求める国際NGO「グーン・フォー・オール」(GREEN FOR ALL)を主宰しています。
ヴァン・ジョーンズは、①地球環境問題と②アメリカ経済の弱体化および格差の拡大を現在のアメリカの2大危機として捉え、この2つの危機を同時に解決するための国民運動を展開するとともに、環境負荷の少ないグリーン産業の発展とそれによる経済的恩恵をあらゆる社会的階層の人々が享受できるようにする「グリーンカラー・エコノミー」の実現を唱え、ロサンゼルス(エネルギー効率の向上)、ウィスコンシン州ミルウォーキー(エネルギー効率の向上)、ペンシルベニア州(風力発電)、カリフォルニア州リッチモンド(太陽光発電)、シカゴ(食物)、ヒューストン(廃棄物)、ボルティモア(建設資材)などでの豊富な実例を紹介しています。アメリカのグリーン・ニューディール国民運動は、市民層の草の根型の参加により「グリーンカラー・ジョブ」(Grenn Collar Job)の創造を目指すというより明確な目標を実現するための合目的的な国民運動となっています。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;中国におけるエネルギークラスターとエコシティの建設)

2010-12-15 05:54:16 | Weblog
中国では、エネルギークラスターの形成も進んでいます。その一つである遼寧省錦州市は、07年8月「国家火炬(たいまつ)計画」(1988年8月にスタートしたハイテク産業の開発、振興を目的とする一大国家プロジェクト。主な対象は新素材、バイオ、電子・情報、光・機械・電子一体化、新エネルギー、高効率省エネ、環境保全など)で太陽電池産業基地として認可された後、「太陽電池産業発展規画」(08~12年)を制定しました。
同市の「太陽電池産業基地建設に関する実施意見」では、太陽電池産業を強化し、産業チェーンを拡大し、太陽電池製品の市場展開に今後の産業指導の重点を置き、中国最大のシリコン材料生産基地を目指すとしています。現在、同市には太陽電池関連メーカーが23社あります。多結晶、単結晶、シリコンウエハー、太陽電池とそれに関連した材料などの製造・加工企業の進出により、産業クラスターが形成されつつあります。
また、中国では全国30都市で「生態城」(エコシティ)の建設が進められていますが、その一つ天津市では、シンガポール政府と共同で、野心的な「生態城」(エコシティ)の建設が進められています。計画では、10~15年以内に、天津市浜海区内30平方キロメートルの敷地に環境、資源の有効利用、社会の調和を重視した人口20万~30万人のニュータウンを建設します。これは、シンガポールのHDBフラット(公営住宅)をモデルとしており、中心部に池など湿地帯固有の自然を配置し、川や水路をエコ回廊と位置付ける計画です。また、街を4つの主要地域に区分して軽便鉄道で結び、通勤、通学距離を短くします。
 (株)日本総合研究所は、再生エネルギーなどに関するコンサルティング経験を生かし、同開発事業の目標とする環境に配慮した都市作りに向けてアドバイスを行っています。同事業では、①再生可能エネルギーの使用率20%、②一般ごみの無害化処理100%、③廃棄物のリサイクル率60%などの約20の環境指標を定めており、こうしたした指標を達成できるようアドバイスを行っています。いずれ、スマートグリッドの構築も射程範囲に入ってくるものと思われます。三井住友銀行と日本総合研究所が天津市からの委託を受けて、日本企業の進出をサポートしています。

「エコポイント2.0」(シリーズ;エネルギー基本計画と新成長戦略の不整合を補完する役割)

2010-12-14 07:19:19 | Weblog
新成長戦略では、グリーンイノベーションにより20年でGDP50兆円、120万人の雇用を創出するとしていますが、地球温暖化に関する新中期目標(20年で「90年比25%減」)やエネルギー基本計画の目標(30年で「90年比30%減」。真水ベース)という経済に対する“キャップ”の下で、いかに目標を実現するのかを明らかにしていません。
このような経済に対する“キャップ”は、それ自体は、経済成長に対してマイナス要因となります。現に、09年11月~12月政府の「地球環境に関するタスクフォース」の場に提出された国立環境研究所、日本経済研究センター、慶応義塾大学いずれのモデル計算結果においても、新産業・製品の登場を考慮しても、20年にはGDPはマイナスになると試算されています。そうすると、限界低減コストが低い海外から排出クレジットを購入してきたほうが、クレジット購入費が海外に流出するとしてもまだましだということになります。
このことは本当なのでしょうか。実は、必ずしもそうではありません。20年で「90年比25%減」、30年で「90年比30%減」(真水ベース)という経済に対する“キャップ”の下でも、追加的な財政出動をすることなく経済成長をプラスにするという「超難題」を解くツールが4つあります。このことは政府もエコノミストも触れていませんが、整理すると、次のようになります。

 第1のツールは、発想の視点を供給サイドから需要サイドに転換してオンディマンドの「エネルギーウェブ」を構築することです。そうすれば、技術の力だけではなく需要サイドから省エネ、CO2排出削減ができるようになります。「プロシューマー」(生産消費者)である数多くの「賢い需要家」の選択が集合して確実にCO2を削減できるようになります。また、長距離送電をしなくてすむようになり、送電ロスの節減、電力供給の平準化等に伴うCO2排出削減も実現できます。家庭やオフィスという最小単位に着目して「エネルギーウェブ」を構築するためには家庭やオフィスにおいて創エネ・省エネのハードや関連するネットワークを整備することが必要となりますが、これは膨大な需要を喚起することになり、第2のツールにおける需要創造につながります。

第2のツールは「スマートレギュレーション」と需要創造の組合せです。この点に関しては、1991年ハーバード大学教授のマイケル・ポーターにより「ポーター仮説」が提唱されています。これは、「適切に設計された環境規制は、費用低減・品質向上につながる技術革新を刺激し、その結果国内企業は国際市場において競争上の優位を獲得し、他方で産業の生産性も向上する可能性がある」との主張であり、それまでの「環境規制は企業にとっての費用増加要因となり、生産性や競争力にネガティブな影響を及ぼす」という通説的見解に真正面から異議を唱えるものとして、一躍脚光を浴びました。日本では、当時世界で最も厳しい規制を設けた1978年の自動車排ガス規制法(通称日本版マスキー法)がアメリカに先立って施行されたことが、80年代に日本の自動車産業の北米進出に有利に働いたという事例が語られます。
しかし、その後「ポーター仮説」に関してさまざまな検証がなされ、すべての規制の強化が、中長期的に市場生産物の生産性向上と利潤の増加をもたらすものではないことが実証されています。厳しい規制をかければ自動的にイノベーションを起こすわけではなく、「ポーター仮説」が実現するための条件整備が必要です。この条件整備で最も必要なのは需要創造であり、拡大する需要の中で“スマートな規制を創る”ことが必要なのです。日本版マスキー法の成功に関しても、排ガス規制が技術開発を促進した側面があったことは確かですが、北米に巨大な消費市場が生まれたこと、アメリカの消費者が低燃費車へニーズを移したことの影響も大きいと考えられます。
われわれが直面していることで言えば、「スマートレギュレーション」とそれを支える需要創造は、家庭・オフィスのネット・エネルギーゼロ化に向けた段階的な規制の強化とアメリカの「PACE」やイギリスの「PAY AS YOU SAVE」の日本版の創設ということになり、「スマート国民総発電所構想」はそれを踏まえたものです。

第3のツールは、第1の組合せを有効に機能させるための炭素の価格付けです。この炭素の価格付けにより、経済全体として効率的に「90年比25%減」、30年で「90年比30%減」(真水ベース)という目標を実現することができます。この家庭・オフィス部門のCO2削減を進めるために導入するのが、国内クレジット制度を活用した「家庭・オフィスCDM」です。この場合、排出権価格を変動させると、相場変動により価格付けのシグナルが有効に機能しない事態が出てきますので、排出権価格は合理的なレベルで固定することが必要です。

第4のツールは、消費サイドからの成長戦略として、エコポイント2.0を活用することです。この点は、別の記事で詳しく述べていますので、ここでは繰り返しません。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;クラウドコンピューティングへの展開)

2010-12-13 00:10:28 | Weblog
システムとしてのスマートグリッドの中で最も重要な機器が「スマートメーター」(Smart Meter)や「パワーメーター」(Power Meter)と呼ばれる情報通信機能を有する機器です。スマートメーターやパワーメーターは、数10m~100m程度の近距離無線機能が組み込まれ、エアコン、給湯器、照明、テレビ、冷蔵庫といった家庭や企業内の電気設備と接続されます。
これらを取り付けると、需要家の電力使用状況を遠隔地から把握できるようになります。用途としては遠隔からの検針のほか、需給双方の状況をリアルタイムで把握することで、供給側には素早い調整を可能にして電力ネットワークの維持に貢献し、需要側にはきめの細かい電力消費とそれに伴う電気料金の実質的な引き下げを実現することを可能にします。
こうした情報のやり取りが増えると、電力ネットワークを往来するデータの量は増大し続けます。1件当たりの情報量は小さくても、需要家の数が多いだけにネットワーク全体の情報量は膨大になります。膨大な情報の送受信を円滑に行うためには、インターネットや専用線などの情報インフラを抜本的に強化することが必要になりますし、クラウドコンピューティングの活用も必要になります。
クラウドコンピューティングとは,インターネットの先にあるサーバに膨大な情報処理をしてもらうシステム形態を指すものです。ユーザが何らかの作業を行うときに,自分の目の前にあるパソコンや会社のネットワーク上にあるサーバではなく,インターネット上のサーバを利用して処理してもらいます。膨大な情報の処理に関して全体最適を実現する仕組みとして、スマートグリッドに関連する領域においても活用が拡大しつつあります。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;EUのアグレッシブな再生可能エネルギー政策)

2010-12-12 05:40:23 | Weblog
経産省の審議会では、再生可能エネルギーの全量買い取り制度の具体化のための検討が行われていますが、るEUの「3つの20%」のうち再生可能エネルギーの積極的な導入を図るEUの政策に関しては、08年12月欧州議会で再生可能エネルギー指令が合意されました。
この再生可能エネルギー指令は、次のような画期的な内容を含んでいます。

第1に、20年までに最終エネルギー消費に占める再生可能エネルギーの割合を20%にするという目標を達成するため、加盟国の国別目標が設定され、さらにその達成が義務とされました。また、運輸部門については個別に総エネルギー消費の10%が再生可能エネルギーによるものであることが義務化されました。この10%という目標は、各国ごとに実現しなければならない目標です。

第2に、20年目標に向けて中間的な位置づけを持つ「指示的軌道」が設定されました。これは、20年目標値と05年値との差の一定割合を、11・12年(20%)、13・14年(30%)、15・16年(45%)、17・18年(65%)の4期で満たさなければならないというものです。この軌道は義務的なものではなくあくまでも指示的なものにとどまっていますが、「指示的軌道」が達成できない場合は、加盟国は再生可能エネルギー行動計画を修正してEU委員会に提出しなければならず、義務化に近い効果を有しています。

第3に、義務履行の手段として、加盟国は10年6月までに国別再生可能エネルギー行動計画をEU委員会に提出するとともに、11年末以降、隔年ごとに加盟国に対してEU委員会に報告書を提出するように義務付けられ、EU委員会によってモニタリングが実施されることになりました。

第4に、加盟国間で再生可能エネルギーの一定割合を移転できる「統計的移転」というスキームが導入されることになりました。これは、再生可能エネルギー導入目標あるいは指示的軌道を上回っている国から、それらを下回っている国に再生可能エネルギーの一定割合を移転できることになりました。また、加盟国間での協力事業や加盟国と第3国との共同事業により再生可能エネルギー開発事業を行った場合には、国別導入目標あるいは指示的軌道の達成にカウントできることとなりました。

第5に、「発電源照明」(GO(Guarantee of Origin):電力の取引に伴って発電源の情報をやりとりするもの)については、最終消費者に対する情報提供を目標として発行され、移転も行うことができますが、国別導入目標あるいは指示的軌道の達成としてはカウントできないこととなりました。この点に関しては、当初EU委員会としてはそのような案を提示しEU内で多くの議論がなされた点ですが、CO2の排出量取引のようなスキームの導入は見送られた形です。ただ、今後の制度の発展に期待したいと思います。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;エネルギーウェブのインパクト)

2010-12-11 06:20:11 | Weblog
「You Energy」のパラダイムの下では、供給サイドから需要サイドへのパワーシフトが起こり、誰もがエネルギーを作り消費する主体、すなわちアルビン・トフラーの言った「プロシューマー」となります。そうなれば、インターネット上での双方向メディア、ピア・ツー・ピア(Peer-to-Peer)のファイル共有・情報の自主管理の発展が思い描いたシナリオよりもはるかに大きな変革をもたらすことは間違いありません。
広がりつつある分散型電源は、複雑なソフトウェアや高度なデジタル技術、インターネットによって相互に接続し、「エネルギーウェブ」を形作っていきます。次世代高機能ケータイであるスマートフォンがその端末となるでしょう。さらに、「エネルギーウェブ」を活用すれば、省エネによる発電(ネガワット)と太陽光発電による創エネ(ポジワット)を、トータルとして個人・法人による発電ととらえることができます。この発電をエネルギーマネージメント・サービスにつなげ、発電収入やCO2削減分に対応したエコの価値を取引できるようにすれば、「You Energy ! 誰もがエネルギーを作れる」から「誰もが新ビジネスを創造できる」というパラダイムが生まれ、、おびただしいイノベーションの創造が「経済成長&雇用創出」につながるというパラダイムへと発展します。
それは「ビジネス革命」にとどまらず、私たちのライフスタイルをも変革する「生活革命」へと発展するでしょう。課題解決に向けて人々が新しいライフスタイルを自ら創り、その結果産業と雇用が生み出され、経済成長につながるという、いままでとは逆向きのイノベーション・プロセスです。そこで強みを発揮するのは一人ひとりのゼロからの創造力です。その主体は市民で、その場は地域です。今日本の課題となっている「地域主権」社会の構築や「新しい公共」の創造にもつながります。このパラダイムの出現が「スマートグリッド革命」が革命たるゆえんです。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;スタートアップ企業の雄グリッドポイント)

2010-12-09 07:16:58 | Weblog
アメリカでは「スマートグリッド革命」の扉を切り開く様々なスタートアップ企業が登場していますが、その雄はグリッドポイントです。グリッドポイントは電力会社に対して、エネルギー効率向上、負荷マネージメント、再生可能エネルギーマネージメント、エネルギー貯蔵マネージメント、電気自動車pHEVマネージメントなどを行うモジュールやアプリケーションSmartGrid Platformを提供している企業です。また、グリッドポイントは消費者のエネルギーマネージメントを支援するオンラインのサイトを提供しています。
グリッドポイントは、スマートグリッド関係のスタートアップ企業のなかでも最も多くの資金を調達し、最も多く人々の話題に上った企業です。03年に設立され、2億200万ドル以上の資金を調達しました。本社はヴァージニア州のアーリントンに所在しています。09年2月Gridpointはソフトウェアの大企業OSIsoftとの戦略提携を発表しました。これによりSmartGrid Platformの拡張、強化が可能となるものと見込まれています。
08年9月グリッドポイントは、1億2000万ドルを調達してシアトルに本拠地のあるV2Greenを買収しました。これにより、プラグインハイブリッド車や電気自動車と電力ネットワークとの接続やピークバックなどの技術と技術スタッフを有することになりました。これを基盤として、グリッドポイントは車両に搭載する充電制御装置である「VCM(vehicle control module)」を開発しました。VCMを使えば、プラグインハイブリッド車や電気自動車の充電時間や充電量などを同社が管理するサーバで遠隔制御することができます。
また、同社は、ユーザが携帯電話から多数の急速充電器に関する空き情報を検索できるサービスを提供しているクーロン・テクノロジーと提携して、自社のネットワークとクーロン・テクノロジーのネットワークを連結するようにしました。これにより、家庭や個人はHEMSとV2Gを一体化させてエネルギー管理、CO2排出管理ができるようになりまりました。
さらにグリッドポイントは、09年11月、オフィスビルや工場などのエネルギーマネージメント・システムのトップ企業であるADMMicro社を買収し、この分野においても積極的に進出しています。電力会社との関係では、グリッドポイントはエクセルアネジーとのエネルギー貯蔵プロジェクト、デュークエナジーのプラグインハイブリッド車プロジェクトの2つのパイロットプロジェクトに参加しています。 

「エコポイント2.0」(シリーズ;「メタ通貨」としてのエコポイント2.0)

2010-12-08 00:31:30 | Weblog
私が提唱しているエコポイント2・0は、現行の家電エコポイント・住宅エコポイントを進化させたものであり、1998年のエコマネー提唱以来登場した地域通貨、補完通貨、時間通貨、そして消費生活における各種電子ポイント、電子マネー、エコアクションポイント(EAP)、フードマイレージ、家電エコポイント、住宅エコポイントを包摂する“メタ通貨”です。
最先端ITを活用して名目利子率マイナスの貨幣の本格的流通を実現させ、真の“エコマネー(環境通貨)”であると同時に地域通貨の構想力を超える“グローカル通貨”であるエコポイントマネー2・0」を媒介として、われわれが現在のみならず、過去、未来と持続可能性をもたらす取引をすることによって、地球と未来を救うことができます。
 エコポイント2・0の特徴は4つあります。①名目利子率マイナスの貨幣であること(すなわち時の経過とともに減価すること)、②共通通貨単位としてのエコポイント2.0により最適通貨圏を構築し、その最適通貨圏において流通するものであること、③カーボン経済、CO2本位制の実現につなげること(当面はマネー経済との並行通貨制)④電子ポイント・電子マネーのシステムを活用し、発展させることです。 
 このうち①の点については、電子ポイントはすでに家電量販店のポイント、クレジットカードのポイント、携帯のポイント、マイレージ、大手スーパーのポイント、商店街のポイントなど、さまざまなものが私たちの身の回りに登場していますが、この電子ポイントの名目利子率はマイナスです。すなわち、電子ポイントの価値については有効期間中はゼロ、有効期間後は一挙に価値がなくなると言う意味でマイナス無限大です。また、発行主体が引当金を積まなければならないため、ポイントの減価の仕方は発行主体の戦略により柔軟に決められています。このようなことから、電子ポイントの名目利子率はマイナスであると考えることができます。