エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;自動車メーカーも大競争時代に突入)

2010-12-20 00:14:53 | Weblog
「スマートグリッド革命」の下で、自動車メーカーも“大競争”時代に突入しています。09年10月に放送されたNHKスペシャル『自動車革命』でのシリコンバレー、中国などの“Small Hundreds”と呼ばれる中小自動車メーカー群の登場は衝撃的でした。
韓国の電気自動車ベンチャーも登場しています。韓国のCT&T社は、2人乗りのEV「e—ZONE」を09年11月から日本市場にも投入していますが、驚くのはその価格です。鉛電池搭載の場合167万円、政府の購入補助金を使えば、100万円。リチウムポリマー電池を搭載した場合も、補助金を使えば130万円強です。先行して発売する三菱自動車の「i—Miev(アイ・ミーブ)」の320万円(補助金利用時)の半値以下です。最高速度は70キロメートル程度、1回の充電による走行距離も70〜120キロメートルですが、圧倒的な低価格路線で勝負しようとしています。
日本でも電気自動車を普通の乗り物として定着させようという草の根レベルの取組みが始まっています。例えば、埼玉県秩父市にある電気部品メーカーである埼玉富士は、新潟県長岡市の人間行動科学研究所」所長から指導を受けてガソリン車の中古を改造してEVの試作車を完成させました。同社のEVはセカンドカーとして、買い物や届け物、農作業などにちょっと行くときの「ちょい乗り車」という発想のものです。8時間フル充電で時速40キロの場合、連続40キロの距離を走れます。今のところ、改造費用を合わせた車の値段は120万〜130万円ですが、将来は100万円以下にすることを目指しています。このように、時代は確実にガソリンに支えられた20世紀の自動車文明の終焉を告げていると言えるでしょう。
こうした”破壊的イノベーション”であるプラグインハイブリッド車や電気自動車が今後普及すると、自動車業界を取り巻く環境は激変します。最大の変化は、自動車の動力源や動力機関です。動力源については、ガソリンなどの化石燃料がパワーバッテリによって供給される電気へと替わり、動力機関については、メカニクス技術・部品の代表格である旧来型内燃機関(ガソリンエンジンなど)が、動力モーターやインバーターなどのエレクトロニクス技術・部品へと替わります。
プラグインハイブリッド車や電気自動車普及のインパクトは、こうした製品のアーキテクチャーレベルの変化に留まりません。動力機関の変化に伴い、自動車メーカーの開発・生産・調達モデル自体が変わります。
メカニクス主体からエレクトロニクス主体への動力機関の変化は、これまで日本企業が得意とされてきた「すり合わせ型の垂直統合産業モデル」を、PCや液晶テレビ、携帯電話などのデジタル製品に代表される「モジュール型の水平分業産業モデル」へと変える可能性があります。部品点数の大幅な減少と主要部品の相互依存関係が簡単となり、部品のデザインルールが企業内で共有される「クローズドモジュール」から産業全体で共有される「オープンモジュール」へと転換する可能性すらあります。それにより、自動車メーカーを頂点とするピラミッド構造を形成してきた現在の自動車産業において、産業構造全体に及ぶ変化が起きる可能性も否定できません。
また、「車両は販売し、バッテリはリースする」という新規ビジネスモデルが成功すれば、これまで所有・保有することを前提とした自動車に対するユーザの価値観も革命的に変化することでしょう。その段階においては、消費者の自動車に対する役割・付加価値が、快適なモビリティ空間というものから、モビリティの原点としての移動手段というものへ回帰することとなります。そうすると、これまで自動車業界特有の仕組みだった「メーカー系列販売店による販売・サービス形態」も、同様に革命的変革を受けることになります。すでに家電製品に代表される他産業で主流となっているメガリテーラーや、ネットによる販売に主軸を移した販売・サービスモデルなどへ移行する可能性も出てきます。