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デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

世界最高のドラマーを生涯支えたケイコ・ジョーンズ

2023-03-05 08:30:27 | Weblog
 ジャズ誌で忘れかけていた名前を見ることがある。一時は死亡説まで流れたジャッキー・マクリーンの5年ぶりの新作「Live At Montmrtre」とか、収監、入院を繰り返して半ば引退状態のアート・ペッパーが、「Living Legend」で復帰したという嬉しい話題もあったが、大抵は訃報である。今回もそれだ。ケイコ・ジョーンズが昨年9月に亡くなっていたことを知った。

 ツーショットのジャケット「Poly Currents」も、「Coalition」も、「Keiko’s Birthday Song」が収められた「Puttin' It Together」も久しく聴いていない。一度会ったことがある。正確に言うとライブ会場ですれ違っただけなのだが、印象は強かった。ウィントン・マルサリスとマッコイ・タイナーが参加した97年の「Tribute to John Coltrane : A Love Supreme」である。日本人離れの派手な服装の女性がスタッフ数名を従えて会場を歩いていた。立ち見も出るほどの盛況ぶりを見にきたのだろうか。数メートル手前からシャネルの香水が匂う。

 「Coalition」は70年録音のブルーノート盤で、ジョージ・コールマンとフランク・フォスターの2テナーにウィルバー・リトルのベース。このメンバーだけでかなり強烈なのだが、さらにコンガのキャンディドが参加してポリリズムを全面に打ち出した作品だ。トップに収められている「Shinjitu」はケイコ作で、エルヴィンのドラミングがより映える曲だ。生で見たエルヴィンは全身バネで、スティックを止めようにも止まらない。そして一体腕が何本あるのかと思うほどの複雑な音。フロントを煽るバスドラムとハイハット。楽器のセッティングはケイコというから驚きだ。

 ケイコはライブ前にステージに上がり、メンバーの紹介とエルヴィンの偉大さを語るのが習わしだ。10分を越える長話に「エルヴィンは世界最高のドラマー」とうフレーズが何度も出てくる。当時は退屈したトークも今となれば懐かしいし、鼻に残る強烈な香水もいい思い出だ。世界最高のドラマーを生涯支えた日本人。享年85歳。合掌。

敬称略
コメント (5)
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