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デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

ジェラルド・ウィルソンの天晴ジャズ人生

2014-11-09 09:27:46 | Weblog
 ジェラルド・ウィルソンが9月8日に亡くなったことをジャズ誌で知った。日本での知名度と人気に比例して扱いは小さい。今では息子のギタリスト、アンソニー・ウィルソンの方がダイアナ・クラールと共演したことですっかり有名になった。その父親と小さく紹介されることが多いが、長年に亘ってウエスト・コーストのビッグバンドを率いた優れたリーダーとして本国ではつとに有名だ。

 ジミー・ランスフォードをはじめベニー・カーター、カウント・ベイシー、ディジー・ガレスピー等の楽団にトランぺッターとして仕事をしながら楽団経営のノウハウを学び、若いうちから独立している。一時期中断したこともあるが、70年にも及びビッグバンドを束ねることは、いくらレコーディングやホテルの仕事が多いロスアンゼルスでも容易なことではない。ビッグバンドの要はアレンジだが、成功した理由のひとつはウィルソンの編曲だろう。エラ・フィッツジェラルドをはじめビリー・ホリデイやナンシー・ウィルソン等、多くのシンガーが彼の編曲で歌うことを望んだほどのアレンジャーだ。

 「Portraits」は、1963年の録音でメンバーが凄い。カーメル・ジョーンズをはじめバド・シャンク、ジミー・ウッズ、テディ・エドワーズ、ハロルド・ランド、ジャック・ニミッツ、ジャック・ウィルソン、ジョー・パス、ルロイ・ヴィネガー等々、よくぞ集めたものだと驚く。一流のアレンジは一流のソロイストが演奏してこそ一級品に仕上がるということを実証している。アルバムトップは何とマイルスの「So What」だ。モード時代の幕開けを告げる曲を粋なアレンジで聴かせてくれる。豪快にスウィングするのもビッグバンドの魅力なら、華麗なハーモニーもビッグバンドの愉しみである。

 ウエスト・コースト出身の有能な若手プレイヤーが一度は籍を置いたといわれるのがウィルソンのバンドだ。エリック・ドルフィーをはじめワーデル・グレイ、テディ・エドワーズ、ジョー・パス等々、一部を挙げるだけでオールスター・バンドができる。若手を育てながら、シンガーやソロイストが映えるアレンジを書き続けたジェラルド・ウィルソンは生涯現役だった。享年96歳。天晴ジャズ人生に大きな拍手を送りたい。
コメント (16)
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