団塊太郎の徒然草

つれづれなるままに日ぐらし

ギリシャは「デフォルト」も 米S&P見解、海外報道

2011-07-04 21:09:42 | 日記

 米大手格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は4日、欧州連合(EU)などが検討中のギリシャ国債の借り換えが実施された場合、デフォルト(債務不履行)とみなす可能性があるとの見解を示した。ダウ・ジョーンズ通信が報じた。借り換えはギリシャ向け第2次金融支援策の柱となっており、支援策策定に影響を及ぼす恐れがある。国債借り換えは、同国国債の保有者にとって、価値減少につながることが理由。(共同)


太平洋海底に巨大レアアース鉱床、陸上埋蔵の1000倍か

2011-07-04 20:35:38 | 日記

 東京大学の加藤泰浩准教授らの研究グループは、太平洋の海底でレアアース(希土類)の巨大鉱床を発見したことを明らかにした。発見の詳細は、英科学誌ネイチャー・ジオサイエンス電子版に4日掲載される。 

 

 加藤准教授と海洋研究開発機構の研究者らで構成するチームは、太平洋の水深3500─6000メートルの海底78カ所から採取された堆積物を調査し、レアアースの鉱床があることを発見。加藤准教授によると、鉱床はレアアースの含有濃度が高く、1キロメートル四方で、世界のレアアース年間使用量の約20%をまかなうことができるほどだという。

 

 発見された鉱床のある場所は、ハワイ沖からフランス領タヒチ島周辺まで広がり、大半は公海の海底。推定埋蔵量は800─1000億トンと試算している。

 

 地質調査で現在までに分かっているレアアースの陸上埋蔵量は約1億1000万トンで、海底新鉱床の推定埋蔵量はそれの最大約1000倍に達することになる。

 レアアースは世界の年間生産量の97%を中国が占めるが、輸出を制限したことで価格が高騰している。

 [東京 4日 ロイター]


:「節電の夏」が映し出す日本経済の柔軟性、成長率引き上げのヒントに

2011-07-04 20:30:36 | 日記

今年は6月末から真夏を思わせる猛暑の日数が多く、ビールや清涼飲料、アイスクリームの販売増加が目立ってくると予想される。こうした例年の猛暑型の売れ筋商品だけでなく、節電タイプのエアコンや電気代の安い扇風機、江戸時代からある団扇(うちわ)、夜に窓を開けている時間が長くなり利用が増えている殺虫剤や蚊取り線香など、「節電の夏」の恩恵で販売量を伸ばしている商品も多い。社会の変化をビジネスチャンスと捉え、売り上げを伸ばしていく才覚。デフレ下で元気の出なかった日本では、久しくみかけなかった企業家精神がよみがえりつつある、と思うのは私だけだろうか。 

 第一生命経済研究所・主席エコノミストの熊野英生氏は、足元で起きている現象について「節電で製造業の生産水準が落ちないのであれば、節電によるコスト削減効果が企業収益のサポートになる。節電によるコスト削減がさらに進化していけば、日本企業の競争力強化に役立つことになる」と述べる。外的環境の変化をビジネスチャンスとして取り込む柔軟さが、日本企業の強みをさらに磨くことにつながるだろうと指摘している。  

 

[東京 4日 ロイター] 政府が1日から東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)と東北電力(9506.T: 株価, ニュース, レポート)管内で発動した電力使用制限令に対し、「節電の夏」にはマイナスが多いという報道が多いが、企業のコスト削減に直結し、日本経済全体にとっても柔軟性(フレキシビリティ)の向上に結び付く動きが垣間見える。 

 そこには宿痾(しゅくあ)ともいうべき日本の潜在成長率の低下に歯止めをかけるヒントが潜んでいるのではないだろうか。

 

 <15%節電でコスト削減>

 

 自動車や電機メーカーが同日から休日出勤態勢をスタートさせる一方、私鉄の一部は7月から急きょ、日曜日にも平日ダイヤを組んで休日出勤への対応を始めた。電力需給のひっ迫を受け、日本社会が全体で大がかりな取り組みを始める中、新聞・テレビなど各メディアでは「節電で大変」という部分が強調されている報道が多い。しかし、視点を少し変えると、もう一つの「節電効果」が見えてくる。

 

 企業は15%の節電を実行することで、電気代のコストが15%削減できる。この先、原子力発電の稼働率が下がり、短期的に火力発電の比重を高めて対応すると10%以上の電気料金値上げの可能性があるとの試算も一部で行われ、製造業の生産拠点の海外流出の大きな要因として意識されているが、もし、この夏の電気代が15%削減できるなら、その経済的なインパクトは無視できない規模に上ると言えるだろう。夏場に限定せず、通年で電気代のコストを15%削減しつつ、生産への影響が出ないシステムが完成すれば、日本の企業にとって国際競争力を中期的に高める要素として、世界中から注目されることになると予想する。

 

 <実質的に広がるサマータイム制>

 

 また、政府が何十年も前から検討しながら実施できないサマータイム制も実現しつつある。主要企業による自発的な導入で、実質的にサマータイム制が企業社会のかなりの範囲で実行に移される、という過去に例のない大きな社会的変化を生み出している。一部の私鉄は始発電車の時刻を繰り上げ、主要企業の中には午後4時で就業を打ち切り、社員を退社させているところもある。この変化を商機とみて、夕方のビジネスを強化する飲食店やカルチャーセンターなどの取り組みも出てきている。

 <迅速性で後手に回る日本企業> 

 

 日本の潜在成長率は、3月の東日本大震災後に1%を割り込んだのではないかと一部で試算されている。潜在成長率の低下を加速させている最大の要因は少子高齢化の進行というのが一般的な見方だが、もうひとつ重要な理由として忘れてならないのは、多くの日本企業がイノベーションへの意欲を失ってきた、という点だろう。大震災による劇的な環境変化が、眠っていた日本企業の才覚を呼び覚まし、変化を新しい商機に結びつけるバイタリティが復活する。それが潜在成長率低下の基調を反転させるきっかけになるのではないか。 

 

 もちろん、その実現は容易ではない。公式なデータがまとまる段階ではないようだが、被災地の仮設住宅の資材をめぐって、あるアジアの国の企業が大量に受注し、一部の国内勢がそのしわ寄せを受けているようだ。また、節電の決め手と言われているLED照明では、安価な製品は海外勢がシェアを急拡大させていると言われ、国内メーカーを困惑させているという。明暗を分けたのは、最終消費者のニーズを正確に把握し、いかに早く対応できるのか、という点だったと指摘したい。変化への緩慢な対応という日本病は、政府から企業へと伝染しているように見える。

 大震災の発生以来、日本企業の現場力ばかりが注目されてきたが、変化に対応するバイタリティも決して死滅していたわけではないことが明らかになりつつある。日本企業の柔軟性や潜在的な活力の強さが「節電対応力」の形で世界に注目されれば、日本の株式市場にも世界のマネーを呼び寄せる強い磁力がよみがえるかもしれない。 

 

*筆者はロイターのコラムニスト田巻 一彦 です。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。


対中ODAが続いている理由

2011-07-04 20:08:06 | 日記

まず最初に、現在の対中ODA(政府開発援助)はどうなっているのか。その状況報告から始めたい。

 対中ODAは、昨年の尖閣列島沖の中国漁船衝突事件の時も批判の的になった。そして、今年3月に中国の国内総生産(GDP)が日本を抜いて世界第2位になったことが発表され、さらに、その進退が厳しく問われている。

 既に前原誠司外相はODAの減額を検討するよう指示した。現在の対中ODAは、2009年度実績で見ると、技術協力と無償の援助を合わせて約46億円ほどある。

 

円借款は北京五輪の前年に終了

 

 対中ODAの90%を占める円借款は、北京五輪の前年の2007年で終了し、その30年の歴史に終止符を打った。その累計は3兆3165億円で、実施したプロジェクトは231件を数える。

 政府は時々「今も援助しているとはけしからん」と詰問されることがあるようだが、それらは、2007年までに借款協定を結んで実施しているプロジェクトのことではないかと思う。JICA(国際協力機構)によると、これらの案件は2017年頃にすべてが完成する予定だという。

 現在進行中の対中ODA、約46億円は主に3つの分野に分けられる。1つ目は、環境問題への対応。2つ目は、改革・開放支援として会社法や独占禁止法などの経済法、民法/民事訴訟法などの法整備協力。そして、3つ目は相互理解の一環として青年海外協力隊やシニアボランティアの派遣、人材育成奨学計画などだ。

 以上が対中ODAの現実である。

 中国はG20(20カ国・地域)首脳会議でも胡錦濤・国家主席自ら「中国は発展途上国だ」と宣伝している。しかし、それは国家戦略的な発言であって実態的ではない。一般的にはGDP世界第2位、外貨準備高、軍事力などから見て、中国は米国の対局に位置するような大国であるから、「もはやODAの対象国ではない」と見られるのは当たり前である。だから、対中ODAは即刻廃止すべきだという議論が高まるのである。

 

「中国、封じ込め政策」を180度転換

 

 そこで、筆者はどう考えているのかと問われれば、欧米並みの“援助卒業国”と見なして、そろそろ中国をODAを対象国から外してもよいと考える。もし、ODAという枠組みに入らない形でお付き合いするならば、ほかの先進国と同様に近隣外交ベースに切り換えるべきではないかと考える。

 現在の中国に対して、ODA予算を使って親善交流を図ろうとするから、人々の反発を受けるのである。現在の日中関係は、日本からの輸出、民間投資などを中心にラッシュアワー的な経済交流が進展しているので、昔のようにODAで日中関係をバックアップする必要性は大きく減退している。日中関係は戦略的互恵の時代に入っているのである。

 それでは、次に対中ODAの原点に戻って、対中ODAはどういう経緯で始まり、どういう形で中国経済の発展に寄与したのか、その真相に迫ってみたい。

 まず、歴史的な事実関係から始めよう。

日中関係の大きな変化は、1971年のニクソン・ショックから始まった。ニクソン米大統領はベトナム戦争の手詰まり状態を解決すべく、背後から武器支援していた中国との対話を深めるために、これまでの「中国、封じ込め政策」を180度転換した。

 佐藤栄作内閣を引き継いだ田中角栄首相は1972年9月25日に訪中し、国交正常化を果たす。その後、国交正常化を完成させたのは福田赳夫首相であるが、その背後には、日中貿易の飛躍的な拡大を臨む経済界(特に関西財界)がいた。

 実は、水面下でのこうした動きが1978年の日中平和友好条約、1979年の大平首相による対中ODA実施へとつながっていた。

 

「開かれた中国」というコンセプト

 

 米国はベトナム戦争の打開のために中国接近を図ったが、日本はその底流において日中貿易を大きく前進させるチャンスを考えていた。現実に、戦後から日中貿易の動きは活発だった。1951年の吉田茂首相の時代から、民間レベルで中国との第1次民間貿易協定(バーター取り引き)が政経分離の形で進められた。1953年、国会で「日中貿易促進決議」が通り、第2次日中民間貿易協定がまとまった。

 鳩山一郎首相の時代には第3次民間貿易協定(商品見本市開催)で、それまでの4倍に相当する1億5000万ドルの売り上げを計上している。2代後の岸信介内閣の時代に政府レベルの交流は冷却期を迎えたが、池田勇人内閣では再び1962年の「日中総合貿易に関する覚書」が結ばれ、いわゆる「LT貿易」が始まる。これが佐藤内閣の時に「覚書貿易」と言われる「MT貿易」へ発展する。1979年の時点における日本の輸出は中国全体の5分の1、輸入の4分の1を占める対中第一の貿易相手国であった。

 こうした民間経済交流の積み上げの中で、1980年からの大平正芳首相による規模の大きい対中ODAが始動したのである。

 大平首相は小平副主席の「改革・開放」政策に対し、「開かれた中国」というコンセプトの対中政策を打ち出した。さらに、「対中経済協力三原則」も発表した。その内容は(1)西側諸国との協調、(2)他アジア諸国、特にASEAN諸国とのバランスを考慮すること、(3)軍事面での協力はしないこと――、などである。

 

アンタイド援助が「負の遺産」に

 

 大平首相の「開かれた中国」という外交コンセプトは、今日にも通じているものである。中国は「改革・開放」政策で経済大国になった。その舞台裏では日本の民間貿易、民間投資、ODAなどの支援があったと言っても差し支えないだろう。その意味で初期の「開かれた中国」政策は大成功を収めたと言える。

 だが、現在の中国は不自由な国内政治体制は言うに及ばず、東南アジアの西沙、南沙諸国の領有権問題でも強圧的態度を取っている。対外的にも協調という面で「開かれた中国」になっていない。

 その意味で、中国に対して日本は初心を忘れず、内外にわたって「開かれた中国」を目指す外交的使命は今も生きていると考えるべきであろう。たとえ永遠の課題であろうとも挑戦すべき歴史的価値はあると言いたい。

 いずれにせよ、こうして、対中ODAが1979年から始まった。

中国は円借款で巨額の開発資金を得たかった。その結果、対中ODAの90%以上が円借款で占められるようになった。円借款は返済期間30年(うち据え置き10年)、金利3%、それでいてすべてアンタイド(ヒモの付かない援助)という条件であるから、中国にとっては願ったりかなったりの開発資金源になった。

 中国は、以後30年間にわたり、円借款3兆円以上を使って世界中から優れた技術を得るために「バラ買い調達」を行い、開発コストも引き下げることができた。

 現在の高速鉄道でもドイツ、フランス、日本などから機材をバラ買いし、そこから集めた技術を模倣改造して、いかにもメイド・イン・チャイナのオリジナルのように宣伝している。その諸悪の根源の1つは日本の供与したアンタイド援助にあるといっても過言でない。国益という点で中国へのアンタイド援助は「負の遺産」になった。

 それでは、日本はどうしてアンタイドにしたのか。

 そこには、表には出ないが、太平洋戦争から引きずる中国に対する贖罪意識、そして賠償意識が強く働いたからだと言われる。何しろ、日本側の交渉人たちは戦中派であったから、なおさらである。

 当時の中国は、本音では賠償を請求したいほど、国造りのための開発資金不足に陥っていた。しかし、先に日本と日華平和条約を結んだ蒋介石総統は賠償請求権を放棄しているので、後発の北京政府が賠償請求を行えば、自ら「2つの中国」を認めることになる。「1つの中国」を国是とする中国にとって、これは絶対にできない。

 

対東南アジアの戦争賠償行為「準賠償」

 

 以上が賠償請求権を放棄した表向きの理由である。しかし実際は、台湾政府も日本の植民地時代からの賠償金額を計算しようとしたものの、日本の財産権の設定など、計算が極めて複雑で難しくなるために放棄したと言われている。恐らく、北京政府も日本が建設した南満州鉄道などを加味した正確な請求書は書けなかったに違いない。

 ところが、日本の東南アジア諸国への戦争賠償行為を調べてみると、賠償を放棄した国々には「準賠償」という形で、円借款を供与している。誰に知恵を付けられたかは分からないが、中国はどうやら、ここに目をつけたようだ。つまり、賠償として一時金を受け取るより、長期にわたって円借款協力を取りつけ、経済協力の名目で開発資金を得た方が得策だと考えたと推測される。

 その結果は大成功で、中国は対中ODAという形で30年にわたって累計3兆円以上の開発資金を獲得したのである。ちなみに、日本から東南アジア8カ国への準賠償総額は約2453億円程度だった。

 対中借款の多くを占める鉄道、港湾建設、水力発電所建設などの経済的な基本インフラが、今日の中国経済の発展にどう影響を与えたか。これを書き始めれば非常に長くなってしまうのでここでは割愛させていただく。ただ、この分野については、経済学的に効果を測る学者の世界に委ねるべきだと思っている。

 申し遅れたが、筆者は1980年5月、文化大革命の余熱が冷めやらない北京を訪ね、円借款第1号となった大同-北京-秦皇島(渤海沿い)の鉄道の複々線化と電化、そして石炭積み出し港となる秦皇島港湾の建設現場を取材した。

 この港から、大同で産出される石炭を日本に輸出するはずだったが、日本側の都合でキャンセルされた。この頃の日本は資源確保のため、今の中国のように世界中を奔走していた。中国には石油、石炭などの資源を求めていた。この頃の記者としての原体験を下敷きにして、今回の対中ODAをレポートしたことを付け加えておきたい。

荒木 光弥(あらき・みつや)

1967年「国際開発ジャーナル」創刊に参加し、40年以上にわたり代表取締役兼編集長を務める。2003年10月より現職。外務省「国際協力に関する有識者会議」委員、経済産業省「産業構造審議会経済協力小委員会」委員、文部科学省「国際教育協力懇談会」委員などを歴任。主な著書に『途上国援助 歴史の証言-1970年代80年代90年代』(国際開発ジャーナル社)などがある


現時点で既に(東電は)倒産している!

2011-07-04 20:00:32 | 日記

東電決算監査は「適正」か?

ルール遵守だけでは問題を見逃す

いささかの牽強付会を許していただければ、福島第1原子力発電所の事故による巨額損失で揺れる東京電力の2011年3月期決算はどの視点から見ればいいのか。

 売上高5兆3685億3600万円、営業利益3996億2400万円ながら、純損失を1兆2473億4800万円とした巨額損が、原子炉の冷却など安全対策や停止・解体費用と減損によるものであることは知られるところ。

 だが、数兆円から10兆円規模にも上る可能性がある損害賠償については全く計上していない。仮にその損失を見積もり、費用として引当金に計上すれば1兆6024億円の純資産を吹き飛ばし、たちまち債務超過に陥る恐れもあるはずだ。

 「現時点で既に(東電は)倒産している!」。6月28日の株主総会では、株主の1人が議長を務めた勝俣恒久会長らに向けて怒声を放ち、返す刀で「役員は私財を提供して責任を取れ」と詰め寄る一幕まで見られた。

 今、同期の決算の処理について監査を担当する新日本有限責任監査法人がつけた「適正意見」を巡っては、会計士や会計学者はもちろん、株主まで議論は沸騰し、意見は激しく対立しているのである。

 正否異なる両者の視点に立てば、そこに何が見えるのか――。

 まずは「適正意見」を正当とする側。新日本自身は、当然ながら個別案件についてはコメントしないから、あくまで一般論としてだが、損害賠償に関する引当金を計上するには、3つの条件が揃う必要があると言う。

損害賠償損計上に3つの条件

 (1)損害賠償など債務の原因となる出来事が期末までに発生、(2)損害賠償などの費用や損失が発生する確率が高い、(3)損害賠償額を合理的に見積もることが出来る――である。

 それ以上は答えないものの、東電が会社法に基づいて作成する2011年3月期の計算書類を子細に点検すると、(1)と(2)についてはありとし、(3)は認めていないことが分かる。

 計算書類には、現時点では債務ではないが、一定の条件が揃うと将来債務となる可能性がある偶発債務が損害賠償で発生する可能性を認めている。そして、それらが大きいため、事業の継続に疑問があるとする「継続企業の前提に重要な不確実性がある」とも認定している。

 ところが、(3)については、補償の範囲や期間などの賠償指針を決める文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会がまだ、指針の全体像を確定していないため、「現時点では損害賠償を合理的に見積もることができない」と明快に否定している。

 つまり、損害賠償額の合理的見積もりが不可能だから賠償損は計上していないが、巨額の偶発債務の存在と、それによる“破綻の可能性”を注記することで十分、正しい会計処理をしているという判断が、新日本の適正意見の重要な根拠になったのだろう。

 監査のルールだけをひもとけば、「なかなか反論はしにくい」(別の大手監査法人の会計士)とされるのはこのためだ。

だが、疑問を呈する側には別の角度の視点がある。

 公認会計士でもある愛知工業大学の岡崎一浩教授は、企業会計審議会が2002年1月に策定した「監査基準の改訂に関する意見書」をめくりながらこう指摘する。

 「意見書には『監査人は将来の帰結が予測し得ない事象、状況について、財務諸表に与える影響が複合的、多岐に渡る場合は重要な監査手続きを実施できなかった場合に準じて意見表明ができるかを慎重に判断しなければならない』とされている。ここに抵触しないのか」

 加えて「今第1四半期にも損害賠償指針が決定されれば、すぐに兆円単位の損失が予想されるほど誰の目にも巨額損の存在が想定できるのに、それを注記ですませていいのか。適正意見を出せるかどうか疑問があれば、監査意見を表明しないということもできたはず」とも切り込む。

 「慎重に判断したからこそ意見表明をした」とする肯定派は、損害賠償指針のない今、その損失は「誰の目にも想定できない」というわけだから、指摘は恐らく水掛け論なのだろう。

会計士協会の通達が“圧力”に?

 だが、肯定派への疑問はまた別の角度からも浮かぶ。

 その1つは日本公認会計士協会が今年3月末の時点で、会計士に「安易に監査意見を不表明にしない」よう求める会長通達を出したこと。ただでさえ意見不表明は、銀行が企業に一定枠の融資をする際、財務面の維持条件として設定する財務制限条項(コベナンツ)に触れ、新規融資が受けられなくなるケースもあるだけに、通達は暗黙の圧力となったのでは、という見方。

 「監査法人は、外堀を埋められたようなもので、監査意見不表明に逃げるのは難しくなる」(青山学院大学大学院の町田祥弘教授)。適正意見に傾きやすくなるというわけだ。

 さらには適正意見自体を判定する方法も限られている。本来、会計監査は、個々の監査人が独自に行うものとされているから、他者の評価が及びにくい。もちろん、監査結果については、日本公認会計士協会が個々の監査法人に対して3年に1度程度行う通常の監査レビューと金融庁の外郭団体が行う検査があるが、前者は「定例的なもので厳しい評価を行うわけではない」(岡崎教授)し、後者の場合は、事件性のあるような案件の検査が中心だという。実態として、監査ルールだけで判断するのが適当かどうか意見の分かれる今回のような案件について議論をする場はないに等しいと言われる。

ルール適合だけでは問題を見逃す

 米国史上最大級の粉飾決算事件となった電力会社、エンロンの不祥事(2001年)は、SPE(特別目的事業体)に投資の損益をつけ回しながら、本体と連結せず、外から損失が見えないようにしたことが発端だった。最後は空前の粉飾決算であることが判明したが、SPEの連結外し自体は当時、会計基準上認められたものだった。

 ルールへの適合性で判断することはもちろん大事だが、それだけにとらわれていては、より奥深い問題を見逃しかねない。ケースは異なるが、東電監査を巡る論争は、肯定・否定両派の心にうずくまる、そのもどかしさを示しているようにも見える。視点を変えれば蟇は「滑稽者」にも「将」にもなるのである。

田村 賢司(たむら・けんじ) 日経ビジネス編集委員。