福島第1原発事故の要因になった長時間の全交流電源喪失(SBO)について、原子力安全委員会のワーキンググループ(WG)が1993年、炉心損傷を招く可能性があると認めながら、「考慮する必要はない」とした国の安全設計審査指針を追認する報告書を出していたことが分かった。安全委は報告書を公表せず、その後の安全対策にも生かしていなかった。
安全委の班目(まだらめ)春樹委員長は「『SBOを考えなくてよい』と書いたのは最悪」と認めた上で「前から安全規制改革をやっていれば事故は防げた。反省するところからスタートしないとだめだ」と述べ、経緯を検証する方針を明らかにした。
WGは原子力施設事故・故障分析評価検討会に設けられ、5人の専門委員と4人の外部協力者が参加。91年10月から93年6月にかけて非公開で12回の会議を重ね、国内外のSBOの規制上の扱いや発生例などを調査・検討した。
本紙が入手した報告書では「短時間で交流電源が復旧できずSBOが長時間に及ぶ場合には(略)炉心の損傷等の重大な結果に至る可能性が生じる」と指摘。福島第1原発と同様の事故が起きる恐れに言及していた。
さらに、米原子力規制委員会(NRC)が連邦規則で法的にSBO対策を求めたり、フランスでも危険を減らすため設計上考慮するよう国が求めたりするなど、一部の国で安全対策が講じられていることも指摘した。
ところが、日本では(1)SBOの例がない(2)全原発に2系統以上の非常用電源がある(3)非常用ディーゼル発電機の起動の失敗率が低い-などとして「SBOの発生確率は小さい」「短時間で外部電源等の復旧が期待できるので原子炉が重大な状態に至る可能性は低い」と結論づけていた。
米国などでは洪水やハリケーンなどを考慮して安全かどうか検討していたが、WGは自然災害を検討対象から除外して、長時間のSBOを考慮する必要がないとした安全指針を追認。報告書を公表することもなく「お蔵入り」させていた。
第1原発は今回、地震により外部電源を喪失。さらに津波で非常用ディーゼル発電機が水没するなどして、全交流電源を失い、炉心溶融や水素爆発につながった。
政府は6月に国際原子力機関(IAEA)に出した報告書で、津波などSBOの原因となる自然災害への考慮が不足していたことを認めている。
(中日新聞)
デタラメ委員長は、反省を表明しても、責任は取らない。
こんな原子力安全委員会を誰も信用できない。