4月にやや弱含みとなった中国の工業生産が、再び電力不足の危機に面している。その原因の一つに、雨が少ないことにより一部の工業都市が50年らい最も深刻な干害に見舞われていることが挙げられる。中国網日本語版(チャイナネット)が報じた。
中国国家電網公司営業部の蘇勝新主任は2011年通年で全国で最大4000万キロワットの電力が不足するとの見通しを発表した。今年に入り、中国の石炭価格は15%上昇している。
すでに中国の20以上の都市が電力使用を制限しているが、不足の緩和には至っていない。広東省や浙江省などでは、国家電網の計画停電により、一部の企業が自身の発電設備を再び使用しなければならない状態だ。これは企業経営者の負担を重くするだけでなく、労働コストの上昇と人民元の対ドル為替レートの上昇で苦境に立たされている企業の輸出をいっそう難しくすることになる。
石炭価格の上昇、政府による電気料金の統制により、コスト面の圧力に堪えきれなくなった中国の電力会社が次々に破たんしている。これは中国の電力供給不足に拍車をかけると同時に、企業の生産コストを高めている。
中国電力投資集団公司は近ごろ、石炭価格が上昇し続け、電力会社が値上げできなければ、中国の436カ所の火力発電所のうち5分の1が閉鎖の危機に直面すると警告した。石炭と電力の需給の矛盾のほか、中国の電力不足のもう一つの原因として、昨年のエネルギー多消費企業は省エネ・排出削減の基準に抑制されたが、今年の電力使用量は再び大幅増となることが挙げられる。
ローレンス・バークレー国立研究所の中国エネルギー研究室のデビッド・フリドリー氏は、「インフレが原因で、中国政府による石炭価格と電気料金の連動メカニズムの改善は困難な状態だ。中国の食品のインフレ率が2桁台になり、その他のインフレも高水準になったとき、電気料金引き上げは自然とコアインフレ率を高めるだろう」と話す。
「ニューヨーク・タイムズ」は、緊迫状態の電力供給は中国の工場の生産能力を低下させ、さらに中国経済の成長の勢いにも直接影響すると伝えた。今年4月の中国の工業付加価値額は前年同期比13.4%増で、3月の14.8%を下回った。
ここ5カ月の華中地区の深刻な干ばつにより、長江の水位は過去最低水準に迫っている。干ばつの影響は飲用水の供給から製造業、さらには中国の国民と経済に及んだ。長期にわたる雨不足とそれに伴う川の水位低下は、中国企業に以下のリスクをもたらしている。
水上輸送能力の喪失がサプライチェーンに影響する。長江の水位の低下により一部の航路が通れなくなる。これらの船舶は長江を通って年間10億トン以上の貨物を輸送しなければならない。
電力不足が生産を脅かす。水不足で、三峡ダムなどの水力発電所での発電ができなくなり、中国の水力発電量は20%減少し、一部の生産業者は電力使用を制限せざるを得なくなる。供給不足を補うには、週に100万トン超の石炭を燃やさなければならない。農産品の生産量と価格に影響する。干ばつにより、中国の農民は稲や綿花などの春に種まきする作物の種まきを延期せざるを得ない。綿花の生産量減少見通しは、国際大口商品市場の価格をすでに押し上げている。
(編集担当:米原裕子)