団塊太郎の徒然草

つれづれなるままに日ぐらし

普天間基地の無条件閉鎖

2010-05-08 23:46:54 | 日記

永田町異聞から転載


government of the people, by the people, for the people


「普天間無条件閉鎖」を説く米アジア研究の大家テーマ




何度も書いたが、いま一度はっきりさせておかねばならないのは、日米安保はすでに変質しているということだ。



小泉・ブッシュ蜜月時代の2005年に両国が合意した「日米同盟・未来のための変革再編」文書。これにより、国民の知らぬうちに、米軍の世界戦略に自衛隊が組み込まれた。



アジアの危機に備え、日本を守ってもらうかわりに基地を提供する。それが従来の日米安保だったのが、日米軍事協力の色濃い同盟に取って代わったのである。



その翌年に、辺野古崎に普天間代替基地を移設、グアムに海兵隊8千人とその家族9千人が移転するというロードマップが発表された。



イラン、イラク、アフガンをにらんだ米国の世界軍事戦略上、グアムのハブ基地化は再編の中核である。普天間代替基地はその意味で、付随的に獲得した米軍の既得権にすぎない。



筆者は4月20日の当ブログで、なによりも普天間飛行場からヘリ部隊をどこかの基地に仮移駐させ、すみやかに危険を除去すべきではないかと書いたが、米国の識者の中から日本のメディアに対して「普天間基地の無条件閉鎖」を提言する人物が現れた



元CIAの顧問、チャルマーズ・ジョンソン元カリフォルニア大学政治学教授。東アジア研究の大家だ。



ジャーナリスト・矢部武のインタビューに答えたこの記事の原文はダイヤモンドオンラインのサイト をご覧になっていただくとして、米国には多様な考え方があること、バランスのとれた思考をする識者が存在することを示す好例として、この注目すべき発言を下記にそのまま掲載した。



―鳩山政権は普天間問題で窮地に立たされているが、これまでの日米両政府の対応をどう見るか。



 まったく悲劇的だ。両政府は1995年の米兵少女暴行事件以来ずっと交渉を続けてきたが、いまだに解決していない。実を言えば、米国には普天間飛行場は必要なく、無条件で閉鎖すべきだ。在日米軍はすでに嘉手納、岩国、横須賀など広大な基地を多く持ち、これで十分である。



 そもそもこの問題は少女暴行事件の後、日本の橋本首相(当時)がクリントン大統領(当時)に「普天間基地をなんとかしてほしい」ということで始まった。この時、橋本首相は普天間飛行場の移設ではなく、無条件の基地閉鎖を求めるべきだったと思う。



―普天間を閉鎖し、代替施設もつくらないとすれば海兵隊ヘリ部隊の訓練はどうするのか。



 それは余った広大な敷地をもつ嘉手納基地でもできるし、あるいは米国内の施設で行うことも可能だ。少なくとも地元住民の強い反対を押し切ってまでして代替施設をつくる必要はない。このような傲慢さが世界で嫌われる原因になっていることを米国は認識すべきである。



 沖縄では少女暴行事件の後も米兵による犯罪が繰り返されているが、米国はこの問題に本気で取り組もうとしていない。日本の政府や国民はなぜそれを容認し、米国側に寛大な態度を取り続けているのか理解できない。おそらく日本にとってもそれが最も簡単な方法だと考えているからであろう。



―岡田外相は嘉手納統合案を提案したが、米国側は軍事運用上の問題を理由に拒否した。


 


米軍制服組のトップは当然そう答えるだろう。しかし、普天間基地が長い間存在している最大の理由は米軍の内輪の事情、つまり普天間の海兵隊航空団と嘉手納の空軍航空団の縄張り争いだ。すべては米国の膨大な防衛予算を正当化し、軍需産業に利益をもたらすためなのだ。



 米軍基地は世界中に存在するが、こういう状況を容認しているのは日本だけであろう。もし他国で、たとえばフランスなどで米国が同じことをしたら、暴動が起こるだろう。日本は常に受身的で日米間に波風を立てることを恐れ、基地問題でも積極的に発言しようとしない。民主党政権下で、米国に対して強く言えるようになることを期待する。



―海外の米軍基地は縮小されているのか。


 


残念ながら、その動きはない。米国は世界800カ所に軍事基地を持つが、こんなに必要ない。世界のパワーバランス(勢力均衡)を維持するためなら、せいぜい35~40の基地で十分だ。米国政府は巨額の財政赤字を抱え、世界中に不必要な軍事基地を維持する余裕はないはずだ。



―日本では中国や北朝鮮の脅威が高まっているが。



 日本にはすでに十分すぎる米軍基地があり、他国から攻撃を受ける恐れはない。もし中国が日本を攻撃すれば、それは中国にこれ以上ない悲劇的結果をもたらすだろう。中国に関するあらゆる情報を分析すれば、中国は自ら戦争を起こす意思はないことがわかる。中国の脅威などは存在しない。それは国防総省や軍関係者などが年間1兆ドル以上の安全保障関連予算を正当化するために作り出したプロパガンダである。過去60年間をみても、中国の脅威などは現実に存在しなかった。



 北朝鮮は攻撃の意思はあるかもしれないが、それは「自殺行為」になることもわかっていると思うので、懸念の必要はない。確かに北朝鮮の戦闘的で挑発的な行動がよく報道されるが、これはメディアが冷戦時代の古い発想から抜け出せずにうまく利用されている側面もある。



―米軍再編計画では普天間の辺野古移設と海兵隊のグアム移転がセットになっているが、辺野古に移設しない場合、グアム移転はどうなるのか?



 米国政府はグアム住民の生活や環境などへの影響を十分に調査せず、海兵隊の移転計画を発表した。そのため、グアムの住民はいま暴動を起こしかねないぐらい怒っている。グアムには8千人の海兵隊とその家族を受け入れる能力はなく、最初から実行可能な計画ではなかったのだ。



―それでは米国政府が「普天間を移設できなければ議会が海兵隊のグアム移転の予算を執行できない」と強く迫っていたのは何だったのか。



 自らの目的を遂げるために相手国に強く迫ったり、脅したりするのは米国の常套手段である。



―海兵隊をグアムに移転できない場合、米国政府はどうするか。



 おそらく米国内に移転することになろう。それでも海兵隊部隊の運用上、問題はないはずだ。



―日本では普天間問題で日米関係が悪化しているとして鳩山政権の支持率が急降下しているが。



 普天間問題で日米関係がぎくしゃくするのはまったく問題ではない。日本政府はどんどん主張して、米国政府をもっと困らせるべきだ。これまで日本は米国に対して何も言わず、従順すぎた。日本政府は米国の軍需産業のためではなく、沖縄の住民を守るために主張すべきなのだ。日本人が結束して主張すれば米国政府も飲まざるを得ない



―米軍基地の大半が沖縄に集中している状況をどう見るか。



 歴史的に沖縄住民は本土の人々からずっと差別され、今も続いている。それは、米軍基地の負担を沖縄に押しつけて済まそうとする日本の政府や国民の態度と無関係ではないのではないか。同じ日本人である沖縄住民が米軍からひどい扱いを受けているのに他の日本人はなぜ立ち上がろうとしないのか、私には理解できない。もし日本国民が結束して米国側に強く主張すれば、米国政府はそれを飲まざるを得ないだろう。



―今年は日米安保50周年だが。


 


日本にはすでに世界最大の米海軍基地(横須賀)があり、各地に空軍基地も存在する。これ以上の基地は必要ない。東アジアのどの国も日本を攻撃しようなどとは考えないだろう。日本政府は巨額の「思いやり予算」を負担している。自国の外交・防衛費をすべて負担できない米国のために、日本が同情して払っているのだ。 



―普天間問題を解決できなければ両政府がどんなに同盟の深化を強調してもあまり意味がない、との指摘もあるが。



 それは米国が軍事力優先の外交を展開しようとしているからである。一般の米国人は日本を守るために米国がどんな軍事力を持つべきかなどほとんど関心がないし、そもそも米国がなぜ日本を守らなければならないのか疑問に思っている。世界で2番目に豊かな国がなぜこれほど米国に頼らなければならないのか理解できない。それは日本人があまりに米国に従順で、イージーゴーイング(困難を避けて安易な方法を取る)だからではないか。



絵に描いた架空の取引に日本の国家予算が消えてゆく?

2010-05-08 18:02:18 | 日記

日本政府支払いの排出枠代金、ウクライナで行方不明に



2010/4/30 23:11 日経

<FORM class="JSID_basePageMove JSID_baseAsyncSubmit cmn-form_area JSID_optForm_utoken" onsubmit="return false;" action=/async/usync.do/sv=NX method=post> 京都議定書に基づく温暖化ガスの排出削減目標を達成するため、日本政府がウクライナ政府から取得した排出枠の代金約200億円が、同国で行方不明になったことがわかった。代金は温暖化対策に使う契約になっていたが、ウクライナの前政権が流用した可能性もあるという。</FORM>

 日本政府がウクライナ政府からから、合計3000万トンの排出枠を購入する契約を結んだ。昨年5月に半分の1500万トンを受け取り、200億円の代金を支払った。日本政府約1億トンの排出枠を取得する計画で、1500万トンはその15%にあたる。



 代金の使途は環境投資に限る契約だった。だが4月中旬に200億円が指定の口座にないことが発覚し、日本が抗議したという。2月に発足したヤヌコビッチ政権は、ユーシェンコ前政権が大統領選対策として流用した可能性があると説明。「資金を必ず捻出(ねんしゅつ)し、国家予算に計上する」と補てんの意向を表明した。



 残りの1500万トンは6月までに移転し、日本が代金を支払う予定


排出権取引の疑問、辞めた方がよいのでは?

2010-05-08 17:49:21 | 日記

空気がお金に化ける? 排出権取引は悪なのか


温暖化防止に効果はあるものの制度には欠陥も



 排出権取引(排出量取引とも呼ばれる)に対して「現代の免罪符」、「悪をお金で買う」、「欧米金融機関のマネーゲーム」といった反応をする人々が多い。こうした反応の多くは排出権の仕組みに対する先入感や誤解から来ている。また「排出権に頼らず自国の温室効果ガス削減努力をすべき」という主張はもっともだが、排出権取引を全面的に排除するというのであれば疑問符が付く。



排出権取引の現場は苦労話のオンパレード



 そもそも排出権はどこから生じているのか? 


 その多くは、発展途上国における様々な温室効果ガス削減事業によって産み出されている。例を挙げると、中国における風力発電事業、マレーシアにおけるパーム椰子房を利用した発電事業、インドのアンモニア製造プラント改良による蒸気消費量削減事業、ブラジルのゴミ処分場のメタンガス回収・発電事業、韓国の硝酸工場のN2O(亜酸化窒素)破壊事業、ベトナムの油田の随伴ガス回収事業といったプロジェクトだ。これらが国連によって承認され、削減量に応じた排出権が発行され、国連と各国が運営する電子登録簿の中で保管・売買されている。


 案件実施には様々な苦労が伴う。マレーシアで豚の糞尿からメタンガスを回収し発電する事業をやるため、養豚村の長老と一緒に、農家に豚の糞尿を定期的に提供してくれるよう説得して歩くが、糞尿から生じる排出権が金になると分かると急に金を寄越せと言われるとか、中国の山奥に車で10時間も走って行き、雪どけ水が流れる水力発電所の建設現場で苦心惨憺して資機材を運搬して事業を立ち上げるとか、合意したはずの事柄を何度も蒸し返してくる中国人との議論に疲労困憊して商社の女性社員が倒れ病院で点滴を受けたとか、二酸化炭素の地中貯留の方法論を提案したが、排出権価格下落による自国の収入減を嫌う国連CDM理事会のブラジル人理事に強硬に反対されて進まないといったエピソードのオンパレードである。この辺の事情は、今般上梓した『排出権商人』(講談社刊)に詳しく書いた。


 京都議定書は、先進締約国(41の国と地域)に対して温室効果ガス削減目標を負わせる一方で、海外から排出権を購入して補ってもよいという柔軟措置を設けた。これが「京都メカニズム」と呼ばれるもので、(1) CDM(Clean Development Mechanism=クリーン開発メカニズム)、(2) JI(Joint Implementation=共同実施)、(3) 排出権取引の3つである。


 CDMとJIは、外国で温室効果ガス削減事業を行い、プロジェクトが存在しない場合(これを「ベースライン」と呼ぶ)に比べて、温室効果ガスの排出量が削減されたと認められると、国連によって排出権が与えられる仕組みである。CDMは京都議定書で削減義務を負っていない国(発展途上国)で行われる事業、JIは削減義務を負っている国(先進国)で行われる事業である。


 3番目の排出権取引は、CDMやJIによって産み出された排出権や自国の排出枠に余裕のある国の余剰排出権(排出枠)を売買することである。


 日本企業(電力会社や鉄鋼会社)が購入している排出権の多くはCDMによって産み出されたものだ。プロジェクトの数や排出削減量で見るとCDMはJIの15~20倍ある。


これまで国連に登録(承認)されたCDMプロジェクトは全部で1894あり、産み出される排出権(Certified Emission Reduction=認証排出削減量、略称CER)は、年間3億2367万トン(CO2換算)である。これは日本の年間排出量の1/4程度に相当する。


 CDMは京都議定書の締約国会議の下にあるCDM理事会(事務局はドイツのボンにある)が定めた厳格な「方法論」に則って実施しなくてはならない。方法論は、温室効果ガス削減事業をどのように実施し、削減された排出量をどのように計測するかの理論と手法のことで、事業のタイプごとに現在約110が定められている。


 先に述べた中国の風力発電、マレーシアのパーム椰子房からの発電、インドのアンモニア製造プラント改良による蒸気消費量削減などはすべてCDMである。こうした事業が地球温暖化防止に役立っているかといえば、答えは間違いなくイエスだ。火力発電で二酸化炭素を出しっぱなしだったのが風力発電に代替され、操業上も危険な炭鉱内のメタンガスが回収されて発電に使われ、排出権売却益がなければ採算上実施できない(これを事業の「追加性」と呼び、CDMの重要要件の一つ)水力発電事業が立ち上がって山奥に電気が通ったりすれば、地元の住民にとっても大きなメリットがある。そもそも京都議定書の第12条第2項に、「CDMは、附属書I国(排出削減義務を負っている先進国・地域)の温室効果ガス削減義務に寄与すると同時に、非附属書I国(発展途上国)の持続的成長に寄与しなければならない」と規定されている。



まだ欠陥の多いCDM制度



 一方でCDMは、できて間もない制度(最初のCDMが国連に登録<承認>されたのは2004年)なので、まだ欠陥も多く、今後の制度の整備が望まれるのが実態だ。


 改善されるべき主な点を上げると以下の通りである。


1.国連への申請手続き、特に方法論が複雑で、承認までに時間と労力がかかる。


 CDMを国連(CDM理事会)に申請するためにはPDD(Project Design Document=プロジェクト設計書、英文で50~70ページ)を作成し、DOE(Designated Operational Entity=指定運営組織)として国連に認められた機関の有効化審査を受けなくてはならない。


 またCER(排出権)の発行を申請するとき(通常は操業開始1年後)は、DOEが排出削減量について検証と認証を行い、報告書と発行申請書を国連CDM理事会に提出し、審査を受けなくてはならない。


 これらの中で最も煩雑なのが方法論である。UNFCCC(気候変動に関する国際連合枠組条約)の国連官僚がこれでもかというほど細かく規定し複雑な数式も含み、しかも頻繁に改訂されている。


 たとえば、豚の糞を有機肥料の製造に利用している養豚場からメタンガスを回収する事業のベースラインの算定方法の場合、(1) 汚水浄化槽の大きさや仔豚・保育豚・肥育豚・母豚などの飼育日数や重量をもとに発生するメタンガスの量を算定し、(2) 糞の肥料化の過程におけるN2O(亜酸化窒素)の排出量を定められた数式で求め、(3) 事業全体で消費する電力や熱を産み出すための二酸化炭素発生量を算定し、(4) これらを合算して二酸化炭素量に換算して、ベースライン排出量とする。


2.有効化審査や排出削減量の検証・認証が、欧州系の3つのDOE(指定運営組織)によってほぼ独占されている。


 DOEの資格を得るためには、国連CDM理事会の下部組織であるDOE認定パネルの審査を受け、最終的にCOP(気候変動枠組条約締約国会議)に任命される必要がある。DOEは有効化審査料として通常500万円程度、排出削減量の検証・認証料として1回100万円から200万円の報酬を受け取る(ほとんどのプロジェクトは排出権を年1回発行してもらうので、そのつどDOEに報酬を支払わなくてはならない)。


 現在26のDOEがあり、日本の組織としては財団法人日本品質保証機構や社団法人日本プラント協会などがあるが、案件が欧州系の3つのDOEにほぼ集中している。すなわち、DNV(ノルウェー系)、TUV-SUD(ドイツ系)、SGS(スイス系)の3社が、全登録案件の約85%を手がけているのである。これは2001年から2003年にかけてCDMの制度が作られた時、様々なアイデアを提供したのがこれら3社だったからだ。要は、日本政府や日本企業が払う金が、これら欧州系3社の懐に流れ込むようになっているのである。また3社に仕事が集中しすぎ、方法論が複雑化していることもあり、審査能力が付いて行かなくなって有効化審査の質が低下し、DOEの資格を一時停止されるケースまで出てきている(昨年DNVが一時資格停止され、現在は、SGSの英国法人が一時停止されている)。



排出権ビジネスを外貨獲得手段と捉える中国



3.CDMは新しい制度で、CDM理事会も「learning by doing」の状態であるため、上記以外にも様々な欠陥がある。


 いくつか例を挙げると、(1) 代替フロンの製造過程で出てくるHFC23(京都議定書で定められた温室効果ガスの1つ)破壊事業が儲かるので、主製品の代替フロンが売れないのにどんどん作り、HFC23破壊をどんどんやって排出権を売って儲けるという本末転倒が起きた、(2) 本来、採算性や追加性の観点からCDMとして認められない事業を、あの手この手で誤魔化して(たとえば高価な外国の機器を購入することにして採算性を抑え、実際は途上国製の安い機器を使う等)、国連の審査を通す、(3) いったん事業が審査を通ってしまうと、あとは排出削減量の検証・認証しか行われない制度のため、採算性や追加性の検証が事後的に行われない、といった問題点がある。これらの多くは、CDM理事会も認識しており、すでに改善策が実施されたものも少なくない。


4.CDM事業の35%は中国、25%はインドで行われており、排出削減義務を負っていないこの両国が6割を占める。


 年間の排出権創出量で見ると、中国が59%と圧倒的に多く、以下、インド(11%)、ブラジル(6%)と続く。中国は排出権ビジネスを外貨獲得手段として捉え、国務院直属の国家発展改革委員会の中にCDM審査理事会を設け、各プロジェクトの事前審査を入念に行っている。また、北京の精華大学にCDM研究発展センターを設置し、CDMの研究や案件発掘を推進している。


 中国では法律によって産み出された排出権はすべて中国側に帰属することになっているので、仮に排出権1トンあたり2000円とすれば、年間3800億円程度が中国に転がり込んでいることになる。中国人は排出権のことを「空気がお金に化ける」とか「空から月餅が降ってくる」と言っているそうだが、排出量削減義務を負わず、外国の資金・ノウハウ・技術を利用して年間3800億円も儲け、温暖化対策や省エネの技術も手に入れている。片や日本は京都議定書の第1約束期間(2008~2012年)に8000億円から1兆円を払って排出権を購入しなくてはならない。


 「排出権に頼らず自国の温室効果ガス削減努力をするべき」という議論は一理ある。自国で削減目標が達成できず、毎年排出権を購入しなくてはならない状態では、自転車操業になるからだ。排出権の価格変動リスクにもさらされ、需要が供給を上回ると、排出権を購入できなくなる事態もあり得る。



「ホットエアー」という頭の痛い問題も



 経済活動の低迷などで温室効果ガス排出量が大幅に減少し、相当の余裕をもって削減目標が達成できることが見込まれる国の余剰分を「ホットエアー」と呼ぶが、これを売買する排出権取引には大いに首をかしげざるを得ない。旧ソ連が1991年に崩壊する前後から、ロシア、ウクライナ、東欧諸国では経済が大幅に停滞し、排出量が大幅に減っていた。一方で京都議定書における彼らの削減目標(1990年比)は、EU加盟予定だった東欧諸国は-8%だが、ロシアとウクライナは±0%である。目標設定自体が不公平で、これらの国々では、まさに「空気がお金に化け」ている。


 第1約束期間の5年間にロシアは実に55億トン、ウクライナは24億トンの「ホットエアー」を獲得する見込みである。すでに日本政府はウクライナやチェコから買い付ける契約をし、オランダやスペインなども購入している。


 本来、国の余剰枠の売却を認めるのは、努力して排出量を削減すれば金になるというインセンティブを働かせるためで、「ホットエアー」はこの趣旨に反する。EUなども頭を痛めており、来るCOP15(国連気候変動枠組み条約締約国会議)の場で、できれば認めない方向で議論を進めたいのが本音だが、ロシアなどが強く抵抗するのは間違いない。


 日本でも民主党政権が排出権取引(キャップ・アンド・トレード)制度を導入するとしているが、「ホットエアー」的なものを生じさせない制度設計が必要である。


 最後に、欧米の金融機関が排出権取引を金儲けのネタにしているかどうかであるが、ほとんどできていないのが実情だ。世界銀行の推計では、EU-ETS(欧州連合排出権取引制度)を含めた世界の排出権市場の規模は2008年時点で1263億ドル(約11兆円)で、それぞれ数千兆円の規模を持つ世界の株式市場や債券市場に比べれば微々たる存在にすぎない。また2013年以降の地球温暖化防止の各組みがどうなるか分からないので、取引も低調である。また、CDM事業から産み出される排出権は、いわばテーク&ホールドの需要家に直接販売され、流通市場にあまり出てこないという事情もある。


 とはいえ規模が精々10兆円~15兆円のWTI先物が牽引車となって世界の資源価格が高騰したこともあるので、油断はできない。最近、JPモルガンが英国の排出権ビジネス専門のブティック型投資銀行エコセキュリティーズの買収を決めたりもしている。要は、制度設計をしっかりやることだ。


  • 黒木 亮 【プロフィール

  • これでいいのか日本。

    2010-05-08 17:35:49 | 日記

    鳩山首相の思いつきだけの発言に振り回された日本。


    コペンハーゲンでの気候変動枠組み条約締結国会議(COP15)で
    鳩山首相が打ち出した「2020年までの温室効果ガス排出量を1990年比で25%減」


     普天間から米軍基地を国外へ移設、最低でも県外へ。


    どうせ言うなら、

    「アメリカの戦後占領延長の安保条約を解消する。

    米軍基地を返して欲しい。


    日本は自衛隊で守る」、と


     


    民主党に期待したが、


    鳩山、小沢よ、もう、辞めてくれ。


    心ある政治家達よ


    日本国を救済するために


    民主党、自民党を解体して


    みんなの党も合流して


    結党して欲しい。 


    少子高齢化がもたらす危機

    2010-05-08 15:44:13 | 日記

    【静かな有事】第4部 少子化を止めろ(5)危機感が世論を生み出す


     少子高齢化がもたらす危機に対して日本人はあまりに鈍感だ。伸び続ける社会保障費、減る労働力人口。日本社会はすでに崩壊の道を歩み始めている。


     「こどもの日」に合わせて総務省が発表した子供の推計人口は、比較可能な昭和25年以降で最低の1694万人。29年連続で減少した。なぜ、こんな低水準に陥るまで“放置”され続けてきたのだろうか。


     この危機は、戦争や自然災害のようにはっきりした形で見えるわけではない。自分にどう関係するのかイメージしづらい。「危機」であるとの認識がなかなか広がらない。


     言うまでもなく、妊娠や出産は極めてプライベートな問題である。強制されたり、国家や社会を支えるために産むわけではない。だが、それは同時に、少子化の危機を口にすることをはばからせる雰囲気をも醸し出してきた。


     子供が生まれてこなければ国家は滅ぶ。三菱総合研究所の小宮山宏理事長は「子供をつくらないというのは嫌な社会だ。子供を産みたくなる社会でなくてどうするのかということだ」と問いかける。


     「日本は『少子化は国家の危機』という認識がまだまだ深いところで共有されていない。少子化をターニングポイントにしてきた国の歴史を振り返ると、日本は議論が足りない」。北海道大の宮本太郎教授は、こう警鐘を鳴らす。


     多くの国民が危機感を共有するには、どうすればよいのだろうか。慶応大の駒村康平教授は、危機の「見える化」に解決策を見いだす。「少子化が自分たちに何をもたらすかを高齢者らは知らない。年金は下がり、介護保険料などは上がっていく。全部子供の数と連動して決まる。政治家はオブラートにつつんだ説明をするのではなく、『子供数連動年金だ』と言ったほうが分かりやすい」


     第一生命経済研究所の松田茂樹主任研究員は「国は、このままの出生率が続けばどんな社会になるのかシナリオを作る。年金や経済成長は相当破壊されるはずだが、はっきりと書くべきだ」と注文を付ける。人口が長期に安定する「出生率2・07」を国の目標とすべきだとも主張する。


                       ◇


     世論が形成されにくいことも危機への対応を遅らせる。同じ「子育て」でも、乳幼児を抱える親と小学生や中学生がいる家庭とでは悩みは違う。子供が成長するにつれて“当事者”は替わる。子育てを終えれば関心は急速に薄れる。


     増田雅暢・元上智大教授は「子供が生まれるころは母子保健。その後は子ども手当や教育費、就労支援に関心が移る。ニーズの山がいくつも並び突出するものがない」と説明する。


     圧力団体や利益団体ができず、声高に訴える政治家が生まれにくい。子供を産もうと思える環境づくりが遅れてきた一因がこうしたところにある。


     拡散しがちな世論をまとめるヒントになりそうなのが、大阪府貝塚市の「貝塚子育てネットワークの会」の取り組みだ。「乳幼児」「幼稚園」「小学生」「中高生」の4部会を持ち、年齢別の子供向けの活動とは別に、親同士は世代を超えて交流し、子育ての悩みの解決策を探る。


     親子ほど年齢の離れた先輩ママが、豊富な経験をもとに助言することもある。代表の朝日陽子さん(44)は「『みんなで学び合う』という社会教育の視点を入れた。この会があったから安心して2人目、3人目を産めたという人は多い」と語る。


                       ◇


     少子化の危機を認識する上で、もう一つポイントとなるのが「家族」の在り方の変化だ。増田氏は「社会の一番小さな単位の家族がしっかりしていないと、社会そのものが安定、発展しない」と懸念する。


     「個人主義の流れが過度に進み、個々がばらばらになる感じだ。『家族が協力するのは当たり前』との考え方が薄れ、『結婚してもしなくても、子供がいてもいなくても何とかなる』との考えが強くなった。それが、結果的に少子化の要因になっている」


     増田氏は、少子化問題の解決には、家族政策として広がりを持たせることが重要だと考える。「家族政策の中に子ども手当も、教育費の負担軽減も、単身家庭の支援もあるというようにする。現在の狭い意味の出生促進策が幅広くなり、国民全体で協力していこうとの意識が強くなる」


     一方、宮本氏は「どこの国でも少子化に対する危機感が保守、リベラルの枠を超えて制度形成を促した。そこをきちんとした国は現状でも少子化への対応ができている」と語る。


     子供を産むことができる女性数は急速に減少する。少子化は「静かな有事」だ。存亡をかけたこの戦いに、われわれは負けるわけにはいかない。=おわり


                       ◇


     第4部は、河合雅司、牛田久美、桑原雄尚が担当しました。