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「アメリカを売った男」

2008-03-25 02:59:43 | 映画・DVD【あ】


対ソ情報関係の優れた分析家であり研究家だったロバート・ハンセン。
彼はFBI捜査官でありながら、20年の長きに渡り、FBIやCIAの国家の安全保障に関わる重要な機密をソ連、ロシアに流し続けていた。
彼のせいで、KGB内部でアメリカのために情報活動にあたっていたスパイも相次いで逮捕され処刑されたという。
その数は現在わかっているだけでも50人をくだらない。
一体何が彼を二重スパイという暗黒の道に追いやってしまったのか。

この映画は実話に基づいて、ロバート・ハンセンが逮捕されるまでの二ヶ月間を描いている。



地味ながらもなかなか見ごたえのある映画だった。
狡猾で人を信用しないハンセンを監視し、彼の逮捕に大きく貢献したFBI訓練捜査官オニール役にライアン・フィリップ。
そしてウェブスター元FBI長官に「500年に一度の大洪水」と言わしめた、国家に対する裏切り行為を行ってきたロバート・ハンセンにはクリス・クーパー。
ロバート・ハンセンを監視するようにオニールに命ずる、仕事一筋の上司役にローラ・リニー。
この三人はまさしく適材適所といった感じで、この映画を見てしまった後では彼ら以外の配役は考えられないほど。

特にクリス・クーパーは、ロバート・ハンセンを単なる二重スパイとしてではなく、心に本人にも説明できない何かを内包した、哀れな男をうまく演じている。
ライアン・フィリップも、国を欺き続けたハンセンを欺かねばならないという複雑なポジションにいた、悩める青年オニールを好演している。
ライアン・フィリップは、決して派手ではないけれど、これからますます活躍していきそうな予感がするなあ。



ロバート・ハンセンは64歳になる今も服役中だというが、スパイになった動機は未だにわかっていない・・・というか公表されていない。
能力のある自分に対するFBIの待遇が悪かったからだとか、父親の虐待に近い厳しい躾のせいだとか色々言われているが、あらゆる要因が複合した結果であって、本人にも説明できない複雑なものなのだろう。

ジェイソン・ボーンシリーズなどを見ても思ったけれど、つくづくアメリカという国は大きくなりすぎてしまったのではないかと思う。
そして自分たちの国は一番だというおごりが、世界中にクモの巣のような網をはりめぐらせる。
だがどんなに丈夫なクモの網でも必ず何処かにほころびはできるものなのだ。

ロバート・ハンセンが逮捕され、オニールも自身の仕事に疑問を持ちFBIを辞するのだが、最後にエレベーターでこの二人が鉢合わせになる場面がある。
その時のクリス・クーパーの・・・というよりロバート・ハンセンの闇のような真っ黒な瞳・・・。
彼の心を映し出したようなその瞳がひときわ印象に残ったラストであった。
コメント (18)
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