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とてつもなくミーハー。夢見るのはお気楽生活

「殺人の追憶」

2007-08-10 23:22:31 | 映画・DVD【さ】


二つのジャケットがあまりにも違うので、両方のっけてみました(^^)。


監督:ポン・ジュノ

脚本:ポン・ジュノ、シム・ソンボ

出演:ソン・ガンホ(パク・トゥマン)
   キム・サンギョン(ソ・テユン)
   キム・レハ(チョ・ヨング)
   ピョン・ヒボン(捜査課長)
   ソン・ジェホ(新捜査課長)
   パク・ノシク(ペク・クァンホ)
   パク・ヘイル(パク・ヒョンギュ)
   カク・ソリョン(チョン・ミソン)

この映画は1986年から1991年の間、軍事政権のもと民主化運動に揺れる韓国において、実際におきた「ファソン華城連続殺人事件」をもとにしたフィクションである。

稲穂が揺れるのどかな農村地帯で殺人事件がおき、パク刑事が現場に向かうが犯人のものと思われる遺留品は何も残っていなかった。
唯一犯人のものと思われる靴跡も、地元のトラクターによって潰されてしまう。

死体は稲を刈り取った田んぼ(?)にゴロンと投げ出され、野次馬は群がり、子供たちはそこここを走り回る・・・。
容疑者を取り調べるのに時には暴力を振るい、無理矢理に供述させようとし、証拠となる靴跡を偽造する。

一見、ひどいことをしているように見えるが(いや、実際ひどいことをしているのだが)陰湿な感じはなく、むしろあっけらかんとしていてユーモアさえ感じさせる前半部分に、昔の日本もこんなだったのだろうかというような、妙な懐かしさと言うか、同じアジアに住まうものとして激しい親近感を覚えてしまった(笑)。

だが中盤から後半にかけては、当時の韓国の闇の部分を感じさせる。
犯人の手がかりとなるものが全くつかめず、犠牲者ばかりが増えていき、刑事たちはじわじわと心理的に追いつめられていく。
面白いのは初めは、容疑者に暴力を振るい、靴跡まで偽造していたパク刑事が次第に、まともな刑事らしくなっていくことだ。
それとは逆に、資料を重視して事件を分析していたソ刑事が、徐々に冷静さを失っていき、ラストでは思いもかけないような行動に出る。



実際に韓国で起こった「ファソン華城連続殺人事件」は、ソウルから約50キロ離れた農村の半径2キロ以内で起きた10件の連続強姦殺人事件だ。71才の老女から13才の女子中学生まで、不特定多数の女性が犠牲になったらしい。
その捜査には180万人の警官が動員され、3000人の容疑者が取り調べを受けたというが、映画を見る限り、意外とずさんな捜査だったのではないかと思われる。
迷宮入りしたこの事件は、映画でも犯人がわからぬまま終わるが、犯人がわからない虚しさや苛立ちよりも、犯人が今もなお何処かで普通に生活をしている、一見普通の人間だということに空恐ろしさを感じさせる。

連続強姦殺人事件をモチーフにしているけれど、描きたかったのは、やはり人間であろう。
やたらに人間臭い、骨太なドラマである。
そして、完璧な脚本と共に役者の素晴らしさに思わず唸ってしまう作品だ。


韓国にはなんて素晴らしい俳優がいるんだろう!と思わせてくれるソン・ガンホ。
おおげさなようで実は自然な、人間味溢れる演技を見せてくれる。
この表情からでも彼の実力がうかがい知れるはず。


キム・サンギョンも初めは冷静に事件を見つめていたが、徐々に変貌をとげていくソ刑事を好演。

キム・サンギョンを見ていたら、何故だかこの人を思い出した。

 上川隆也。

日本でリメイクするとしたら、上川隆也がこの役でも面白いのではないかなあ。
で、ちょっとオツムの弱い容疑者役のペク・グァンホを香川照之がやっても面白いかも・・・なんて想像してしまったのだった。
コメント (14)
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