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マチ弁が暇なときに,情報提供等行います。(兵庫県川西市の弁護士井上伸のブログです。)

消費者被害事件における弁護士と非弁屋,非弁屋による「断定的判断の提供」

2011年03月17日 | ⑤法律問題について
タイトルだけみると,少し意味がわかりにくいと思います。

非弁屋と書きましたが,非弁行為をしている人のことを指しています。
非弁行為とは,弁護士でないのに,弁護士と同じような業務を行っている人のことです。交通事故ではよく「示談屋」と言われています。
非弁行為は,弁護士法72条により禁止され,犯罪でもあります(同法77条3号)。

隣接士業,例えば,司法書士や行政書士などでも,法律上許された範囲を超えて,職務を行っている場合には非弁行為に当たります。
例えば,司法書士は,得られる経済的利益が140万円を超える事件の場合は,訴訟代理権もなく(ただし,訴訟代理権は簡易裁判所代理権の認定を受けた者だけです。),示談交渉もする権限もありません。
ただ,140万円を超えて裁判所等に提出する書類等の書面作成をしたり,その前提としての相談を受けることはできます。
これらを超えて,事件の受任をすることは,非弁行為にあたるのです。
(つまり,司法書士は,経済的利益(消費者被害なら損害)が140万円超える事件については,書面作成はできるけど,代わりに交渉することはできません。)

私がよくやっている消費者被害の世界も,非弁屋が跋扈しています。

よく見かけるのが,探偵業者,消費者団体,被害者団体を名乗るところです。
探偵業は,調査とその報告が仕事であり(探偵業の業務の適正化に関する法律2条),法的紛争の解決までは仕事ではありません。テレビを見ていると,解決までやったりしています。
しかし,調査の結果,たまたま民事的な紛争が解決することがあっても,それは仕事の結果ではないはです。
つまり,解決を前提として着手金(交渉の対価)を取ったり,成功報酬(解決の対価)を取ると,「非弁行為」になるわけです。
消費者団体や被害者団体は,解決を目的とするものがあってもいいですが,交渉の手数料の対価,解決に対する対価お金を取っては「非弁行為」になるでしょう。

断定的判断の提供とは,確実ではないことについて確実だいうことです。
よくあるのが,相場について「確実に上がる」とか「絶対もうかる」ということです。
「絶対」とか「確実」とまで言わなくても,文脈上そう取れる発言も含まれるし,金融商品被害等では誤解を招くような表現も規制の対象となっています。
例えば,「任せてください」「大丈夫です」などです。

法的紛争も同様で,ほとんどの事例では,「100%勝つ」とは言い切れません。訴訟は水ものの部分があるんです。
仮に勝っても,回収可能性について問題がある場合が多く,「100%取り返せる」とは限りません。

弁護士は,弁護士職務基本規程29条において,第2項「 弁護士は,事件について,依頼者に有利な結果となることを請け合い,又は保証してはならない。」,第3項「弁護士は,依頼者の期待する結果が得られる見込みがないにもかかわらず,その見込みがあるように装って事件を受任してはならない。」として,断定的判断の提供が禁止されています。

受任に関し,このようなことを言うと,ほぼ確実に負ける事件なのに勝てると勘違いして,高い着手金を払ったり,ほぼ確実負けるとは言えない事件でも,正直,相場より高い着手金や報酬を払う人は多いのではないかと思います。

良識ある弁護士の多くは,このような断定的判断の提供はしません。
このようなことを言って,万が一,自分に負けたりすると,仮に自分に負けたことに過失がなくても,新たな消費者問題が生じるわけです。
消費者弁護士としては,騙されたかわいそうな人に対し「任せて下さい」「大丈夫」と言って安心させてあげたいと思うのですが,この人たちは,藁をもすがる気持ちで来られているので,弁護士の言ったことを過大評価して。本当に大丈夫なんだ,絶対に取り返してくれるんだと,強く思いこみがちなのです。

これに対し,非弁屋の多くは,平気で「絶対取り戻してあげる」「大丈夫」「安心して任せて下さい」などと言います。
こういうことは言った言わないになりやすく,ごまかしやすいのかもしれません。

しかし,よく考えてみて下さい。
身分が保障されていない人たちの言質などはほとんど当てにはなりません。
言質自体の価値が低いはずです。

でも,リスクばかり説明して「絶対勝つ」とはっきり言わない弁護士より,ほとんど何も説明しないのに,「絶対勝つ」などの甘い言葉をいう「非弁屋」の方が素人の被害者から見ると魅力的のようです。

この前,詳しい話はできませんが,依頼者を非弁屋に見事に取られてしまいました。
「期限を切っていついつまで取り返せます。」「弁護士さんには私から連絡しておきます」だって。連絡など1回もないっちゅうねん!!
しかし,その人はそんな嘘つきを信じています・・・
着手金は私の倍以上取られているようです・・・皮肉な話です・・・

この方ではないですが,探偵業の「非弁屋」が解決を前提として弁護士以上の着手金を取っていた事件をやったことがあります。
その非弁屋は,「絶対取り返せる」など言っていたようです。
にもかかわらず,これ以上は無理ですと言って,わざわざ東京の現地まで依頼者を連れていき,解決が無理だとわからせようとしたらしく,それで不信に思い,私のところに相談に来ることになりました。
その非弁屋の社長と担当者が事務所に来て話をしましたが,着手金は全額返還させました。

非弁屋に会って,消費者被害の二次被害に遭わないよう気をつけましょう。
ポイントは,
①弁護士・司法書士でもないのに,交渉と解決の対価のお金を取ること
②「絶対取り返します」などの断定的判断の提供を安易に行うこと

です。
こういう場合には,疑ってかかった方がいいと思います。


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