弁護士NOBIのぶろぐ

マチ弁が暇なときに,情報提供等行います。(兵庫県川西市の弁護士井上伸のブログです。)

平成18年度旧司法試験論文試験の問題の感想

2006年07月21日 | ①司法試験について
今週の頭7月16日日曜日,17日月曜日に旧司法試験二次試験の論文式試験(いわゆる「論文試験」)がありました。
受験された方お疲れ様でした。

問題については法務省のHPに公表されています。
法務省HP平成18年度旧司法試験試験論文試験問題*

以下,私が初見で感じた各問題の感想を書きます。
とりあえずの感想・意見なので間違っているところは多いと思います。
あまり気にしないようにして下さい。
また,明らかな間違い等に気付いたら密かに訂正しようと思います。

【憲法第1問】
営利的言論の制限の可否。広告放送を1時間ごとに5分以内に制限することによって得られる多様で質の高い放送番組への視聴者のアクセスと利益の程度と,制限されることにより失われるテレビ局の経済的利益とスポンサーの営利的表現の自由との,利益衡量がとても難しい。

【憲法第2問】
地方政治における拘束力ある住民投票の可否を,国政における拘束力ある国民投票の場合と比べつつ論じるという典型問題です。
あくまで住民投票の可否を聞いているので,答え方注意です。
国民投票はこうやけど住民投票はこうと淡々と書くのが無難だけど,うまく両者の本質を突きつつ,住民投票の可否についてうまく論じると跳ねる感じでしょうか。
言うはやすく行うは難し。私では最低限守ることしかできないか。

【民法第1問】
小問1(1)詐欺取消後の第三者の保護と即時取得による第三者保護の比較
 (2)追奪担保責任(Cが背信的悪意のときはどうするのかもいるのかな?)。
小問2 詐欺取消前の第三者の保護と即時取得による第三者保護の比較
 典型論点なので,書き負けないよう注意。
※以前ここで法律構成と学説を勘違いして書いてましたので訂正しました。

【民法第2問】
小問1 原則Aは保護されないが,例外的にAが94条2項類推適用などによって保護されないかなど。
 Aの主観的事情によって場合分けして,悪意又は有過失で保護されないときはCは,Aにさらに何かCに主張できないか。
 まず,Bの不法行為に基づく損害賠償請求権を被担保債権として留置権の主張ができるかを論じ,それができないとして,さらに場合分けして,善意有過失の場合は,善意占有者として必要費・有益費償還請求と留置権,悪意の場合は,有益費償還請求と留置権について述べるのかな。
小問2(1) 他人物賃貸借における所有者が追認拒絶をした後に,他人物賃貸人が所有者を単独相続した場合における賃借人は信義則上追認拒絶を否定できないか。117条の無権代理人の責任の類推適用で履行請求できないか(94条2項類推は書いちゃダメ)。
小問2(2) Bに対する不法行為責任,債務不履行責任,他人物賃貸借についての担保責任(559条,561条)の追求。それらの請求権を被担保債権とした留置権主張の可否。敷金返還請求と留置権の主張。賃貸人が有責な場合でも敷金返還請求は明渡しと先履行関係に立つのか。その他。

【商法第1問】
旧法の知識でいける感じでしょうか。新会社法まだ勉強してないので自信はないけど,おそらく旧法の通常の株式会社と同じ処理になるのではないでしょうか。それで淡々と書いて行くという感じでしょうか。
小問1
・Aに対しては,362条4項違反,善管注意義務・忠実義務違反等を理由に株主代表訴訟により会社に対する損害賠償責任追及(423条),第三者に対する損害賠償責任(429条)と不法行為に基づく損害賠償責任の直接追求。
・B,Cに対しては,取締役の取締役監督任務の懈怠があったか。株主に対する報告義務(357条。358条の株主検査役選任権行使,360条の株主の取締役の行為差止権行使等の株主の取締役監督権行使の機会提供義務を前提として)等の不行使の善管注意義務・忠実義務違反があったか。あったとしたら,Aと同じ責任追及。ただ,B・CはAの従業員で弱い立場だったら事実上断れないときもありますよね。保証を断れなかった場合近いものあるが,実質無限責任を負わされるので少し配慮できないでしょうかね。まあここまで論ずる必要はないかも。
・Eに対しては,Eに監査役の監査職務懈怠責任があれば,Aと同じ責任が生じるでしょうか。
小問2
 Dについては,Aに対する解任請求(339条)や,株主の取締役の行為差止権行使(360条)。 Eについては,監査役の取締役の行為差止権行使(385条)かな?

【商法第2問】
見せ手形,振出の無権代理無効,白地手形,裏書連続などでしょうか。とにかく処理と書く順番等書き方がややこしそうですね。

【刑法第1問】
間接正犯と共同正犯と共犯者間の錯誤の処理問題。Aへの働きかけは,過失犯Aを道具にした間接正犯の実行行為。甲には殺人既遂の間接正犯が成立することには問題がない。乙は甲とAへの働きかけを共同した共同正犯。しかし,乙は,殺意がないので,傷害致死にしかならない。共犯者間の罪名異なるので,行為共同説・犯罪共同説などについて論じなければない。といった感じでしょうか。
ただ,乙が傷害の故意しか持たなかったのは,甲の乙に対する働きかけがあったからで,甲は乙という故意犯を道具とした間接正犯が成立するのか気になります。
間接正犯が成立すると,乙に対する甲の行為の帰責はどうなるか,乙に共同正犯を成立させないと一部行為全部責任を問えなくなり処理が難しくなりそう。一応乙を道具とする間接正犯も軽く論じて乙の道具性を否定してから,共同正犯を論じるべきでしょうかね。よくわかりません。

【刑法第2問】
甲については,不正カード所持,同行使,有印私文書偽造,同行使,詐欺未遂。
乙については,業務上横領,偽造私文書行使&一項詐欺。たんたんと処理するのでしょうか。

【民訴第1問】
当事者・法定代理人・請求の趣旨・原因の定義と趣旨(訴訟要件と訴訟物の設定?)。裁判長の訴状の補正命令・却下命令,裁判所が訴状却下決定できるか,訴え却下判決との違いなどかな?よくわかりません・・・

【民訴第2問】
小問1は,(1)は請求原因の自白と抗弁(障害),(2)は自白の撤回と理由付否認,自白の撤回の可否。
小問2は,当該主張の信義則による制限と,前訴の理由付否認を後訴の自白と信義則上捉えることができるか,また,XがZではなくYから債務名義がほしい場合にどうするか任意的当事者変更でき,できるとして後訴での理由付否認を再訴の自白とできるか,また,XがY・Zどっちでもいいときは追加的任意的当事者変更を認めた場合に,両理由付否認&自白をどう扱うかでしょうかね。とてもややこしい処理ですね。さらに上のことをどこまで書くかが判断難しいです。膨らませすぎ感が少しあります。

【刑訴第1問】
法111条1項の必要な処分の範囲。出てきたものが差し押さえるべき物の以外の物で粉末が覚せい剤であることをどう調べるか。無令状で強制的に調べたとしてその可否。違法な場合の現行犯逮捕の可否が問題になるのかでしょうか。どこまで膨らませるか悩みますが,ある程度膨らませないと書くことなくなりそうですね。

【刑訴第2問】
伝聞証拠の定義,伝聞法則の趣旨。不同意の場合は原則証拠能力なし。現場指示と現場供述の違い(近年の最高裁判例の基準)。前者なら321条3項で証拠能力が認められる。後者なら,Aの署名押印があるかどうか,Aの署名押印があれば,321条1項3号の要件について書くのでしょうが,現場供述かどうかが難しいですね。

とりあえずこんな感じでしょうか。

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新司法修習の修習生採用選考について

2006年07月17日 | ④司法修習について
裁判所のHPに新修習最初の修習生(平成18年度新司法試験合格組)の採用の選考要領が今月頭に発表されました。
平成18年度11月期司法修習生採用選考要領*(pdfファイル)

内容については,選考資格が新司法試験合格者であること(要領には難しいことが書いていますが要はこういうことです),欠格事由,選考の方法・内容等,選考申込の期間・方法等,修習生の給料が載っています。

欠格事由や給料については現在の59期(平成18年度旧司法試験合格組),旧60期(平成17年度旧司法試験合格組)の修習生と同じでしょう。

ちなみに,新修習(新司法試験の合格者を対象として11月から開始されるもの)の第1期生をなんと呼ぶかについては,私の中では「新1期」とか「新60期」とか呼び方を統一していません。
これは正式に何と呼ぶか私がわからないからなんです。

修習が何期であるかは,法曹にとって重視されることが多いようです。
実務で色々見ていると,会合などの席次を判断する重要な一材料になることが多かった気がしますし,自己紹介等あったら多くの人が自分が何期であるかを言ってた気がします。
そう考えると,新1期という言い方では,期が上かどうかわかりにくいので,おそらく「新60期」と言い方が定着していくのかなと思います。

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傍聴のススメ2&裁判所見学会(夏休み小中学生向けもあるよ)等のお知らせ

2006年07月15日 | ⑫雑談
裁判所のHP内で傍聴の案内など,先日私のブログで紹介しました「傍聴のススメ*」の補充情報を載せます。
(なお,「傍聴のススメ」自体も少し改訂しました)

見学・傍聴案内 近くの裁判所の情報を調べる*
最寄りの裁判所の傍聴,裁判所見学の情報,夏休み子ども見学会,裁判員制度説明会,模擬裁判など各種イベント情報が満載です。

見学・傍聴案内 傍聴の手引*

法廷ガイド*
(pdfファイル)
プリントアウトして事前に勉強しておくとよいかも,私のブログ内の「傍聴のススメ*」も是非参考にして下さい。

各地の裁判所の傍聴券交付情報*
傍聴券が配られる事件の情報です。

最高裁判所HP内夏休み親子見学会のお知らせ*
小中学生とその保護者を対象にした見学会です。
ビデオで裁判について学習し,日本の裁判所の中で一番広い大法廷を見学し,自由見学の時間があり,普段は座ることのできない裁判官席に座って記念撮影をすることもできます。
日時
7月28日(金) (1)午前10時から (2)午後2時から
8月8日(火)  (1)午前10時から (2)午後2時から
8月9日(水)  (1)午前10時から (2)午後2時から
応募要領は上記リンクでご確認下さい。
私も実はまだ最高裁判所に行ったことないのですが,最高裁の大法廷見学,最高裁の長官や判事の座る席に座ることのできる貴重な機会です。
是非最高裁長官を夢見るお子さんや,お子さんを最高裁判事になさりたい方,とりあえず最高裁長官・判事の気分を味わいたい方にお勧めです。
是非うまく子どもをダシに使って遊びに行ってみてください。

最高裁が遠い方は各裁判所でも小中学生を対象とした見学会等も裁判所によってはやってますので,上記の「見学・傍聴案内 近くの裁判所の情報を調べる」で調べて見て下さい。

*注意* 
7月の終わりぐらいから8月の終わりぐらいまで,裁判所は交代で休廷期間に入ります。
この間開かれる裁判は激減しますので,普通に傍聴に行ってもあまりたくさんの裁判が見れない可能性が高いです。
ご注意下さい。
(休廷期間と言っても,裁判官はそのすべてを夏休み当てているわけではなく,溜まった仕事をやってたりしていて,決してサボっているわけではありません。)

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検事任官進路説明会(今年度,来年度法科大学院卒業予定者対象)

2006年07月10日 | ⑦法曹就職情報
平成18年8月8日(火),9日(水)に東京,同年 8月11日(金)に大阪で平成19年3月又は同20年3月に法科大学院修了見込みで,検事任官に関心のある方を対象とした進路説明会があるそうです。法務省の紹介ページ*

現職検事による体験談,検事任官の手続及び任官後の職務説明,検察広報ビデオの上映などを行うそうです。
あと,あくまで予想ですが,多分現役検察官と話す機会とか少なくとも質疑応答ぐらいはあるでしょうし,東京地検,大阪地検内の見学もある程度させてくれるのではないでしょうか。

法科大学院生の2,3年生の方で参加可能な人は,検察官希望でない方でもは是非参加してみてはいかがでしょうか。

勉強のやる気のいい刺激になるかもしれませんし,現役検察官と話す機会はなかなかないので貴重な体験になるでしょうし,もしかするとご自分が検察官向きであることに気付くかもしれませんし。
とにかく何かしらいい機会になるはずです。

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傍聴のススメ

2006年07月09日 | ⑫雑談
是非一度法廷傍聴に行ってみましょう。

【1 傍聴へ行こう】

法廷には,そこら辺に転がっている身近な問題から,別世界の未体験な出来事まで様々なドラマがあります。
法廷傍聴では,ワイドショー的な事件,事実は小説より奇なり的な事件などみなさんの好奇心をくすぐる事件,泣ける事件,笑える事件,憤る事件まで色々見ることができます。
法廷傍聴に行くことにより今度始まる裁判員制度の予行演習にもなりますし,裁判官,検察官,弁護士などの仕事の一部がどんなものか見ることができます。
その他色々な意味で社会勉強になることでしょう。

また,そもそも憲法82条が裁判の公開原則を定めているのは,傍聴人の監視により裁判をより公正なものとするためです。
もちろん裁判官・検察官・弁護士は,傍聴人がいなくても一生懸命仕事をしていますが,やはり傍聴人がいるのといないのとでは少し緊張感が違う気がします。
裁判を公正なものとし,人権を守り,社会をよくするためにも,裁判官・検察官・弁護士を鍛える意味でも,みなさん是非裁判の傍聴に行ってください。

【2 傍聴の注意事項】

裁判では,関係者のプライバシーなどとてもデリケートな事柄を扱っていますので,あえてここでいうまでもないかもしれませんが,法廷内外でも言動には十分気をつけて下さい。
裁判所や法廷の付近には被告人や被害者の関係者などもおられます。
また,有名事件以外のほとんどの事件では,インターネットなどでは読む人がよめば個人が特定される情報は流さないよう十分気をつけましょう。
ものによっては,名誉毀損やプライバシー侵害にもなりかねませんし,被害者に二次被害・三次被害を与えかねませんし,被告人の更生やその家族の生活を脅かす可能性もありますので。

法廷では,通常マイクなどによって声を大きくする措置はとっていないので,静かにしましょう。
一応裁判官,検察官,弁護人,証人席には,マイクはついているのですが,単に録音用のマイクなので声は大きくなりません。

法廷内は,飲食禁止で,メモはとることはできますが,写真やビデオ撮影は原則許されていません。
(テレビでは開廷する前だけビデオを撮っています)。

【3 傍聴のポイント】

皆様の参考になればと少し長めですが,以下,法廷傍聴の仕方やポイントなど書いて行きたいと思います。

《1》裁判所,法廷への入り方

まず,裁判所ですが,建物自体はだれでも入れます。
東京地方裁判所などでは,金属探知など凶器のチェックなどがあるらしいですが,それを除けば9時から5時までは自由にだれでも裁判所の建物内に入れます。

法廷については,普通の民事や刑事の訴訟では憲法上原則公開が義務付けられており,開廷中は傍聴席がいっぱいにならない限りだれでも自由に入れます。
一部世の中を騒がす有名な事件などニュースになるような事件では,傍聴人希望者が傍聴席数をはるかに超えるため,くじ引きするなどして「傍聴券」を配ったりします。

一般的には,民事裁判より刑事裁判の方が傍聴席から見てて何をやっているかわかりやすいので,刑事裁判を傍聴されることをおすすめします。

裁判の途中でも法廷には自由に入ることができます。
法廷の出入口のドアにはパカッと開いて中が見える小窓がついてますので,そこから中の様子を見ることもできます。

どの事件を見るかについては,開廷中の各法廷の前の掲示板には,開廷表なるものがありますのでそれを見て入ることになります。
刑事裁判の開廷表には,被告人名,罪名,開始時刻,進行予定などが記載されています。

《2》刑事裁判の手続の解説

いよいよ刑事裁判の内容に入りますが,刑事裁判の審理の順番を覚えて行くと,今何をやっているか等わかりやすいと思いますし,よりおもしろくなると思います。
おおまかに解説すると,刑事裁判は,
 冒頭手続(人定質問→起訴状朗読→黙秘権等告知→被告人罪状認否→弁護人意見)
  ↓ 
 証拠調手続(冒頭陳述→罪についての検察官立証→罪についての弁護人立証→情状立証)
  ↓
 弁論手続(検察官の論告求刑→弁護人の弁論→被告人の最終陳述)
  ↓
 判決
という順番で行われます。

冒頭手続(冒頭陳述とは違う)は,上述のとおり
 人定質問
  ↓
 起訴状朗読
  ↓
 黙秘権等告知
  ↓
 罪状認否
という順で行われます。

人定質問は,裁判長が被告人に氏名,住所,本籍,職業などが聞き,人違いがないかを調べる手続です。
冒頭手続でのポイントは,起訴状で読まれた事実が何かを把握すること(その訴訟で審理する対象,事件の概要がわかる),それに対する被告人・弁護人の意見は何かを把握することです(その訴訟の争点が明確になります。)。
被告人・弁護人が起訴状に書かれている事実を全く認めて争わないときは,以下に述べるとおり通常検察官が請求する書証は全部「同意」され,ざっと書証を取り調べ,さっさと被告人の情状についての証人調べに入りますが,被告人・弁護人が起訴状記載の事実を一部でも否認し争うときは,多くの場合検察官の請求する書証の一部又は全部が「不同意」にされ,それに代わる証人の取り調べが行われることになります。

続いて,証拠調手続に入りますが,証拠調手続は,
 冒頭陳述
  ↓
 罪についての検察官立証(書証,証拠品,証人の取り調べ)
  ↓
 罪についての弁護人立証(被告人質問など)
  ↓
 情状立証(情状証人,被告人質問)
という順で行われます。

「冒頭陳述」は,検察官が行うものであり,検察官が証拠によって立証しようとする事実(但し,情状は除く)が詳細に紹介されます。
つまり,起訴状朗読ではわからなかった事件の全貌はこの冒頭陳述を見ればある程度(検察官が把握している事実のうち証拠で立証できる範囲に限られますが)わかることになります。
ここでは,被告人の身上・経歴から,事件の背景やなぜ事件が行ったかという事件経緯などが紹介されます。
ただし,事件の内容は起訴状をそのまま引用して読まれないことが多いので,起訴状朗読とセットで聞くことをおすすめします。

冒頭陳述後,証人尋問までの間の手続は一般の方にはわかりにくい手続なんですが,まず検察官が裁判所に書面(「証拠等関係カード」)を使って証拠の申出をします。
これは読まれないので,ここでは傍聴席ではどのような証拠が出されたかわかりません。

その後,弁護人がその申出のあった証拠について意見を言います。
書証(書面の証拠,例えば被害者,目撃者の供述調書など)は,原則弁護人の同意がなければ裁判所は調べることができません(伝聞証拠の原則禁止。刑事訴訟法320条1項,例外は321条以下)。
この同意がなければ,せっかく警察や検察が時間をかけて取った被害者・目撃者の供述調書等は裁判所では調べられず,その代わりに被害者や目撃者等を呼んできて証人尋問を行うことになります。
これは,被害者・目撃者等の参考人(法廷では証人と呼ばれる)を警察署や検察庁の取調室などの「密室で取り調べた結果」を「警察官や検察官がまとめた文書」にすぎない供述調書を調べるのではなく,その証人を呼んで裁判所が「直接」「公開法廷」でその話を聞くことによって,慎重に審理をしようという趣旨です。

事件の被害者や目撃者になったら,警察や検察に呼ばれて事情聴取を受けますが,最悪の場合,警察,検察に何回も行った上で,さらに裁判所にも行って同じ話をしまくらないと行けないので,少し大変です。

この後,その同意されてるなどして裁判所が調べることを決めた証拠を調べることになります。
書面の証拠の調べは,現在はどういうことが書いてあるかを簡単に紹介されるだけです。
(裁判長は検察官に「それでは検察官,要旨の告知をお願いします」などと言ってこれは始まります)
ここでは書面の内容を要約したものが読まれるか最悪書面の題名しか言いません。
検察官は「甲1号証は○×,甲2号証は□△・・・・乙1号証は●○・・・というよう紹介して行きます。
(乙号証は被告人の供述調書や前科調書や身上等の調書で,甲号証はそれ以外の証拠です。必ず甲号証→乙号証の順で調べられます(刑事訴訟法301条)。)
裁判員裁判が始まると,わかりやすいように実際に書いてある内容を裁判員に読んで聞かせることになるかもしれませんね。

弁護人の罪についての立証は,罪を争っているときだけ行われますが,被告人質問やその他証拠があればその取調が行われます。

それが終わると,情状について弁護人の立証ですが,無罪を主張している場合は特に悪いことをしていないと言っている以上,通常これは行われません。
罪の全部又は一部を認めている事件では,被告人の親戚,友人,会社の上司などの知人が呼ばれ証人尋問などが行われますが,被告人がいかにいい人かや被告人がまた同じことをやらないように監督するかなどの質問がされます。

これらの立証が終わると,弁論手続,つまり,
 検察官の論告求刑
  ↓
 弁護人の弁論
  ↓
 被告人の最終陳述
が行われます。
検察官の論告求刑では,被告人の罪や情状についての意見を言った上で,検察官としてはどのくらいの刑か妥当かという意見を言います。
ここで,検察官が懲役刑として実刑を求めているか執行猶予付判決でもいいかは,求刑の前に「被告人を矯正施設に収容させろ」とか「被告人に矯正教育を受けさせろ」と言っているかで見ます。
弁護人の弁論は,弁護人が有罪か無罪かについての意見や情状についての意見を言います。
被告人の最終陳述では,被告人が「やってません」とか「すみません。もうしません」など好きなことを言えます。

これら冒頭手続から弁論手続までの一連の作業(審理)は,通常何回かの期日に分けて行うことになります(簡単な被告人が罪を認めている事件では1回で終わることもあります)。

これら一連の作業が終わるといよいよ
    判決
ということになりますが,通常は審理とは別の日に行われます。

【4 傍聴会】

裁判所の広報に申し込むなどして行われる傍聴会などもあります。
傍聴会では,広報に頼めば,裁判が終わった後に裁判長や運が良ければ検察官に質問する機会を設けてくれることもあるようです。
必ず質問させてくれるとは限りませんが,滅多にない機会なのでダメもとで広報の人に頼んでみるのもいいと思います。

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