弁護士NOBIのぶろぐ

マチ弁が暇なときに,情報提供等行います。(兵庫県川西市の弁護士井上伸のブログです。)

自分でできる少額訴訟

2007年05月20日 | ⑤法律問題について
雇主が給料を払ってくれない。
貸したお金を返してくれない。
怪我をさせられたが,病院代や慰謝料等損害賠償金を払ってくれない。
物を売ったが,売買代金を払ってくれない。
借家を退去したが,家主が敷金をほとんど返してくれない。
などなど,金銭トラブルは世の中にたくさんあります。

しかし,その回収を弁護士に依頼したくても,請求額が60万円以下の場合,
弁護士費用が高くついて弁護士を雇うのがもったいないとか,
逆に,弁護士の方が安すぎを理由に依頼を受けてくれないとか,
どうしたらいいかわからないときがあります。

そういうときに比較的簡単に最寄り簡易裁判所に「少額訴訟」というものがおこせます。
裁判所の解説1*裁判所の解説2*をご参照下さい。


この裁判のいいところは,まず,
裁判が1回で終わることです。
裁判所は平日の日中にしか原則裁判しないので,何回も裁判所に行くのは正直しんどいです。
しかし,この訴訟は,原則として1回の期日で審理を終え判決が出ます(民事訴訟法370条1項,374条1項)。
このメリットは訴える側としては大きいです。


その他の少額訴訟のいいところは(これは簡易裁判所の手続全部に共通ですが),
自分の請求の具体的な理由である「請求の原因」という欄に書くことが,「紛争の要点」で足りるということです(民事訴訟法272条)。
つまり,弁護士という専門家に頼らなくても,訴状が簡単に書けるということです。
「請求の原因」を正確に書くには,法律についての専門的な知識が必要になりますが,簡易裁判所の訴訟手続では,そのような専門知識は必要なく,紛争の要点,つまり,なんで自分が相手に対してそういう請求をするのかを簡単に書けばいいのです。
所定の欄だけきちんと埋めれば,あとは気軽な気持ちで書きましょう。足りないところは裁判所が補充してくれます。

訴状は,以下のサイトで自分の請求内容にあったものをダウンロードしてプリントアウトして入手して下さい。
訴状記載例&ダウンロード*

訴訟の書き方は,
1枚目の「原告(申立人)」という欄に,自分の住所氏名その他連絡先を書き,自分の判子を押し(認め印でOK,シャチハタはダメ。副本を作るためコピーするので捺印はコピー取った後でしましょう。),
1枚目の「被告(相手方)」という欄に,相手の住所氏名その他連絡先を書き,
2枚目の「請求の趣旨」という欄に請求する金額を書き,「(□及び仮執行の宣言)」というところの□にチェックを入れ,
2枚目の「紛争の要点(請求の原因)」という欄に,書くよう指定された各事項を埋め,
2枚目の「添付書類」という欄に持っている証拠書類や必要な書類の書類を書き(例えば,借用書,陳述書,領収書,「●●」と題する書面etc),
1枚目の一番上の「□少額訴訟による審理及び判決を求めます。本年,この裁判所に少額訴訟による審理及び裁判を求める回数は    回目です。」というところの□のところにチェックを入れ,少額訴訟をする回数を入れ,その下の「簡易裁判所」というところの前に,訴状を出す裁判所の名前を書き,その次に訴状を出す日の年月日を書けば,
簡単にできあがりです。


少額訴訟の注意点は,以下のとおりです。
・相手方が少額訴訟が嫌だと異議が出れば,通常の簡易裁判所の手続に移行し,原則1回で終わるというルールがなくなったりします(ただし,相手の負担もそれだけ増えるので,特に1回で終わらせたくない事情がないと異議は出されないでしょう。)。
・1回で終わるので,裁判の日までに,証拠書類や証拠物や証人を用意しないといけません。
・少額訴訟は,同じ裁判所に年間10回までです。


訴状を提出するのに必要なものは,
・訴状の副本(訴状をコピーをしたものに,「原告(申立人)」欄の所定の場所に判子を押して作成します。)を相手の人数分
・相手方が法人の場合は,その法人の商業登記簿謄本(法務局で入手します。)
・証拠書類があればその証拠書類
・収入印紙(請求額による。請求額の10万円未満を切り上げて,10万円毎に1000円分かかる。例えば,請求額が50万1000円なら,60万円に切り上げて6000円分の収入印紙が必要。)
・郵便切手を数千円分(裁判所によっても額が違いますし,相手方の人数によっても額が変わってきますので,最寄りの裁判所に電話して,相手方の人数を言って,必要な郵便切手の内訳を問い合わせましょう。)
です。

訴状の書き方等わからないときは,市役所や法テラスの無料相談で弁護士に相談し,訴状提出の書類がわからないときは,最寄の簡易裁判所の書記官に聞くなどして,頑張ってみてください。

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