弁護士NOBIのぶろぐ

マチ弁が暇なときに,情報提供等行います。(兵庫県川西市の弁護士井上伸のブログです。)

今は回収の時代

2010年10月21日 | ⑤法律問題について
武富士の会社更生の申立てでわかるように,過払金回収の世界も実際の回収が困難な時代がやってきそうです。

そもそも,この不景気で多くの会社や人が,無資力になり,裁判で勝っても回収できないという問題が多くなってきています。
過払回収の世界でも,中小の業者はグレーゾーン金利廃止ころに,そのような状態になり,準大手も経営破たんしたり,2,3割しか和解を認めないという酷い状態になってきていました。
大手は,銀行系のアコム,プロミス,レイクは前よりゴネることは増えましたが,訴訟すれば簡単に支払ってくる状態でした。それに対し,銀行系でない武富士,アイフルはなかなか厳しい状況になりつつありました(アイフルはこの間の私的整理で少し持ち直したように感じます。)。

そこで,破たんしていない会社に対する過払金は,いかに回収をするかが問われる時代になってきています。

何もこれは過払金だけではなく,それ以外のほとんどの訴訟でもそうです。
今の弁護士の力量は,「いかに勝つか」から「いかに回収するか」で,問われる機会が多くなったように感じます(もちろん「いかに勝つか」が難しい事件は相当ありますし,これがなくなることはありませんが)。

私も,最近,いろいろ知恵を絞って,効率的な回収をいろいろ試行錯誤しながら工夫するようになりました。

その努力の甲斐もあって,
この前,難しいと思われた過払金の回収が非常にうまく行きました。

ある貸金業者で,系列会社を増やすなど順調に会社を拡張している会社があるのですが,そこは系列会社ともども,過払金はほとんど任意で払おうとせず,和解しても2,3割しか払わないという方針を取りながら,逆に,残債務がある顧客にに対しては,弁護士介入後の支払日までの遅延損害金(年26.28%)まで一切まけずにさらに一括払いでしか和解しないという酷いことをしています。
しかも,判決を取ってもなかなか支払わないという噂もありました。
この会社には,前に残債務ある依頼者の件で苦汁をなめさせられていたので,いつかギャフンといわせてやろうと思っていました。
この前念願の判決を取ったので,やっとギャフンと言わせられると思い,温めていた方法で強制執行をしたら(詳しい情報は企業秘密です),その会社はかなり困ったのか素直にほぼ全額支払ってきました。
(控訴までしていて,控訴の第1回口頭弁論期日まで決まっていて,それまで散々無視していたのに,強制執行の命令が発令された直後に突如和解の話を持ってきて,驚くべきスピードで和解をし,和解金を支払ってきました。やる気になればできるじゃん!!。もうすぐ強制執行取り下げてあげないといけないなあ。)。

おかげさまで,とてもスカッとしました。
当初依頼者には回収は難しいと説明していたので,何とか喜んでもらえそうです。
(ただ,武富士の過払金が判決後,強制執行申立て中に,会社更生申立てをさせて,飛んでしまったので,気持ち的にはトントン以下ですが・・・あと,1か月,いや2週間でも申立てが遅ければ回収できたのに~)。

ともかく,私の専門分野の,先物取引被害事件や金融商品まがい事件(ロコロンドン貴金属取引まがい,CFD取引まがい,海外先物取引まがい,海外先物オプション取引まがい,未公開株,未公開社債など)は,まさにいかに回収をするかという時代です。
いかに黒幕を探し,個人責任を追及し,その者から回収するかが問われます。
こういう事件を多くしていると,かなり調査能力や強制執行の実務が鍛えられますね。

なにか回収屋っぽい感じで少し品がない話のように聞こえるかもしれませんが,弁護士のスキルを駆使して,いかに適法に,調査し,強制執行をするかという,知的な作業です。

でも,やっぱり弁護士なら,訴訟で勝つ方に力を注ぎたいなあと思う今日この頃です。


あと,折角判決で勝っても,露骨な執行妨害により強制執行が困難になっている事案が多くなってきました。
執行できない給付判決の判決書は単なる紙切れみたいなものです。
現在の執行制度には限界があり,このままでは裁判所の権威にもかかわる重大な問題です。
裁判所も強制執行においては,今までの基準で緩められるところはできるだけ緩めて運用すべきでしょうね。
それか法改正するしかないか。
法務省は,先物被害事件の全国的な若きエースで強制執行の名人でもある荒井哲朗弁護士など実務家の意見を聞いて,画期的で効率のよい新しい執行制度を早く作るべきではないかと思います(荒井先生,それほど親しくないのに,勝手に名前使ってすみません。)。