弁護士NOBIのぶろぐ

マチ弁が暇なときに,情報提供等行います。(兵庫県川西市の弁護士井上伸のブログです。)

国選弁護人と私選弁護人の費用について

2007年11月24日 | ⑤法律問題について
私選弁護人の弁護士費用は今のところ高いですね。
ただ,弁護士の労力と被疑者が得る利益を考えると,そんなもんかなと思います。

国選弁護人の報酬は,起訴後国選は非常に安く,1回で終わる被告人が認めている軽微な事件で,簡裁事件(簡裁に起訴された軽微な事件)で6万円~,地裁事件で7万円~です。
これに,出廷回数,被害者の示談の成立,一部又は全部が無罪になったかどうか等で,コツコツとプラスアルファーされて行きます。

被疑者国選(起訴前)については,私はまだ一度も受任していないので,よくわかりませんが,値段的には起訴後国選とほとんど同じようなものです。

国選弁護人の費用は,原則は,最終的に国が負担することになっていますが,被疑者・被告人に資力がある場合には,被疑者・被告人負担になります。
また,本人に資力があるかないか微妙なときでも,被害者に全額弁償をした場合で,執行猶予付きの判決が出た場合には,被告人負担になることがあるようです。

といっても,十数万円くらいの負担なので,40~60万円くらいはかかる私選弁護人(あくまで目安それ以下それ以上の場合もあり)に比べると,相当安いです。

しかし,よく留置場では,国選弁護人はやる気がなく,いい加減な弁護をするという噂が流れているようです。
そのため,私選の弁護士費用を払うから私選弁護人になってくれと言われることがたまにあります。
我々弁護士の職務基本規定(このブログに全文掲載しています。)には,国選弁護人は被告人に私選に切り替えるよう要求してはいけないという決まりがあって,後で弁護士の方から私選にするよう勧めたと言われても困るので,私は,このような申出は断るようにしています。
どうしても私選がいいなら他の弁護士を探して下さいというようにしています。

私選だろうが国選だろうが,善管注意義務(善良なる管理者としての義務)を負いますので,多くの弁護士は,入れる力は変えないでしょう。
ただ,やはり国選だと手を抜く人もいるという噂を聞きます。
また,弁護人と被告人の弁護方針で意見が合わないときなどは,国選の場合は,弁護人は説得して自分の意見を通しやすいですが,私選だと自分が正しいと思っても,つい被告人の意見を尊重してしまいがちになる人もいるようです。

この前も,民事の依頼者から,「息子が捕まって起訴されたが,国選弁護人が何もしてくれない。先生が私選でついてくれないか。」と言って来られました。
しかし,話をよく聞くと,軽微な事件で,初犯で,公訴事実(訴えられた犯罪事実)に争いはなく,被害者もいない犯罪でした。
こういう犯罪では,事実を争うための主張・立証をする必要もなく,被害者との示談の必要もないので,弁護人がやることと言ったら,情状証人(親など監督する人)の尋問と被告人質問だけ。
できれば本人の反省を促すため,何回も接見しに行くべきかもしれませんが,懲りない面々ってな感じで(この表現は古い?安部譲二です。),親が何度言っても聞かないそうで,弁護士が多少説得しても,反省しそうもない感じです(本人がもう少し時間をかけて大人になるべき)。
私選弁護人自体も本人が親につけてくれと言っているくらいですからね(新しい弁護士付けろという前にまず反省しろ!!)。

こういう事件では,やること少ないし,判決の結果はあまり変わらないですしね。
余り私選弁護人をつけるメリットは少ないです。
私選弁護人をつけるより,毎日親が反省を促しに拘留場に通うべきですね。

もちろん私が国選弁護人となった場合は,一生懸命反省を促しますが,何度言っても全く変化がなく,口だけで反省していますというだけの人だと,事件が終わったあと,「もう刑事事件なんてごめんだ。」と思ってしまいます。
こういう事件はいくらお金をもらってもやりがいがないので,私選では絶対に受けたくないですね。

なんか,最後は,刑事事件の愚痴っぽくなってしまいましたが,少しは,刑事弁護人や,私選と国選の違いがわかって頂ける材料になったのではないでしょうか。


架空請求に対する対処法の一案(やすさんの質問に対する回答)

2007年11月13日 | ⑤法律問題について
【やすさんの相談内容】

今日、知らない番号から携帯にかかってきました。
でてみると、全くつかったことないサイトからの請求でした。
なんでもアダルトサイトらしいです。
今年の初めに登録があったとのことです。
入金がないから連絡しましたといわれました。
ワンクリックじゃないんですか?と、聞いたところ、違うといわれました。
いくらなのかも言ってきませんでした。
身に覚えがないと言ったら、
では、自社の顧問の請求会社に連絡するといわれました。
自分の名前もメールアドレスも携帯の番号も知られてます、どうやったのかわかりませんが・・・
親や会社に迷惑かけたくないです、どうしたらいいでしょうか。


【NOBIの回答】

弁護士としては,後腐れや周辺に迷惑がかかるからと言って,お金を払えとは,とてもいえません。

犯罪者お金を払うことは言語道断のことです。
こういう詐欺師にお金を払うと,次の詐欺の元手になることにもなり,犯罪を助長し,他に多くの被害者を作ることになります。

まず,あなたは一切悪くないのですし,そもそもあなた自身まったく身に覚えのないことですので,親や会社にこういう不当請求を受けたと言っても,何ら恥じることや攻められることはないはずです。
オレオレ詐欺から電話がかかってきて,断ったら逆恨みされて嫌がらせを受けたのと同じです。

犯罪者は,親や会社などに迷惑をかけたいないという心理を利用して,楽してお金を稼ぐのです。
相手の思う壺になってはいけません。

周囲の理解と協力を求めて,毅然とした態度で,何をされても決して払わないという態度を示しましょう。

恐いかもしれませんが,一度引っかかると,相手はあなたの個人情報をしっているので,「カモ」リストに入り,たくさん犯罪者から似たような電話がかかってくるようになり,余計酷いことになる可能性があります。
ここはとにかく我慢です。

相手に携帯番号,メールアドレス,名前等の個人情報を知られているのは,確かに問題があります。

住所や職場とか他の個人情報は知られていないのでしょうか?
これらは巧みに聞かれても,絶対に答えてはダメです。なんと言われても,「言う必要ない」で通しましょう。

他の個人情報が知られていないなら,携帯電話,メルアドは,無視するか,最悪変えれば済むので,問題ないでしょう。
名前も著名人でない限り,調べようがないので,おそらく大丈夫でしょう。

仮に,住所や職場等逃げようのない個人情報を握られていたとしても,これこそ逃げずに,毅然とした態度「支払う必要はない。もう電話かけてこないでください。」と言って,すぐに電話を切りましょう。
何度も電話をかけても,同じことを繰り返す。
しつこいようなら,「少し考えて書面で返事をしたいので,「住所,氏名,FAX番号」を全部教えて下さい。それでないと,どこのだれともわからない人間にお金なんて払うことなど絶対にできない。」と言いましょう。おそらく,警察に通報されることをおそれて,教えてくれないと思います。

それを繰り返していると,すぐにあきらめる可能性が高いと思います。

このような犯罪者は,楽にリスクが少なくよりたくさんのお金を稼ごうと思っているので,めんどくさい人は基本的には後回しです。

仮に相手が本職さんとしても,自分の名前や所属組織名を言わなければ,メンツの問題も出てこないし,引き際を知っている人が多いので,素人よりややこしくないことが多いです。
こんなせこい詐欺に,自分の名前(本名,通り名)や所属組織名は出すことはまずないと思いますし(組織名出すと,恐喝罪や暴対法の問題も出てきますし)。

そんな感じで,しばらく耐えて,もし本当にしんどくなったり,危なくなったら,弁護士や警察に相談しましょう。
できれば,その前に電話の内容を録音してあると,相談に乗りやすいと思います。

以上は,私が最善と考える一つの案ですが,他にもっといいやり方はあるかもしれません。
あと,これはあくまで一般論なので,ケースバイケースで臨機応変に対応することが肝心です。
そのためには,周りにすぐに相談できる人を何人もおいておくことが大事です(家族,友人,職場,弁護士,警察等種類を分けた方がよいと思います。ただ,プロへの相談はある程度煮詰まらないと,自分でやってみては,とか,無視しておけば大丈夫です,とか相手にされないことが多いので,注意。)。


もし逮捕されたら(当番弁護士と被疑者国選弁護の制度)

2007年11月10日 | ⑤法律問題について
もし自分自身や家族や友人が警察や検察等に逮捕・勾留されたら,どうしますか?

私は,弁護士なって,多くの人が「当番弁護士」の存在を知らないことを知って,びっくりしているのですが,とにかく,逮捕されたときは,まず「当番弁護士」の出動要請か知っている弁護士を呼びましょう。

当番弁護士は,弁護士会がボランティアでやっている制度で,最寄りの弁護士が当番で来ることになっていて,初回無料で呼ぶことができます。

弁護士が来たら,まず自分が逮捕されたことについての悩みを相談しましょう。
自分は無実であるとか,家族や仕事をどうしたらいいか,いつ出られるとか,いろいろ悩みはあると思います。
そして,弁護士をつける必要があると思えば,弁護人をつければいいと思います。

弁護人は,捕まっている人の依頼にしたがって,無実を証明したり,被害者と示談したり,罪を軽くしたり,起訴猶予にしたり,早く出られるように動いたりします。
もちろん弁護士も神様ではないので,黒を白にしたりすることはできませんし,短い間に思うような成果を上げられるとは限りませんが,その点は,見通しを聞いて,弁護人をつける意味があるかどうかを考えたらいいです。

弁護人を選任したいが,お金がなくて弁護人を選任できない人はどうするか。
被疑者国選弁護人をつけるか,法律扶助で弁護人をつけるしかありません。

被疑者国選弁護人は,現在では,死刑,無期懲役・禁固,短期1年以上の懲役・禁固の罪(比較的重い犯罪だけ)でないとつけられません。
※短期1年とは,刑罰法規で,例えば「●年以上■年以下の懲役」とある場合の「●年以上」の最低刑の方です。単に「■年以下の懲役」とある場合は,最低刑は1ヶ月以下と言うことになります。

ただし,平成21年4月からは,被疑者国選弁護人制度は,死刑,無期懲役・禁固,長期1年以上の懲役・禁固の罪まで広げられ,ほとんどの事件で可能になります。
※「長期」とは,上の例の「■年以下」の最高刑の方です。

法律扶助は,刑事の被疑者段階でやっているかどうかは,弁護士会によって違うと思うので,弁護士に聞いてみましょう。ただ,弁護士は法律扶助で事件を受ける義務がないので,当番弁護士で来た弁護士がそれで事件を受けてくれるとは限りませんので,ご注意を。

とりあえず平成21年4年までは,短期1年以上の重い犯罪を疑われている人か,お金がある人か(親族や友人や職場が出してくれる場合も),法律扶助でやってくれる弁護人を見つけられた人でないと,被疑者段階で弁護人をつけることができません。
結局は,どの事件でも同じですが,弁護士をつけるメリットが弁護士費用を払っても得たいものかどうかで弁護士をつけるかどうか決めるほかないです。

まあとにかく逮捕されることをしないように犯罪を犯さないよう,また,犯罪を犯したと疑われないよう気をつけていただきたいと思います(特に,痴漢事件。なるべく,乗り物で女性と接触しないよう,痴漢と疑われない位置に手を置くように。)。

あと,当番弁護士を呼んで,弁護士をつける必要があるときでも,ないときでも,そして,私選弁護人を頼むつもりはなくても,とりあえず意味がわからなくても「私選弁護人選任申出」をしておいた方がいいです(大概は当番弁護士の方から,「私選弁護人選任申出をするように言われます。」)。

「私選弁護人選任申出」をすると,弁護士と報酬等の条件さえがあえば,弁護士をそのままつけることになりますが,条件が合わなくても(最初から私選で弁護人を選任する意思がなくても),この申出さえしておけば起訴前の重大事件(平成21年3月まで)については,被疑者国選弁護人がつきますし,そうでなくても,将来起訴されたときの,国選弁護人の選任手続がスムーズに進みます。

この記事をまとめますと,よくわからなければ,とりあえず,①「当番弁護士」警察や弁護士会にを呼ぶこと,そして,②私選弁護人選任申出をすることが大事です。
私選弁護人選任申出の後も,別にその弁護士に高い弁護士費用で私選で依頼しなければならない義務はないですので,安心して「私選弁護人選任申出」をしたらいいと思います。