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マチ弁が暇なときに,情報提供等行います。(兵庫県川西市の弁護士井上伸のブログです。)

離婚弁護士

2008年11月25日 | ⑤法律問題について
私はマチ弁をやっているだけに,離婚事件をよくやります。
2年でたくさんの夫婦を離婚させました(悪いことしているように聞こえますが,不幸な結婚生活を強いられるより早く別れた方がいい場合が結構あります。)。

離婚事件は嫌だという弁護士が結構いますが(でも多くの人は嫌な顔一つせず粛々やっておられますが),私は結構苦手意識なく,どちらかといえば好きです。
現在自称「離婚弁護士」です。


以下,離婚について簡単に説明していきます。

離婚には,大きく「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の3つがあります(ごくまれに「審判離婚」というものがあるようですが,ここでは省きます。)。

「協議離婚」は,夫婦が離婚届を2人で書き,市町村役場に出す,いわゆる普通の離婚です。

「調停離婚」は,夫婦が自分たちだけの話し合いがつかないとき,夫婦の一方が家庭裁判所に調停を申立て,調停委員が間に入って話し合いをし,その話し合いが成立したときに離婚する場合です。

「裁判離婚」は,上の調停でも話し合いがつかない場合に,家庭裁判所に起こす訴訟によって離婚する場合です。
これは相手が離婚を嫌がっていても下記の離婚原因さえあれば強制的に離婚できる制度ですが,上記の調停をしないと訴訟を提起することができません(調停前置主義)。


どの離婚でも,法的な効果は基本的に同じですが,違いは①離婚成立がいつになるか(いつ夫婦でなくなるか)と,②離婚原因が必要かどうか,③離婚届の書き方でしょうか。

①離婚成立時については,
協議離婚は,離婚届を提出したとき。
調停離婚は,調停が成立したとき。
裁判離婚は,判決が確定したとき(訴訟上の和解をしたときは和解成立時)。

②離婚原因(民法770条1項)は,
一  配偶者に不貞な行為があったとき。
二  配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三  配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四  配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五  その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
です。
協議離婚・調停離婚では必要ないですが(夫婦双方が離婚に同意しているから),
裁判離婚では必要になります。
但し,裁判離婚でも,有責配偶者(離婚原因を一方的に作った者。例えば不倫した夫からの離婚請求)からの離婚請求は,実務上,今のところ認められないことが多いです。

③離婚届の書き方ですが,
協議離婚は夫婦両方の署名捺印が必要です。
調停離婚・裁判離婚は,調停調書・判決等があれば,他方の署名捺印がなくても,離婚の届け出ができます。


離婚の条件で決めることは(いずれの離婚も共通),
(1)慰謝料
(2)財産分与
(3)年金分割
(4)(未成年の子どもがいるときは)親権者
(5)(未成年の子どもがいるときは)養育費
です。
ただし,(4)以外は,必ず離婚のときに決めなければならないものではなく,(1)は離婚後3年間の時効成立まで,(2)(3)は離婚後2年間まで,(5)については子どもが成人するまでならいつでも申立てられます。


(1)についてですが,相手が不倫したときなど,不倫してから3年の時効ではないかと思われがちですが,慰謝料は不倫に対する精神的損害ではなく,離婚を余儀なくされたことに対する慰謝料と構成すれば,離婚時から3年ということになります(ただし,不倫相手に対する慰謝料は別です。お早めに。)。
相場は,本来あってなきがごときで,いくらでもいいと思いますが,あまり高いと贈与とみなされる可能性があります。
ただ,裁判で慰謝料額を決めるときは一応の相場があります。特に近時相場をはっきり決めようという傾向があるようです。
だいたいは,不貞行為なら200~300万円(具体的金額は回数や態様による。不倫相手に対する請求の相場は150~200万円くらいのようです。)。特に酷いケースで500万円。
500万円を超えるには,DV等で後遺症が残らないとなかなか難しいようです。
昔の「妻は夫のすることを我慢するのが美徳」「夫が浮気するのは妻も悪い。」「浮気は男の甲斐性」などと言った考え方ならいざ知らず,離婚は人の人生をめちゃくちゃにするもので,それを一方的に壊しといてたった300万円はあまりに安すぎますよね。
裁判所の相場感覚は市民感覚に合っていないですよね。

(2)の財産分与は,夫婦で作った財産を折半することです。
別居時(別居していないときは離婚時)にいくら財産あるかで額が大きく変わります。
株や不動産等価値が変わるものは,裁判の終結時の時価で判断されます。
夫婦のためにした負債は当然差し引かれますので,負債が多いときに離婚すると,財産がたくさんあってもあまりもらえません(ただし,ギャンブル等夫婦の一方が自分だけの事情で作った借金は考慮されるべきではないでしょう)。

ちなみにテレビなどで芸能人の慰謝料が1億円とか言っているのは,おそらく慰謝料だけでなく,財産分与も含んでいると思われます。

弁護士をいつ付けたらいいかというのはケースバイケースです(調停を起こす前の示談交渉時点,調停の時点,訴訟の時点と様々です。)。
弁護士をつける必要性があるのは,離婚そのものや上記(1)~(5)等に争いがある場合です。
ただ,示談交渉,調停,訴訟と全部弁護士を付けると弁護士費用が莫大にかかりますので,どこで相手と話がつきそうかを見極めながら弁護士をつけた方がいいです。
相手が話せばわかる人の場合,条件の食い違いの差が大きくない場合なら,示談交渉や調停の段階で弁護士を付けるのもいいですが,全くお話し合いにならないのならないような場合は,自分で調停をして,さっさと調停を終わらせてから,弁護士を訴訟の段階から付けた方が時間的にも資金的にもお得かと思います。


相手が離婚を反対しているが,一刻も早く離婚したい場合は,速やかに子どもを連れて別居し,離婚調停を申し立てるのと同時に,婚姻費用分担請求の調停を申し立てると有効な場合が多いです。

別居後婚姻費用分担調停を申し立てた場合,相手は,別居して家のこともしてくれない配偶者のために,生活費を支払わないといけなくなるという耐え難い負担を負うことになるので,これをやると早期に離婚調停が成立する可能性が高くなります。
ただし,相手方が収入が少ない場合や職を転々とする人等の場合はあまり負担にならず効果がないことがあります。
また,婚姻費用分担請求は,収入の多い方が収入の少ない方に対し,その生活費と子どもの生活費を支払うというものです。収入の多い方が請求はできませんので,その場合にも有効な手段とはいえません。

別居の際の注意事項ですが,
子どもがいる場合は,子どもを連れて出ないと親権を相手にとられることが高くなりますので注意が必要です。
また,下手な別居の仕方をすると,「悪意の遺棄」にあたり,慰謝料請求の対象になる場合があるので「捨てた」という形にならないようご注意下さい。
例えば,生活費の面倒を見てる方(特に男性)は,生活費を別居後もある程度払い続ける必要があるでしょう。
また,別居の際,自分の別居先と相手の住んでいるところがあまりに遠くになると(例えば,遠くの実家に帰る),調停をする裁判所は,相手の住所地の家庭裁判所になり,調停をするのに裁判所に行くのがとても大変になりますので,調停・裁判が予想される方はご注意下さい。

以上,だいたいのことを書きましたが,細かく実際にどうしたらいいか悩んだ場合は,まず最寄りの弁護士に相談に行かれることをおすすめします。


今までやった事件(既済,未済込み)

2008年11月21日 | ⑥弁護士等法曹情報
ご無沙汰しております。4か月ぶりの更新ですね。すみません。

弁護士丸2年を経過して,3年目に入りました。
今までやった事件,やってる事件を総括して行きたいと思います。

件数は下記のとおりです(数字に若干の誤差はあるかもです。)。これは既済,未済込みです。

示談交渉より訴訟になるケースが多かったと思います。
訴訟は,原告側も被告側もやっていますが,原告側が圧倒的に多いです。
これらはマチ弁の宿命かもしれませんね。

ボスの下請け事件より,自分一人でやる事件がほとんどだったように思います。これもマチ弁の宿命かもしれませんね。

去年までは個人の負債事件が多かったですが,今年は民事事件や離婚事件等家事事件・後見事件が増えていっていますね。

弁護士費用は,概ね相場(旧日弁連報酬等基準=民事事件:着手金は得られる経済的利益の8%以下,成功報酬は得られた経済的的利益の16%以下(各消費税別))かそれ以下でやっているのがほとんどですね。
特に,激安な法テラスの法律扶助の事件が多かったですね。これもマチ弁の宿命か・・・

我ながらいろんな事件をたくさんやったな~という感じですね。
やったことがある事件はもちろん,特に専門性が必要な事件,例えば,医療事故,知的財産権等以外はひとりでできる自信が大概つきました。我ながら1年前から見るとかなり弁護士としてスキルも精神も成長したように思います(もちろんまだまだ精進が必要ですが)。
個人的には,離婚の女性側や先物事件等,悪い夫や悪い業者を相手する事件がおもしろいというか(悪い意味ではありません。),やりがいがありますね。

1 民事事件44件(訴訟,調停,示談等)
(内訳)
 交通事故4件
 先物被害14件(国内先物,海外先物,海外先物オプション,ロコロンドン,CFD取引等)
 その他民事26件(建物明渡,ペット被害,手形,不動産移転登記抹消,貸金請求,内縁関係破棄,婚約破棄,請負報酬,マンション管理費,老人の財産取込等)

2 家事20件(離婚,婚姻費用請求,面接交渉,子の引渡し,人身保護,離婚無効,婚姻取消)
(内訳)
 離婚12件(親権,慰謝料,財産分与,年金分割,養育費,婚費請求)
 子の引渡し4件(子の引渡し審判・保全処分,人身保護申立て,人身保護国選代理人)
 面接交渉2件
 その他2件(離婚無効,婚姻取消)

3 相続1件(遺産分割調停)その他遺言の作成多数

4 後見等10件(後見人,補助人,財産管理人,補助・保佐申立て,財産管理人選任申立て)

5 強制執行等8件(債権差押え,強制執行第三者異議訴訟,財産開示)

6 保全事件5件(不動産仮差押え,不動産処分禁止仮処分,自動車処分禁止仮処分,債権仮差押え,マンション建設反対)

7 行政事件2件(いずれも弁護団事件,原告側)

8 刑事事件27件
(内訳)
 国選公判弁護24件
 私選公判弁護1件(弁護団事件)
 私選捜査弁護2件(いずれも当番弁護士から)

9 少年事件2件

10 負債事件83件(個人破産,個人民事再生,任意整理,過払金回収,債権査定申立て等)
(内訳)
 個人破産22件(過払金回収含む)
 個人民事再生10件(住宅ローン特別条項付・過払金回収を含む)
 任意整理49件(件数は依頼者ごと。過払金回収を含む)
 その他2件(債権査定申立て,債権確定訴訟等)
 ※過払金回収36件(上記83件中。件数は依頼者ごとなので,実際はその数倍)

11 その他相談(1~10及びそれ以外(医療事件医者側,遺言等))
 多数