弁護士NOBIのぶろぐ

マチ弁が暇なときに,情報提供等行います。(兵庫県川西市の弁護士井上伸のブログです。)

今の司法試験合格者・修習生に伝えたいこと~就職活動,二回試験,修習の実,その他

2012年11月14日 | ④司法修習について
1 はじめに

司法試験合格後の司法修習(裁判官,検察官,弁護士等の法曹になるための研修)は,第52期(主として平成9年司法試験合格者)の修習生までは修習期間が2年,その後,我々第59期(主として平成16年司法試験合格者)の修習生までは1年半でしたが,現在は,たった1年になっています。

以前は,前期修習⇒実務修習⇒後期修習⇒二回試験(修習生の卒業試験)という流れでしたが,現在は,実務修習(8か月)⇒選択型修習(2か月)・司法研修所での修習(正式名称は忘れましたが,以前の後期修習に当たる)⇒二回試験となっています。

今の修習生は,かわいそうなことに,起案(裁判文書の作成。二回試験の主たる問題)のいろはも前期修習で十分に教えられず,いきなり実務修習に行き,昔は3~4か月あった後期修習(起案の仕方の総仕上げ)もたった2か月で,しかも二回試験不合格者は昔より相当多く,二回試験対策が不安な状態だと思います。

また,司法試験合格者増員・司法修習生増員に伴い,就職難に陥っており,就職活動に対しても不安いっぱいだと思います。

そのため,二回試験対策,就職活動に気を取られ,修習を充実したものにできていないじゃないかと心配しています。

この記事は,二回試験,就職活動で不安を抱えている修習生に対し,一つの道筋になれば幸いだという気持ちで書きました(もちろん,この記事が絶対ではないです。)。


2 就職活動


採用する弁護士としては,できるだけ,①即戦力で,②費用対効果がよく(数年単位でトータルで給料や経費より売上がよいなど),③事務所または自分に合う弁護士が欲しいです。

①即戦力かどうかについては,法律実務だけではなく,プラスアルファの社会人としての能力やその他の能力も問われます。

つまり,社会人としてどれだけ成熟しているかです。
これは,社会常識やビジネスマナーや外見や社会経験が問われます。

社会常識や社会経験は,すぐに身につくものではないですが,ビジネスマナーや外見は,ある程度短期間で修正がききます。
ビジネスマナーや外見は,弁護士以外の就職活動の基本です。
ですから,ビジネスマナーや外見などは,弁護士以外の就職活動のマニュアルがとても参考になります。
手紙の書き方,面接の仕方,面接時の服装等身だしなみなどは,そう言ったマニュアルにほぼ全部書いています。

私は,現在の弁護士の就職活動の前提として,就職活動のマニュアルを読み,身につけておく必要はあると思っています。
もちろん,マニュアルはあくまでマニュアルなので,絶対ではなく,あくまで基本であり,TPOに合わせて,応用していく必要があります。
応用は基本をマスターしないと,なかなか難しいですが,端的にマスターするには,やはり,机上ではダメで,実体験(場数)です。
つまり,行きたい行きたくない事務所かどうかは置いておいて,なるべくたくさん事務所に履歴書出し,なるべくたくさん面接に呼んでもらい,面接をたくさん受けることが肝要だと思います。
そこで,自分が覚えた就職活動のマニュアル(法曹への志望動機,応募先への志望動機,自分の長所・短所,自分のやりたいことが応募先にどう合うか,貢献できるか,履歴書の書き方,履歴書に貼る写真の撮り方,挨拶の仕方,話し方,話の聴き方,座り方,応募先への事前事後の連絡の仕方,服装,髪型,口臭・体臭・・・・詰めようと思えばいくらでも詰めれます。前提として,徹底した自己と応募先の分析が必要です。)をいろいろ試してみたり,他の応募者の対応をよく観察して,いいところは盗み,悪いところは直すなどの試行錯誤をします。
たくさんの事務所の面接を受けることはしんどいですが,他の事務所を内側から見る機会にもなり,弁護士になった後での参考にもなります。
これらが,就職活動のみならず,就職後,顧客や相手方や他の法曹に対する対応として,相手の気分を悪くしない,社会人としての力につながるわけです。

その他の能力については,語学や簿記の知識や弁護士以外の専門知識(建築,医学,金融商品,税務,特許関係等)ですが,少なくとも,簿記の知識くらい(簿記3級レベル)くらいは,簡単だし,身につけて欲しいですね。

②費用対効果については,能力もありますが,給料が安くするか,給料は安くなくてもボスが元は取れるまでは独立しないなどの誠実さ・義理堅さは欲しいです(ただし,誠実さ・義理堅さは,一朝一夕に身につくものではないですが)。

③事務所に合うか合わないかは,個性・相性の問題なので,なかなか難しいですが,相性が合わない者同士がくっつくと不幸以外ありません。修習生としては,たくさん面接を受けて,相性がよい事務所を探すしかありません。


就職活動の基本は,自己の能力・人間力を高めて,就職成功率を高め,数を打つこと以外ありません。
能力の高い人は,多くの内定を取りますが,必ずしも100%ではなく,それでも数か所受ける必要がありますが,能力が上がりきらない人は,たくさん面接する必要はあると思います。

多くの募集事務所は,採用予定人数が1~2人で,一事務所で採用される可能性は極めて低いです。また,ほとんどの事務所が弁護士の数が少なく,弁護士の個性もあり,必要とする人材は十人十色です。ある事務所では評価されなくても,他の事務所では評価される可能性は十分あります。

行くか行かないかは別にしてたくさんの事務所・インハウス企業を受けるメリットは,就職成功率を高める以外に,履歴書の書き方がうまくなる,面接のノウハウがわかってくる,自分に合う事務所を探すことができるなど,いろいろあります。

就職活動で失敗を続けると,自分自身に対する自信を喪失する時期があります。
しかし,たくさん受けていると,そのうち自分を評価するところが出てきたり,内定が出たりと,自信が回復します。不屈の精神で諦めず,やってほしいと思います。

合格者に言いたいことではありますが,発表前から行く気がなくても,就職活動(サマークラークや事務所説明会等も含む)は,なるべく応募すべきだと思います。

就職活動のポイントは,とくかく,自己と応募先分析をし(孫子「敵を知り,己を知れば百戦危うからず。」),能力を高め,人格を高め,めげずに数打つことです。

あと,採用する側から言うと,本当にこの事務所に来たいのかその熱意を見せて欲しいです。
履歴書等を読んで,結局どこの事務所でもいいんでしょ,就職難だからとりあえず応募しただけなんでしょと感じると,よほど他で光るものを見せてもらわないと正直面接に呼ぶ気が起こりません(まあ会わないとわからないことの方が多いから,もう少し基準は落とすかもしれないですが)。

うちのような少数の事務所では,イソ弁は,長い間,毎日一緒にいて,一緒に働くわけです。
自然と一緒にいてしんどくないか,仕事のパートナーとして適しているかという基準になるわけです。

なるべく早く就職先を決めれば,それだけ修習,二回試験対策に集中できます。頑張って欲しいものです。

3 二回試験

まず,落ちるパターンと落ちやすい人について述べます。
自分の経験や落ちた修習生を分析すると,私なりに一定の傾向が見えましたので,今後の参考にしてください。

まず,
(1)落ちるパターンですが,
①絶対にやってはいけないことをする(民裁:要件事実の異なる訴訟物の間違え,刑裁:全部無罪判決,検察:不起訴,刑弁:有罪弁論・情状弁護,民弁:不動産即時取得など法律上ありえないことを書く:原告と被告を間違え逆の立場で書く。)
②点数のあることを書かず,点数のないことばかり書く(閃いたことを中心に書く。パニクる。)。
③途中答案(時間配分を間違える。パニクる。紐を結べていない等々)

次に,
(2)落ちる人のパターンですが,
①できない人(意外に成績の悪い人は落ちず,主にやる気のない人が落ちる気がします。)
②気負っている人・テンパっている人(いい点を取ろうして変なことを書いたり,思わぬ失敗をする。)
③相談しない人・わが道を行くタイプ(独創的すぎ,点数ないことばかり書いたり,点のあるとこを省いたりする。)

(2)の②は,主として,裁判官,検察官希望の人でしょう。
これらは人は,パニクった場合どうするかなど,危機管理(パニクった場合どう対処するか,体調管理,当日体調が悪い時どうするかなど)を詰めておけばよいと思います。


その他については,二回試験さえ受かればいいという人向けに書きます。

まず,(1)落ちるパターンについて書きます。

まず最初に言いたいのは,各科目について,無難な答案の書き方をマスターしろということです。
各教官室が書いた答案の書き方のマニュアルをマスターすればよいのですが,それらは概して総論的でなかなか理解しにくいです。
反対に,教官の講評は,概して各論的すぎ,わかりにくいです。

そこで,補充するのが,修習生の中で代々受け継がれているマニュアルを参考にすることです(あくまで参考で,妄信してはいけない。)。

我々の時代は,「お作法」だったか「お手前」というある優秀な修習生が書いたマニュアルがありましたが,現在は,「楽しい起案」か「嬉しい起案」等といったマニュアル本があるようです(これ以外もあります。)。

これらを早く入手して,ざっと目を通し,最低限点が取れて失敗しない方法を覚えておくべきだと思います(ただし,あくまで二回試験対策なので,実務では役に立つとは限らないですが。)。

(1)の①については,民裁では,要件事実は出ないとの噂もあり(あくまで噂ですが),主として,事実認定に気をつけるべきだと思います。

民裁の事実認定は,一般論としては,原告が勝つか被告が勝つかは,決まっていません。
問題によって,原告が勝つ(教官室で,ほとんどの教官が原告勝つという心証),被告が勝つ(教官室で,ほとんどの教官が被告勝つという心証),どちらの勝ちもありうる(教官室で心証が分かれている。)という問題があります。
これらを的確に把握する必要があります。この見極めを間違えると,落ちる可能性が高くなります。
これに対する対策は,多くの修習生がどっちを書くかを考えるべきです。そのためには,数少ない起案の中で,他の修習生の心証を聞いておく必要があります。


刑裁については,全部無罪判決を書かす問題が出る可能性は極めて低いです。仮にそういう問題が出ても,半分近くの修習生は有罪起案をします。
つまり,修習生の半分は落とせないので(おそらく,まだ,1割を落とせても2割は政策的に落とせないはずです。),間違った結論を書いても,その中で出来の悪い人だけ落とすわけです。
仮に,「これは無罪起案だ」と思っても,その方向で書くためには,十分な検討と覚悟が必要です。
その判断が間違っていれば,落ちる可能性が極めて高いです。
そうならば,有罪を書いて,他の修習生よりいい答案を書くことに専念した方がましです。
ただ,無罪起案と言っても,故意の有無が争点になっている場合などには,教官室で結論が分かれる可能性があるので,一部無罪起案はありえます。
そうは言ってもやはり多くの修習生はどっちを書くを考えて,慎重にあるべき結論を考えるべきです。

検察については,不起訴裁定書に手を出すと落ちる可能性が高いと言われています。
検察の不起訴裁定書は,右端が赤くなっており(私は「赤紙」と呼んでいます。),入っていると答案を一見してすぐにわかります。
受験会場を見渡して,他の修習生の大半が赤紙を手を出していない場合には,手を出さない方が無難です。

刑弁は,有罪起案,情状弁論は,原則ありませんので,刑裁で無罪起案,検察で不起訴裁定書に手を出すくらいの覚悟が必要です。

刑事系全体で言えば,罪刑法定主義に反する起案は絶対に注意すべきです(司法試験でも同じですが)。


民弁は,私の期(59期)で出た問題で,「不動産の即時取得」などのあり得ないミスをすると,落ちます。
民弁は,概して,①事実認定の間接事実・間接証拠による総合判断による事実認定をするパターンか(例えば,二段の推定を破る場合など),②過失,表見代理など規範的要件について,評価根拠事実から総合的に判断するパターンが出ます。
つまり,総合判断について,事実と証拠を拾って,ガリガリ書かないと点数がつかないので,落ちます。

②点数にならないことを思いつきで書くことについては,起案の現場でひらめいたこと書くの危険で,慎重に吟味する必要があります。
つまり,多くの修習生が書くかどうかを慎重に吟味すべきです。
点数にならないことに時間を費やすと必然的に点数があることを書く量や時間がなくなり,採点者の心証は悪くなり,相対的に点数が落ちります。それに,点数にならないことを書いて間違ったことを書くと,減点される可能性が高いです。
(ただし,ひらめきが起きやすい人は,発想力が豊かなので,弁護士になると意外に伸びる可能性は秘めていると思います。ただ,二回試験には不向きなので,二回試験ではそれは封印した方がいいでしょう。)

③途中答案については,必ずしも落ちるわけではないでしょうが,
まず,点数のあるところを書ききれないことで落ちる可能性が増します。
また,途中答案というだけで,減点される可能性もあります。

この対策ですが,なるべく早く記録を読み,精査し(精査を怠ると,間違ったことを書く可能性が増すので,急ぎながらも十分記録をよく読む。),答案構成を早くする訓練をし,時間配分をよく練ることが肝要です。
また,起案の現場で,どうしても時間が足りないと思ったときは,はやく優秀答案を書くことを諦め,残り30分程度で,とりあえず,書くべき項目だけ書き,それぞれに一言二言ずつでも言及するべきだと思います(ポイントは堅い証拠,争いのない事実や客観的な証拠を中心に拾うこと。)。
おそらく,項目ごとに点数があり,一言二言でも,それらに点数が割り振られているからです。

あと,途中答案で気をつけたいのは,表紙も含めて,すべての起案を,きちんと紐でつづることです。噂によるといくらいい起案をしても,起案すべてを紐でつづっていない人が落ちたらしいです。
これの対策は,残り事案が少なくなったときは,とりあえず,白紙の用紙も含めて,紐につづり,紐を結んでから,起案を続けることです。
白紙が残ったら,白紙部分を破って外したり,白紙部分をバッテンできたりできますし,最悪「以上」と書いていれば,途中答案扱いされません。


次に(2)の落ちるパターンに対する対策ですが,

①できない人は,基本的に他の修習生や教官が手を差し伸べてくれますが,やる気のないテンションが低い人は,どの試験でも共通ですが,落ちやすいです。
なるべく,二回試験人対するテンションを高め,起案能力をつけ,いい人になり,手を差し伸べてくれる友だちを作るべきです。

②テンパりやすい人は,任官,任検希望以外も,テンパらないように,十分,危機管理をすべきでしょう。

③の相談できない人,一匹狼タイプは,他の人がどう書くかわからず,あるべき結論を間違えたり,点数にならないことを書いたりします。
こういう人はつらいでしょうが,友だちをなるべく多く作ったり,他の人の起案を見せてもらったり,他の人と起案終了後合議したりしないと,落ちる可能性が増します。

①~③の条件に合った人の多くが落ちるわけではありませんが,落ちる可能性が人より高いことを自覚して,対策を練っておく必要があるでしょう。


二回試験対策が早く万全にできれば,修習や就職活動にそれだけ専念できます。


3 修習の実

いい実務家になるためには,実務修習中,どれだけ,修習に集中できるかにかかっています。
そのためには前述のとおり,就職活動や二回試験対策をできるだけ万全にした方がよいでしょう。

これらが万全でなくても,うまく切り替えて,修習には集中する必要があります。

修習の実をあげることは,二回試験対策や就職活動にもつながりますが,何より,二回試験合格後,就職した後,実務家として,早く一人前になることにつながります。

そのためには,内部的に,配属中の実務3庁会で,いかにその実務家を見て,実務家と議論し,あるべき法曹像を固めるかと,外部的に,配属中でない他の3庁会の実務家をよく観察し,客観的にあるべき法曹像を固めることが,肝要です。

つまり,内部的に,法曹実務家の本音や思考パターンを観察し,外部的に,いい法曹は何かをよく見て,自分なりにあるべき法曹像の基本を徹底的にたたみこむべきです。

こういった基本ができていると,実務家になって道に迷っても,基本にすぐに戻ることができるので,自分を見失わず,失敗が少なくなり,いい実務家になれると思います。

あと,忘れてはいけないのが,社会勉強です。
法曹実務家の基本は,事実認定能力が大事ですが,事実認定能力の基本は,「経験則」です。
なるべく多くの社会勉強をしたり,法曹以外の人の考え方や行動をよく観察し,自分の血肉にすべきでしょう。
これは,実務家になっても同じで,おごらず,謙虚に人の話を聞けるかが問われます。


5 その他

まず,受験生も含めてですが,この業界に入る以上,勉強をしないことを諦めること,楽をすることを諦めることが大事だと思います。
もちろん,趣味や遊びまで捨てる必要はありません。うまく仕事・勉強と遊びのバランスを取る必要があると思います。
(費用対効果は重要ですが,努力や苦労をおそれてはいけません。)

今の修習生は,大学・法科大学院時代の奨学金等借金,修習中の貸与制により借金に苦しんでいると思います。
もし就職に失敗したなら,これらの借金をどうするかについて,真剣に考えるべきです。
ただ,保証人問題が残ってしまいますが・・・・


この記事によって,多くの修習生が救われることを,切に願います。



平成18年の司法修習生考試(二回試験)の合格発表

2006年09月29日 | ④司法修習について
平成18年9月28日午後5時15分,第59期司法修習生の二回試験の合格発表がありました。

私は,たくさんの人に支えられ,なんとか二回試験合格しました。
応援して下さった皆様,本当にありがとうございました。

晴れて10月3日から弁護士になれます。

応援して下さった皆様のためにも,今後もいい弁護士になるべく精進を続ける所存です。

今年の二回試験は,合格留保者(追試あり)97人,不合格者(追試なし。編入試験の後60期の後期修習に合流)10名,合計107人が落ちました。
今までの最高記録は2年前の57期ですが(合格留保者43人,不合格者3名),その2倍以上の大差をつけ,前代未聞の人数です。

今日の夕方に発表がありましたが,今実務修習をしている旧60期の修習生,これから修習に入る新60期の修習生の方々は,その情報を知り,戦慄をおぼえられたに違いありません。
これ以上の二回試験落ちを出さないよう,是非とも勉学に励み,必要以上に精神的に追い込まれないよう勉強とプライベートをバランスよくこなして頂きたいものです。
落ちないための極意は(私の主観),どういう起案がよくて,どういう起案がダメかを十分理解すべく,仲間同士の情報交換を密に取り,後期起案でいろいろな失敗をし,あと,勉強以外のところで仲間とほどよく息抜きをすることだと思います。あと,落ちる人が増えたと言っても,落ちる方が少ない試験なので,人と違う奇抜なことを書かず,みんなが書きそうなことを書くことでしょうか。どちらにしろ,仲間との情報交換は不可欠でしょう。

60期以降の方は,決して今回の結果を悲観ばかりせず,頑張って頂きたいものです。

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司法研修所の寮について

2006年09月27日 | ④司法修習について
司法研修所には,司法修習生用のいずみ寮と裁判官・司法研修所教官用のひかり寮の2つの寮があります。

いずみ寮は,A棟とB棟に分かれます。
A棟は,1階39部屋,2階から7階まで各72部屋の個室があり,B棟は,1階13部屋,2階から7階まで各24部屋の個室があります。合計すると最大624人の修習生を収容できます(但し,数室の障害者用の個室があるので,全室埋まっている訳ではありません。)。
各個室は,6畳一間で,ユニットバス,エアコン,小型の冷蔵庫,電気スタンド,本棚,机,いす,クローゼット,電話(内線,外線兼用),ベッド,枕,マットレス,掛け布団,毛布,風呂用の足ふきマット(タオル地)が備え付けてあり,半畳程度の広さのベランダがあります。テレビアンテナの差込口はありますが,テレビはなく,台所もありません。
また,個室以外には,給湯室,ランドリー,リネン室,談話室,セミナー室,資料室,
リネン室は,各階にあり,枕カバー,布団カバーが置いてあり,これらは使い放題です。
給湯室も各階にあり,給湯器,冷蔵庫,電子レンジ,オーブントースターがありますが,ガスレンジなどはなく,寮で本格的な料理をすることはほぼ不可能です。
ランドリーも各階にあり,洗濯機,乾燥機,アイロン,アイロン台,掃除機が置いてあります。
談話室は,A棟には各フロアに,B棟には,半分くらいのフロアにあり,寮で飲み会などをするときなどに使ったりします。使用は午後11時まで。
資料室は,いわゆる小型の図書室で,A棟・B棟に各1室ずつあります。法律関係の本や雑誌がそこそこ置いてあります。24時間使用可。本の閲覧だけでなく,本を借りることもできます。私は判例・学説などの調べ物に結構使っていました。
セミナー室は,自習やセミナー等をする部屋で,A棟,B棟に点在しています。使用は午後11時まで。
A棟もB棟も,1階にロビーがあり,ソファー・新聞・雑誌・テレビ等が置いてあります。
コピー機,自動販売機(パン,つまみ,カップラーメン,ジュース,アルコール,たばこ)もあります。
あと,売店とクリーニング屋もあります。本屋・食堂は寮にはなく,司法研修所内の図書館のある棟にあります。
我々59期の後期修習中の8月からロビーとセミナー室と資料室に,インターネットのホットスポット(NTTコミュニケーションズ)があり,無線LANサービスが受けれるようになりました。
自転車が2,30台あり,寮生は自由に使えますが,平日の夕方,休日の朝にすぐなくなり,なかなか思うように使えません。
寮の出入口はオートロック式で,通退所時間と研修の昼休憩以外は,出入りに暗証番号が必要です。研修のある時間(昼休み以外)は出入りが原則禁止ですが,忘れ物等したときは,研修所の許可があれば出入りすることができます。
家賃は1日500円です。
いずみ寮については大体こんな感じでしょうか。

ひかり寮は,個室の広さは,いずみ寮の1.5倍あるそうです。修習生は原則入ることはできません。

われわれのときは,修習生1500人が一度に司法研修所で修習していたので,寮に入れる人は,東京,埼玉在住の人のほぼすべてと千葉・横浜在住の人の多くが寮には入れず,2時間以上かけて通所する人も結構いて,少しかわいそうでした。

寮の入寮手続は期限に遅れると,絶対に受け付けてくれません。住宅補助は,自分の修習地以外の土地では出ないので,寮に入れないと,経済的にかなりきついことになります。
毎年,合格後修習開始前に入寮申込期間中に旅行に行ってしまっていて申込を出せなかったなど,うっかりしていて寮に入れないという人が結構います。
新しく修習生になられる方は十分気をつけ,期限は守るようにしましょう。

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今年の二回試験

2006年09月20日 | ④司法修習について
59期司法修習の二回試験について書きます。


具体的に問題や自分が書いた答案について書くと,答案内容が特定されるおそれがあり,特定答案(不正行為)扱いされるおそれが全くないとはいえないので,ここではまだ書かないことにします。

二回試験は,正式には,「司法修習生考試」という名称で,司法修習生考試委員会という司法研修所とは違う組織が主催する法曹資格試験です(厳密には司法修習の卒業試験ではない)。

採点者は,司法研修所の現教官(全員かどうかは不明)と元教官等その他外部の方々。

論文式筆記試験と口述試験に分かれています(来年からは口述試験なくなるらしい)。

試験会場は,司法研修所の各クラスの階段教室と中教室ですが,それぞれの人ごとに「着席番号」を振られており(受験番号は別にあります),必ずしも自分のクラスの教室で受けるわけではなく,同じクラスの人に囲まれて受けるわけでもありません。

合格発表は,9月28日の3限の授業終了後に各教室などで掲示されるそうです。
不合格者及び合格留保者の受験番号が掲示されるそうです。
ちなみに受験番号は,全クラス合わせたあいうえお順でふられているようです。

筆記試験は,まず,9月5日(火)の教養試験から始まりました。これは,1,2限の講義の後,午後3時20分に自分の受ける試験室へ集合して,試験時間は午後4時から6時まで2時間。

次の日から,水木金と刑事弁護,刑事裁判,検察,土日をはさんで,月火と民事裁判,民事弁護でした(他の年は順番は違うとの噂)。

集合時間は,5科目とも午前9時45分,試験時間は,午前10時20分から午後5時50分までの7時間30分。
後期のフル起案より,開始時間が20分遅く,終了時間は1時間遅く,40分長いことになります。

昼食は,午後12時から1時まで,自席で取ることになります。この間は厳密にいうと昼休憩らしいですが,記録を読んだり,答案作成してもいいことになってます。
弁当は,食堂で予約して毎朝取りに行くか,自分で外で買ってくるかで,食堂は使用できません。
昼休憩以外でもアメ等軽いお菓子や飲み物を試験中取ることは許されています。

司法試験とは違い,トイレには試験官はついてきませんが,試験会場内のいたるところに監視員が座って,見張っています。
試験時間中は,トイレやゴミ出しは自由にいけますが,階段,エレベーターの使用は禁止され,他のフロアに行くことできません。
また,喫煙をする人も,予め登録しておけば,喫煙所のあるフロアで試験を受けることができ,試験時間中自由に喫煙所に行き喫煙することができます。
もちろん喫煙所にも監視員はいます。

口述試験は,9月14日,15日,19日の3日間のうちの2日間です。14日,15日で終わった人は,事実上16日から21日の講義までお休みになります。
詳しいことは,来年からはなくなるという話を聞いたので書きません。


次に,二回試験前に流れる噂について書きます。

二回試験前には,色々な人が出題予想し,何が出るかについていろいろ噂が出回ります。

そして,実際に二回試験を受けてみて,噂について言えることは,概ね半々くらいの可能性で出るということでしょうか。
しかし,微妙に似て非なる問題も出ますので,噂に引きずられて,全く違うことを書かないよう十分注意しなければなりません。
実際,我々の二期前の57期のときも,民事裁判で,訴訟物を検討する際,「よって書きを信じるな」「賃貸借終了に基づく返還請求権が出る」という噂が流れ,それに引きずられて,「よって書き」を信じず賃貸借終了で書き,たくさんの人が落ちたと言われています。
「よって書き」とは,原告が訴状の請求原因の結論部分で,自分の請求する訴訟物を明らかにしたりするところです。
処分権主義がある以上,裁判所は原告の訴訟物設定に拘束されますので,訴訟物についての釈明や請求の変更等がない限り,原則訴訟物は「よって書き」のとおりになります。
そして,実際にはこのときは,所有権に基づく返還請求権が出題され,無理に構成すれば,賃貸借終了で書けないこともなかったそうです。
ただ,賃貸借終了と所有権では,攻撃防御の構造が全く違うので,採点者も点のつけようがなく,多くの人が落ちたようです。

今まで二回試験を落ちる人というのは,
①その問題についての出題者が意図する問題点以外のことを書いてしまい,問題点について書いていない又は時間不足で書けなかった人,
②途中答案の人(どの程度の途中答案で落ちるかは不明),
③検察で起訴状を書いていない人(これだけでは直ちに落ちないが,落ちる可能性は高くなる),
④刑弁で被告人の無罪主張に反し有罪で書いた人
⑤試験中パニックに陥り,意味不明のことを書いたり,今まで書いたことを全部消して書き直して時間不足になった人,などだそうです。
あと,
⑥民弁で原告と被告を間違った人も確実に落ちます(これはやったことある人がいるかは不明)。
噂を信じすぎると,上記のようなことをすることをしてしまう可能性が高くなります。

60期以降も二回試験直前になると色々な噂が飛び交うでしょうが,勉強で押さえる程度にして,試験自体は噂どおりか十分疑いながらか,真っ白な気持ちで受けるべきです。
これは司法試験の論文試験で,予想答練などの予想が的中したときも同じことが言えます。
問題文や記録をよく読んで,試験会場で噂や予想に引きずられないようにしないと人生棒に振ることになります。

あと,後期起案は,よく過去の二回試験の問題がそのまま出ることが多いです。
二回試験は絶対大丈夫で,後期起案にいい点を取りたいひとは,予め過去問を検討した方がいいと思いますが,二回試験が少しでも不安な人は,過去問検討はしないほうがいいと思います。
予め何を書けばいいかわかっていると,そのときの起案では大筋で間違うことはなく,比較的いい点が取れますが,問題点や争点を発見する能力は伸びませんで,本番で変なことを書いてしまうおそれがあります。

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新司法修習の修習生採用選考について

2006年07月17日 | ④司法修習について
裁判所のHPに新修習最初の修習生(平成18年度新司法試験合格組)の採用の選考要領が今月頭に発表されました。
平成18年度11月期司法修習生採用選考要領*(pdfファイル)

内容については,選考資格が新司法試験合格者であること(要領には難しいことが書いていますが要はこういうことです),欠格事由,選考の方法・内容等,選考申込の期間・方法等,修習生の給料が載っています。

欠格事由や給料については現在の59期(平成18年度旧司法試験合格組),旧60期(平成17年度旧司法試験合格組)の修習生と同じでしょう。

ちなみに,新修習(新司法試験の合格者を対象として11月から開始されるもの)の第1期生をなんと呼ぶかについては,私の中では「新1期」とか「新60期」とか呼び方を統一していません。
これは正式に何と呼ぶか私がわからないからなんです。

修習が何期であるかは,法曹にとって重視されることが多いようです。
実務で色々見ていると,会合などの席次を判断する重要な一材料になることが多かった気がしますし,自己紹介等あったら多くの人が自分が何期であるかを言ってた気がします。
そう考えると,新1期という言い方では,期が上かどうかわかりにくいので,おそらく「新60期」と言い方が定着していくのかなと思います。

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実務修習終了。後期修習,二回試験について

2006年06月22日 | ④司法修習について
私が配属されていた実務庁での実務修習(民事裁判,刑事裁判,家庭裁判所,検察,弁護)が昨日6月21日終了しました。
来週の火曜日6月27日からいよいよ後期修習が始まります。
後期修習は,司法修習の総決算であり,「二回試験」といわれている司法修習の卒業試験の実施とその準備のための勉強などを行います。
6月21日から10月2日までの約3ヶ月間ではありますが,無事卒業できるよう頑張って行きたいと思います。

今日と明日は「自由研究日」で,土日と併せて,各修習生は,引越準備,実務修習でお世話になった方々への挨拶,後期修習の準備,実務修習の疲れの癒し等を行います。

二回試験の結果には,「合格」,「不合格」,「合格留保」の3種類あります。
「合格」するともちろん司法修習を終了し,法曹資格がもらえます。
「合格留保」の場合は,無給の状態で修習生を続け,11月か12月ころに追試を行うことになります。
「不合格」については,私の前の期の58期の人に聞いたところ,次の期の修習生と一緒に後期修習をもう一度やり(もちろん無給でしょうね),来年の「二回試験」を受けることになるそうです。
不合格になることは滅多になく,修習中に大病や出産をして,ほとんど勉強できなかった等特別の事情がない限りならないようです。
合格留保は,一昨年(57期)のときは40数名,昨年(58期)のときは30数名と出ており,このときは修習生は約1200人で,パーセントとしてはたいしたことはないですが,かなりの人数が落ちています。
我々59期は約1500人いますので,よほど頑張らないとかなりの50人以上落ちる(合格留保,不合格)かもしれません。
落ちると多くの場合は,内定していた就職はぶっ飛びますし,裁判官・検察官にも採用されないことになります。
私も明日就職事務所に挨拶行くので,落ちても雇ってくれるかどうか確認しておかないと安心できません(多分,法律家同士の会話らしく,賢明な君ならわかるよ的な意味を込めて,どっちともとれるような返事ではぐらかされるのでしょうね。こわー)

あと,リクエストがなくて勝手にほっとしているのですが(でも少し寂しい。),前々回の記事で書いた再現答案については,H15年度の分については締め切らせて下さい。
まあ,この時期に論文受験生が我がブログをゆっくり見ているとも思えませんが,H16年の再現答案の解説についてはもう少し締切りを待ちたいと思います。

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今年の新修習生

2006年03月13日 | ④司法修習について
今年の4月から,平成17年度司法試験の合格者約1500人が第60期司法修習生(旧60期)となります。
また,今年3月に法科大学院の第1期生既習コースを卒業し,今年5月に新司法試験を受験して合格した900人から1000人の人たちが,新1期司法修習生(新1期)となるそうです。
新・旧修習は,別々のカリキュラムで行われるそうですが,両者において各地方における実務修習が重なる時期があるそうで,そのときは約2400人の修習生が実務庁に溢れかえるそうです。
また,旧60期の実務修習は新2期の実務修習とも重なるそうで,そのときは約3000人の修習生が実務庁に溢れかえるそうです。
これは,旧修習の修習期間が1年4ヶ月(ちなみに我々旧59期までは1年半でした)で,新修習の修習期間が1年間であることから起こる現象だそうです。
修習期間が短くなり,修習生が多くなり,これからの修習は果たして大丈夫か気になります。
なぜなら,実務修習は法曹実務家が修習生に実務を間近で見せたり,判決文,起訴状等の法律文書とかを起案させたりして,それを実務家が添削したりして,教育するものだけど,実務家は既に自分自身が担当している生の事件を多数抱えており,我々のときでもいっぱいいっぱいなのにその倍の修習生を相手にすることは非常にきついと思うからです。
実務修習がおろそかになるか,担当事件がおろそかになるか,法曹実務家が過労で倒れるか・・・・。
法曹実務家の第一の使命は,国民のため担当の事件処理に全力を尽くすことなので,おそらく実務修習がおろそかになってしまうか,過労で倒れるか。
どちらにしても今後の修習が心配でなりません。

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タレント弁護士

2006年01月01日 | ④司法修習について
「行列のできる法律相談所」を見てて思い出しましたが,
去年修習で裁判所に行ったとき,あの橋下徹弁護士を2度ほど見かけました。
噂には聞いていましたが,本当にちゃんと本業の方もやっておられるのだなと感心しました。
見た目は,噂どおり芸能人の私服のような格好というか,やはり少しヨン様ぽかったように思います。テレビでしておられるようなあの眼鏡と高そうなビンテージものっぽいジーパン・・・。もちろんペ・ヨンジュンのようにやさしく微笑んでいるということは一切なかったです(ていうか裁判所でひとりで微笑んでいたら,かなり変な人です。)。

橋下弁護士の経営されている橋下綜合法律事務所は,今年10月から弁護士になる我々59期司法修習生に対して,求人をしておりました。
いろいろと噂のあるところのようですが,噂によると,その就職活動は土曜日に事務所で数組の修習生に対して面接を順番にする方式だったそうです。普通の大阪の法律事務所は,平日の夕方から(事務所の受付が終了してから),1日1組だけで(だいたい5~7人。もちろん1人のときもあれば20人以上のときもあります),事務所の説明・見学・面接等を行った後,食事会に行くというパターンがオーソドックスです。
橋下弁護士は,おそらく平日は2足のわらじで忙しすぎるので,弁護士業務少ない土曜日をわざわざさいて大勢の修習生に会っているのでしょうね。
お子様も大勢おられ,家庭生活のことを考えると,脱帽という感じです。
以上は一次面接の話ですが,二次面接以降の噂はまだ聞いてません。
ところで,橋下綜合法律事務所の求人欄には,所属弁護士2名と書いてあるですが,実際に事務所を弁護士検索*すると,弁護士は橋下先生お一人なんですよね。なんなんでしょうかね。

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修習が半分終わって

2006年01月01日 | ④司法修習について
あけましておめでとうございます。
前期修習と実務修習の2つが終わり,残すところ実務があと2つと後期修習になりました。
早いものです。
各実務修習ともたった3ヶ月しかなく,はっきり言って配属先(法律事務所,検察庁,裁判所)の雰囲気を味わう程度のことしかできません。事件も最初から終わりまで全部見れることも稀ですし。
しかし,配属先にはその3ヶ月を逃すと二度と内部から見ることができなくなるので,もっとも積極的に内部の人と交流をして,できるだけ多くのことを吸収しておけばなあと,いつも後悔をしてしまいます。
我々法曹は,主体性が大事だと思うので,特にこういう場合積極的に色々なことを吸収すべきなのでしょうが,どうしても自分のことになると,「皆さん仕事忙しいそうでなるべく邪魔をしないように」とつい及び腰になってしまいます。
気の使い方や言葉のかけ方次第で,うまいやり方があったようにも思います。
昨年までのこういった反省を踏まえ,今年も良き法曹になるべく頑張って行きたいと思います。
あと,正月の間に「新会社法」の勉強をしようと思っています(できるのか!)。
とにかく頑張ります。頑張ろうと思います・・・。

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修習生の夢?!

2005年12月14日 | ④司法修習について
前にどこかの弁護士の本を読んだとき,弁護士になった後も司法試験に落ちる夢を結構見る人が多いと聞きました。
私も,司法試験に受かってから,司法修習生になるまでの間,何回か司法試験に落ちる夢を見ました。しかも,決まって何故か1回も落ちたことのない口述試験に落ちる夢です(論文試験は腐るほど落ちたんですが)。しかし,今年の4月に司法修習生になってからはピタッとそのような夢は見なくなりました。
と思ってたんですが,今年の司法試験の合格発表があったころから,また同じような夢を見るようになりました。それも決まって口述試験に落ちたという夢。
つい最近もまた口述試験に落ちる夢を見たのですが,今度は,2年連続口述に落ちるというもので,絶望に打ちひしがれてしまいました。絶望の状態で目が覚め,だんだん頭がはっきりしてきて,やっと自分が司法試験に最終合格をし,現在司法修習生であることを確認し,ほっとしました。
おそらく弁護士になっても続くのでしょうね・・・・。
ちなみに,上述した弁護士の本によれば,イソ弁(*)が独立して,自分の事務所を持つと,不合格の夢からお金の勘定をする夢に変わるのだそうです。

(*)イソ弁・・・居候(いそうろう)弁護士の略。従業員弁護士のこと。最近では,「居候」は聞こえが悪いので,「アソシエイト弁護士」とか「アソシエイト」と言われるようになってきています。かっこいい言い方ですが,意味は同じです。

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修習の風景~ある前期修習の一日~

2005年11月22日 | ④司法修習について
修習生になって,一度も修習の日記を掲載したことがありませんでしたが,今年の4月中旬の前期修習の初めころに一度書いた日記が偶然見つかりましたので,掲載しようと思います。

朝8時半におきた。
事前配布されている刑事弁護の資料を今日の授業の準備のため読んでおく必要があったので読んだ。
土曜に買ったパンを2つ食べ,仕度をして,9時30分ごろ登庁。
いつものとおり教室のある西館の1階で登庁の判を押して教室のある階に上がる。
教室では毎朝の私の恒例行事であるいずみ寮(研修所敷地内にある修習生の寮)の下駄箱で取ってきた日経新聞を読む。
10時授業開始。今日の1限目は,刑事弁護。グループ討論のあとにグループ起案をする。
焼肉屋で酔っ払い同士のいざこざから発展した傷害事件についての弁護方針を考えるというものである。
被告人は一貫して被疑事実を否認している。弁護人としてどうすべきか。
グループは,私含めた男5人であった。
最初は,こいつは黒か白か話していたが,相手がやくざっぽく証言に信憑性がないこと,被告人が一貫して無罪の主張をしていることから,弁護人としても無罪の主張をすることに,全員が一致した。
冒頭手続の罪状認否で被告人に何を言わすか,その後の弁護人の陳述で何を言うか,検察官の提出書類について何を言うかについて起案し,11時50分に提出した。
昼休みになる。
昼は,弁当を食べた。おなかがすいていたので,500円の弁当を食べる(他に300円の弁当もある)。
500円の弁当は,おかずの種類が非常に多く,非常にボリュームがあって,満腹になる。
満腹になると午後の授業は眠気との戦いになる。
今日の2.3限は,民事共通講義。民事裁判教官と民事弁護教官のコラボレーションである。
1月にもらった白表紙の事件の再現ビデオを見る。
民事裁判教官室制作ということだが,当事者本人2人以外,みんな(裁判官3人と弁護士2人)演技がとても下手である。
特に右陪席(裁判官のナンバー2,裁判長から見て右に座っている人)の女性の裁判官は,セリフが棒読みであった(後から聞くとビデオ作成時の民事裁判教官が一部出演しているとのこと)。
まず,1時間見て,10分休憩。また,1時間続きを見て,その後,アンケートに答える。
4時から,講義再開。民事裁判の第一審手続を裁判所・弁護士双方から見た視点でのコメントを加えながら,解説していく。非常に興味深く面白い。
研修所の授業は,すべて非常におもしろく飽きない(人によるかもしれませんが)。研修所に来て本当によかったと,授業中何度も思う。また,研修所でこのように授業を受けている自分にまだ研修所に来て2週間くらいしか経ってなく慣れていないせいか,ときどきここで授業を受けている自分自身になんか不思議だなあなんて思ってしまう。
4時50分,授業が終わる。
旅行委員から,クラス旅行の場所,費用,費用の徴収日の告知がある。
また,先日,刑事弁護の授業でグループ起案した保釈請求書の結果が返ってきた。初めてのグループ起案で,あまり踏み込んだ議論もできず,いささか出来には不満の残るものであった。
いろいろとコメントがたくさん書かれている。丁寧な添削であった。出来は案の上あまりよくないようだった。
3人のグループ起案だったので,他の2人用にコピーを2部した。
そして,1階に退庁の判を押しに行き,郵便局に10000円下ろしにいった。
今日の放課後は,健康管理(スポーツ大会のこと)のソフトボールとバレーボールの練習である。
ソフトとバレー希望者がそれぞれグランドと体育館に分かれ,練習する。
両方とも希望することが可能だったので,私は運動不足解消のため両方希望した。
まずソフトボールの練習をしようと,寮でジャージに着替えてグランドに出ると,すでに多くの人が集まっていた。
教官が二人も来ていた。
準備運動をし,その後キャッチボール。
約10年ぶりにソフトボールを握り,慣れないため,なかなかうまく投げれない。
何球か投げているうち慣れてきて,何とかうまく投げれるようになった。
その後,ノックをして,2チームに別れ練習試合をした。
人数が多いため,なかなか打順が回ってこないが,2回打てた。
一打席目は,狙い通りうまくピッチャ返しをし,センター前ヒット。
2打席目は,すでに6時半を回り,日が沈んで何も見えなくなったため,三振した。
暗くなったため練習を終わりにし,用具を片付けに行った。
バレーボールの様子を見に,体育館に行く。
多くのソフト組みも合流しており,かなりの人がいた。教官も一人来ていた。
試合形式でやってて楽しそうだ。私も混ぜてもらった。
7時15分くらいになったので,一応解散した。
バスケをして遊ぶ者,バドミントンをして遊ぶ者,そのままバレーをして遊ぶ者などみな好き好きに分かれた。
教官が晩御飯でも何人かで食べにいかないかというので,私はこれについて行こうと思った。
7時45分に研修所北門に集合することになった。
メンバーは,教官と私を含めた修習生5名。
最初は,研修所から徒歩10分くらいにあるファミレス「とんでん」に行こうという話だったが,裁判官任官希望の人が,教官が帰宅しやすいように,和光市駅付近で食べようと気を遣って提案したため,和光市駅付近で食べることになる。
和光市駅にいくため,バスに乗る。
研修所から和光市駅にいくバスは,料金前払いである。ちなみに和光市駅から研修所に行くバスは,料金後払いである。わけがわからない(間違った認識。当時はこのおように思っていた。後から知ったが,バス会社が2社あり,会社によって前払いか後払かが違うそうだ。)。
和光市駅につき,どこに行こうかという話になったが,教官は居酒屋に入り,修習生と語りたかったようだった。
そこで,和光市駅付近の数多くある居酒屋のうちのひとつに適当に入る。
とりあえずみんな生中を頼むことにし,乾杯した。みな久々の運動でお腹がすいていたので,酒より料理だった(私は生中1杯とウーロン茶2杯飲んだ)。
焼き鳥,おでんの盛り合わせ,サラダ,揚げ出し豆腐,枝豆などを頼み,食べた。
話題は,裁判員制度,司法制度改革,出身大学のこと,司法関係のドラマ,将来の希望,教官の刑事裁判の経験談,あるべき弁護士像,裁判官の魅力,昨日提出した自宅起案のこと,成績のことなど話は尽きなかった。
教官を中心に色々な楽しい話を聞き,時間が経つのが早い。時間が遅くなってやばいなと思いつつ,あっという間に11時30分になり,解散ということになった。
料金は一人2500円だった。
店を出たあと,同じビルの別の店で飲んでいた5,6人の同じクラスの人に会う。
次行くぞ誘われたが,明日の宿題があるので断って帰ることにした。
一人はそのまま引っ張られて行った。どこかに消えていった一人を除いた残り2人と寮まで歩いて帰った。
そして,寮に帰り着き,暇なので日記を頑張って書く。書いているうちに盛り上がりしょうもないことをたくさん書いてしまう。
これから,とりあえず明日の宿題を終わらせ,明日の授業の準備をして,3時半ぐらいに寝る予定である。

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司法修習とは

2005年04月27日 | ④司法修習について
以下は,私が適当に書いた定義です。
正しくは,
http://courtdomino2.courts.go.jp/kenshujo.nsf*
で調べてみてください。

【司法修習】
法曹(裁判官,検察官,弁護士など)としていずれの道をえ選ぶこともできるように,法律実務についての一定水準の知識と技能,さらには,法曹としての職業意識と倫理感を身につけることを目的としたものです。

【司法研修所】
司法修習や裁判官の研修を行う施設です。最高裁の下に所属するお役所のひとつです。埼玉県和光市にあります。

【修習科目】
民事裁判,刑事裁判,検察,民事弁護,刑事弁護があります。
略して,民裁,刑裁,検察,民弁,刑弁といいます。あと,民事共通(民裁と民弁の合同講義)や刑事共通(刑裁,検察,刑弁の合同講義)が少しあったり,ほんの少しですが,選択科目や特別講義があったりします。

【クラス】
我々第59期司法修習生(H17年度採用)は,全体で丁度1500人いて,1クラス75人の20クラスあります。
 
【教官】
基本的に各クラス各教科1人ずつの担任がいます。つまり,民裁,刑裁,検察,民弁,刑弁の5人の教官が,クラスの担任になります。
ちなみに,民裁は主に民事裁判をやっていた現役の裁判官が,刑裁は主に刑事裁判をやっていた現役裁判官が,検察は現役検察官,民弁・刑弁は現役弁護士がなります。
裁判教官・検察教官は,教官になっている間は,それぞれ元の職務は行わず,基本的に司法研修所に毎日出勤しているそうです。司法試験の考査委員を兼任している教官も多いです。
弁護教官は,現役バリバリの弁護士が兼業でやってます。基本的に講義のある日のみきているそうです。

【いずみ寮】
司法研修所内にある司法修習生のための寮(前期修習,後期修習中に遠方の修習地の人が入寮します。
定員が600人から700人のため,大半の修習生が入寮できなくなりました。入寮手続を怠ったりすると入れません(申込期限厳守)。仕方なく,和光市付近でマンスリーマンションを借りたり,自宅(通所に2時間近くかかる人もいるとか)や下宿から通っている修習生も多数います。

【前期修習】
修習生のなったばかりの4月から6月までの約3ヶ月間,実務修習に行くための最低限の基礎を教える修習です。

【実務修習】
修習生が約1年間各地方に配属され,その地方の裁判所,検察庁,弁護士事務所内で,その実務を実地で学びます。順番は人それぞれですが,民裁3ヶ月,刑裁3ヶ月,検察3ヶ月,弁護3ヶ月実務修習をします。

【後期修習】
実務修習終了後,司法研修所の卒業試験である通称2回試験(正式名称知りません)を受けるための準備をするための試験です。

【二回試験】
司法修習の卒業試験,受かると晴れて法曹,つまり裁判官,検察官,弁護士になる資格を与えられます。
法曹になるための一定水準に達しているかを測ります。ほとんど落ちないが,去年(57期)は約1200人中約40人落ちました。といっても追試があります。追試になると確か約3ヶ月法曹実務家になるのが遅れます。また,そもそも追試も受けれない人や追試も落ちた場合もあるそうですが(実際いるそうですが),その人たちがどうなるかは,よくわかりません。こわいですね。

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合格発表後司法修習前の状況

2005年03月24日 | ④司法修習について
H16年度司法試験は,11月10日(水)に合格発表がありました。
10月8日に論文の合格発表があり,口述試験は論文合格者のうち約1割しか落ちないので,受かっても論文発表よりうれしくはないですが,やはりうれしいものでした。というより安心しました(なんか言葉ぐだぐだですね。)。
合格発表のイベントとしてまずあるのが,各種合格祝賀会です。
予備校の合格祝賀会ですが,確か11月12日にLEC,14日に辰巳,20日に伊藤塾とあったと思います。今年から早稲田セミナーは合格祝賀会なくなりました。
辰巳については事前の予約は不要ですが,LEC・伊藤塾については,合格発表前に予約が必要です。
近畿では,近畿弁護士会連合会(近弁連)主催の祝賀会が12月9日にありました。

また,口述試験で受講料の代わりにいわゆる義務採点を選んだ場合は(辰巳は義務採点しかない),11月になると義務採点が始まります。

関西では,合格発表後から合格祝賀会や口コミを通じて,合格者の交流を目的とした任意団体「関西の会」が人集めを始めます。今年は,有志が11月下旬頃集まり幹部を決め,12月5日に結成集会(コンパ)を行いました。私は,法律事務員の仕事が忙しいので,名前だけ加入で,結成コンパには参加しました。その他のレクリエーションや社会見学・講演会企画など多々ありましたが,ほとんど参加できませんでした。

最近では,東京の渉外系の事務所を初めとして,青田買いが進んでおり,なんと研修所入所前の3月までに内定が決まることが増えているそうです。また,合格者増大の影響から,合格者も就職に不安を感じており,合格直後から,リクルート活動を始める人が多いです。
関西でも,東京に負けじと大阪の大事務所等は,LEC・伊藤塾の合格祝賀会や近弁連の合格祝賀会でも,リクルート活動をはじめ,合格者に名刺を配りまくります。
東京や大阪の法律事務所に電話・メール・HPからのエントリー等で事務所訪問の申込をし,事務所訪問しまくる合格者も多数おり,正直驚きました。

また,近畿弁護士会連合会では,事前研修を行っており,裁判傍聴・事務所研修を申し込むことができます。この事務所研修先にそのまま就職することが多いという噂から,多くの合格者が事前研修に申込をします。

研修所の入所手続については,
まず,11月下旬までに修習生採用の申込をします(実務地の希望はこのとき出します)。
それから12月中旬頃に,採用内定。なお,今年から研修所に面接や身体検査に行くことはなくなりました。問題ある人だけ,1月中旬に個別に研修所で面接があるようです。
年が明けて1月中旬に修習地の決定や多量の各種案内書類が自宅に届きます。
1月下旬に研修所内の「いずみ寮」の入寮希望の申込期限があり,また,身上報告書・写真等各種書類を提出します。
また,1月下旬に,研修所の教科書,いわゆる「白表紙」を最寄の裁判所に取りに行きます。このとき,裁判所が傍聴や裁判官室等の見学をさせてくれるそうです。私は仕事があったので,白表紙をもらったらすぐに帰りました。
いずみ寮の入寮決定も2月中旬に届きます。
そして,2月下旬にも各種手続書類を提出します。
今年は,いずみ寮の入寮日4月3日で,入所日は4月4日です。
なお,研修所に入る前には,資料を読んだ感想文や刑事裁判のアンケート等の宿題が出ます。
また,白表紙もほとんど全部読むようにという指示が出ます。入所するとすぐに小テストもあるそうです。

私は仕事しながらで忙しかったですが,最近は合格者増大のため予備校のバイトも激減し,多くの合格者が暇をもてあましているようです。多くの合格者は,旅行とかいったりしているそうです。

ざっと殴り書きをしましたが,大体修習前ってこんな感じでしょうか。

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