弁護士NOBIのぶろぐ

マチ弁が暇なときに,情報提供等行います。(兵庫県川西市の弁護士井上伸のブログです。)

うその説明で集金か、投資コンサルを家宅捜索

2011年01月12日 | ⑨投資被害
先週,標記の題で下記のニュースがありました。


http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110106-OYT1T00483.htm

福岡市博多区の投資コンサルタント会社「ワールドゲートカンパニー」が顧客に対し、「絶対にもうかる」とうその説明をして、原油や金などの海外先物取引に勧誘した疑いが強まり、福岡、宮城両県警は6日、特定商取引法違反容疑で本社や仙台市の支店などを捜索した。


 捜査関係者などによると、同社は海外先物取引を勧誘する際、「40万円が100万円になる。絶対にもうかる」とうその説明をして、北九州市の女性から120万円を振り込ませた疑いなどが持たれている。福岡県警は、同社が2008年頃から、九州や東北を中心に全国の高齢者らから、少なくとも20億円を集めていたとみて調べている。

 同社を巡っては、「話の内容が分からないまま手続きを進められて投資したが、金が返ってこない」「電話で勧誘され、次々と投資したが、金が回収できない」といった相談が08年度に10件、09年度に38件、10年度34件、福岡県内の消費生活センターに寄せられている。宮城県のセンターには10年11月までの約1年間に12件寄せられ、計4000万円を振り込んだ相談者もいたという。

(2011年1月6日14時48分 読売新聞)



この会社は,大阪にも支店があり,私も2回ほど被害者側代理人として戦いました。
神戸先物研究会,全国先物研究会でも,被害報告が少なからず上がっていた会社で,私も個人的に要注意だとマークしていた会社でした。

ニュースでは,「原油・金などの海外先物取引」を勧誘したと言っていますが,私が実際にやった事件では,海外商品先物オプションの買いの相対取引(あいたいとりひき)でした。

※海外商品先物オプション取引・・・一定の海外の商品先物を一定の時期(期限)に,一定の額(権利行使価格。ストライクフライスともいう。)で買ったり,売ったりする権利を売買する取引。
※※相対取引(あいたいとりひき)・・・取引所などを介さず、売り手と買い手が直接に取引すること。銀行対銀行、銀行対顧客といった1対1の取引。取引価格も、取引の方法も、当事者同士の交渉によって決まる。



オプションの価値は,実質的価値と時間的価値とに分類され,前者は,先物の時価とストライクプライスの差(マイナスの場合はゼロとなる)であり,後者は,簡単にいうと,先物の時価がストライクプライスに達して利益を出す期待値のようなものです。
つまり,オプションの買いは,商品先物の時価が決められた期限にストライクプライスに届いていなければ,実質的価値も時間的価値もゼロになってしまい,投資したお金が全部飛んで行くハイリスクな取引なのです。
そして,オプション購入時の先物の時価がストライクプライスに届いていない状態で,その価格の幅が大きければ大きいほど,ストライクプライスに達して利益が出る可能性は低くなり,それだけ価値が低くなります。

この会社は,利益が出る見込みのかなり低い,ほとんど価値のないオプションを客に売り付けてるということを,少なからずやっていたようです。

また,相対取引で,客と会社の1対1の勝負なので,客に利益が出てしまうと,逆に会社が損をしてしまい,会社が困る取引だったのです。
にもかかわらず,この会社は客に「これを買った方がよい。」「あれを買った方がいい。」とアドバイスをしていたわけです。

それも,相対取引で,自社の取引でもあるのにかかわらず,顧客に対し安くない手数料を取った上でです(手数料はオプションの数量に対し一定だったのですが,売り付けたオプションに価値がなかればないほど相対的に手数料が高くなってしまいます。)。

よくわからなくても,何となく変な話って思いませんか。

この海外商品先物オプション取引の相対取引は,商品の仕組みとして,非常に問題がある取引だと私は感じていました。


今年の1月1日から,先物取引を規制する法律である「商品取引所法」が改正され,名前も新たに「商品先物取引法」に変わり,今まで規制がほとんどなかった「海外商品先物取引」「海外商品先物オプション取引」「ロコ・ロンドン貴金属取引」も取り締まるようになりました。
その結果,この分野でも,業者が登録ないし許可制となり,無許可・無登録業者がなくなり,相対取引も,店頭取引・のみ行為が原則禁止されることになりました。

この法改正と,今回の警察の対応で,このような問題のある取引がこの世からなくなるといいのですが・・・



このブログを見て頂いている方々

2011年01月06日 | ⑫雑談
昨年1年間,このブログを見て頂いた結果を集計してみました。

閲覧合計 180250 PV
訪問者合計 95931 IP

重複もあるかもしれないですが,たくさんの方に見て頂き,本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
少しでも,世のよくなることにつながってくれればいいと思っています。
(ただ,途中で失速して,目標だった年間10万IPに届かなかったことは残念でした。もっと更新しないとなかなか難しいでしょうね。でも一度失速したものは多少頑張ってもはなかなか回復しないですね・・・)

話は少し変わりますが,
このお正月に頂いた年賀状の中に独立前の事務所の事務員さんのものがあったのですが,コメントで一番多かったのが,「ブログ見ています。」というものでした。

前の事務所の事務員さんに独立後も関心を持っていただいているのは,とてもうれしい限りです。
ただ,ブログには格好をつけたことばかり書いているので,本当に恥ずかしいです・・・
正直読まないでと言いたいところですが,こんなところで公にしている以上にそんなことも言えません。
読んでもいいけどせいぜい私には内緒で読んで下さいと言いたいものです。

匿名でやっていたときの方が伸び伸び好きなことが書けてよかったなあ・・・



1年の計は元旦にあり(去年の反省も含む)

2011年01月01日 | ⑫雑談
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

昨年の反省と,今年の目標について書きたいと思います。

【2010年を振り返って】

昨年の年末は本当にバタバタしました。

一昨年の年末は独立準備でバタバタしていたのですが,今回のバタバタはもっぱらの事件でした。それもほとんど消費者被害・投資被害。

独立して丁度1年が経ちましたが,昨年1年間は,事務所の経営もまずまずで,消費者被害,投資被害の活動はある程度自分の中では満足の行くようなものであったように思います。

受任した消費者被害事件・投資被害事件の解決,某市の消費生活センターの顧問の仕事,近畿弁護士連合会の夏季研修会の参加,兵庫県弁護士会の消費者保護委員会の活動(委員会の定例会の出席,消費者事例研究会の司会,夏季研修会の発表,保険法勉強部会の参加,武富士管財人に対する意見書の原案の起案など),兵庫県弁護士会消費者救済センターの幹事の仕事,兵庫県弁護士会尼崎支部の消費者被害対策PTのオブザーバー参加,神戸先物証券被害研究会の活動,全国先物被害研究会の全国大会の参加,全国証券問題研究会の全国大会の参加,大阪証券被害研究会の例会の出席など,文字にしてみると思っていた以上にたくさん活動していたなあと改めて感じます。

しかし,昨年は,消費者弁護士・先物被害弁護士にとって,非常に痛恨の出来事がありました。
秋田の弁護士の津谷裕貴先生という消費者被害・先物被害の巨星が亡くなられたことです。
先生の偉大な功績を無駄にしないよう同志とともに頑張っていきたいです。


昨年6月に,裁判員裁判を早くも経験しました。
支部で弁護士をやっていると,多くの人に自分の裁判を見られることがなかったので,こういう緊張する裁判を久しぶりに経験できたことはよかったと思います。ま,裁判員裁判自体は反対ですがね。どうせやったのなら,何かしら自分に糧にしないといけませんよね。


事務所の場所的な問題から,移動時間が多く,事務所にいる時間が少なくて,いろいろな人に連絡が行き違いになったり,優先順位の付け方が下手で,連絡や処理が遅くなって,多くの方にご迷惑をおかけしたのが,昨年の大きな反省点です。

もっと効率的な処理をしないといけませんね。


【2011年の目標】

今年の活動は基本的には昨年と大きく変わりません。
なので,大きな目標は昨年以前とそんなに変わりません。

小さい目標をあえてあげるならば,迅速かつ効率的な仕事の処理,回収率のさらなる向上,気を長く持つこと(私結構短気で,依頼者,相手方その他関係人と怒鳴り合いのけんかをよくします。),仕組み債やデリバティブ関係の証券被害事件をやること,金融商品の外務員二種資格またはFP技能検定2級を取るでしょうか。

回収率をあげることは,今まで諦められていた被害事件を救済できることになるからです。究極的には,「井上弁護士が相手なら,仕方がないので,すぐに支払います。」などと相手方に言われるまでになりたいものです(ここまで行くには何年かかるかわからないので今年の目標ではないですが)。

仕組み債(仕組み投信も含む)やデリバティブ関係の証券被害事件をやることについてですが,意外に小口でも,銀行や証券会社に勧誘されて,損をしたケースが隠れているようです。
皆さん,自己責任とすぐに諦めているからか,ほとんど表には出てきていませんが,高齢者に対する定期預金からのリスクのある仕組み商品への乗り換え事案がかなり隠れているようです。
証券被害も隣の大阪に負けないくらい頑張って,実績を作って行きたいです。

金融商品の外務員二種資格・FP技能検定2級の勉強は,前者は投資被害事件,後者は投資被害事件だけでなくその他の事件に役立つ知識に役立つのでは考えています。問題は勉強時間をどうやって作り,勉強のペースをどう保つかですね。


ま,こんな感じでしょうか。
まだまだ,人間としても,弁護士としても,未熟なところがたくさんありますが,頑張ってますますの人間力,弁護士力の向上に努めたいと思います。
今年もよろしくご指導賜りますようお願い申し上げます。