弁護士NOBIのぶろぐ

マチ弁が暇なときに,情報提供等行います。(兵庫県川西市の弁護士井上伸のブログです。)

投資被害事件の業者の破産と被害回復

2011年06月26日 | ⑨投資被害
投資被害における業者,特に,未登録で営業していた業者,しばしば倒産します。

被害者を,騙すだけ騙して,取れるだけ取って,自分たちの経営状況が悪くなったら,さっさと倒産(破産,自主廃業等)をして,逃げようとすることがあります。

普通の弁護士はこういう場合回収ができないと諦めるのでしょうが,我々先物被害救済弁護士は,このような悪者は許せないので,諦めず,何とか被害回復できないか考えます。

会社は,破産するとなくなってしまうので,逃げられてしまいますが,騙した張本人や代表者などの関与者に対する責任追及を行います。悪いことをしたのに,そう簡単には逃がしません。

私は,3度ほど,破産した会社の投資被害の被害回復事件を担当したことがあります。
3度とも,全額ではないですが,ある程度回収しています。
回収方法は,企業秘密です(笑)。

このような事件をやっていると,相手方個人と直接話をする機会が多く,以下で紹介するような会話になることがあります。
興味深い内容ですので少しご紹介します。
(守秘義務の関係上,事件の内容や依頼者に関する情報はかなり割愛させていただきますが,ご理解ください。)



10回の分割払いの訴訟上の和解をして被害金を回収していた会社がたった2回の支払いをしたところで突如破産して,現在,関与した従業員への強制執行を行っています(私としては,こんな和解したくなく判決を望んでいましたが,依頼者が強く和解を希望したので,和解をしました。)。
強制執行がうまくヒットして,その元社員からうちの事務所に電話がかかってきました。

その元社員いはく,「私は会社が破産する前に定年退職していますし,他の者と比べ歩合給を全然もらっていないのですが・・・」

私はその言葉を聞いて,相変わらず被害者のことを考えず,自分のことばかり言おうとしたので,ついブチギレてしまい,
「あなたは,あの商品がほとんど儲らず損をする危険なものだと知っていたでしょう。知らなかったとは言わせませんよ。」

元社員「・・・・」

私「○○さんがそんな危険なものであることを知らず,営業の人に儲かると思いこまされ,ノリノリになっているのを,あなたは見ていたでしょう。」
「あなたはそんな客を止めるべき立場にあったのに,それをあえて放置したでしょう。」
「あなたが○○さんを止めてさえいれば,○○さんは●●●●万円も損しなかったですよ。」
「あなたも営業の者たちと同罪ですよ。」

元社員「・・・○○さんには悪いことをしたと思っています・・・」

私「○○さんをはじめ被害者たちは,あなたたちによって老後のお金を失ってるんです。あなたも私の強制執行によって老後のお金をとられるかもしれません。かわいそうだと思わなくもないが,自分たちがしたことからすれば自業自得だし,被害者たちの気持ちが少しはわかったでしょう。」

元社員「・・・」

私「そういうわけで申し訳ないですが,強制執行はやめませんので,ご理解ください。」



また,別の事件では,破産した会社の元代表取締役から交渉したいと電話がかかってきてました。

私「なぜあなたは会社だけ破産させて,自分は破産しないのですか?本当はお金が残っているんでしょう?」

元代表取締役「いや,お金はありません。破産しないのは,この業界は世界が狭く,破産すると評判が悪くなり,この世界で再起しにくくなるからです。」

私は,またもブチギレしてしまい,「あなたはまだこの業界でやっていくつもりですか?」「せっかく法改正で,この仕事がしにくくなったのだし,人を損させて儲ける仕事じゃなくて,もっと人に喜んでもらう仕事をしなさいよ。」

元代表取締役「はあ・・・」


このようなことを言っても,被害者のお金は全額戻ってくるわけではないですし,加害者も改心してくれるとは限りません。
所詮は自己満足なんですが,被害者のことを考えたり,少しでもこのような被害を減らしたいという気持ちから,つい言ってしまいます。


仕組み債,仕組み投資信託の事件

2011年06月05日 | ⑨投資被害
私は,弁護士になって何か専門を作ろうと思い,師匠の津久井進弁護士(今や知る人ぞ知る震災弁護士です。)の指導の下,先物被害事件を始めました。
最初は先物被害事件以外やるつもりはなかったのですが,証券被害事件,一般の消費者被害事件と広がってきました。
第2の師匠である神戸の内橋一郎先生(みのり法律事務所)のお導きがあったからです。

証券会社・銀行の仕組み債,仕組み投資信託について,私自身は,平成21年3月の全国先物取引被害研究会の仙台大会で新保恵志東海大学教授(教養学部人間環境学科)のご講演などで関心を持ち始め,平成21年7月の全国証券問題研究会の千葉大会から研究を始めました。

そして,神戸先物・証券被害研究会で仕組み債(特にPRDC債)の研究発表の担当者となり,PRDC債について発表しました。(なんと,この発表がウィキペディアの「仕組債」の記事で引用されました。名だたる諸先輩方を差し置いて,私ごときが仕組み債の記事でウィキペディアで名前が載っちゃいました(ウィキペディア「仕組債」の記事)。ただ,昔の記事なので今となっては少し恥ずかしい内容です・・・)

当時はなかなか資料や判例が少なかったので,苦労しました。
当時は,吉本佳生先生の書籍や講演(著書「デリバティブ汚染」ほか,全国先物被害研究会・京都弁護士会などでのご講演)を中心にネットや数少ない書籍で研究しました。

その後,私は,兵庫県朝来市の仕組み債事件の意見書を書いた大阪の三木俊博先生(太平洋法律事務所)が中心メンバーの一人である大阪の証券被害問題研究会の例会に出入りさせてもらうようになりました。この研究会は,前述の内橋先生にお願いして,三木先生にお許しを頂いて出入りできるようになりました。
おそらく大阪証券被害問題研究会は,日本で最先端の証券被害の議論している研究会だと思います(今は大阪の研究会と言いつつ,神戸・京都・名古屋・東京の弁護士もオブザーバーとして例会に参加している大所帯になりました。)。

その中で,私は,最先端の議論についていこうと必死に頑張っています。

でも,研究ばかり進み,なかなか事件が来ないなあと思っていたら,ようやく事件がちらほら来るようになりました。

なんとかこれから研究も続けながら,実績を作って,信用のある信頼される証券被害弁護士になろうと思っています。

最近,CFDまがいや未公開株などの詐欺的消費者被害ばかりやり,探偵のような,債権回収屋のようなことばかりしていたので(主に力技です),久々に理論的で頭を使えそうな事件が来て,喜んでいます。

本当は,地元の宝塚や川西あたりにも,銀行・証券会社による仕組み債・仕組み投資信託の被害が多いはずです。しかし,みんな泣き寝入りしているのかみなさん全然相談に来ないですね。

結構,低金利の定期預金に悩んでいるお年寄りを中心に,利率の高い定期預金みたいなものとして,こういった商品が定期預金の満期時に勧誘され,リーマンショック等による株価暴落・急激な円高で被害が多発しているはずなんですけどね。

このサイトを見ている方の多くは,年代的に,こういった被害にあまり遭われていないかもしれないですね。