かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

馬場あき子の外国詠94(スペイン)

2018年10月07日 | 短歌一首鑑賞
  馬場あき子の外国詠11(2008年9月)
     【西班牙3オリーブ】『青い夜のことば』(1999年刊)P58~
     参加者:F・I、N・I、T・K、N・S、崎尾廣子、T・S、
         藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部慧子 まとめ:鹿取未放


94 万の起伏の変化に沿ひてオリーブの畑うねり出すアンダルシアより

     (レポート)
 アンダルシアはスペイン南端部の地方で、行政的には一自州をなす。アメリア、カディス、コルトバ、グラナダ、ハヘン、ウエルバ、セビリヤ、マラガの八県からなる。
 アンダルシアは紀元前にタルテソス王国、八世紀にカリフ朝王国があり、十三世紀末までイベリア半島の先進地であった。農業、商業、文化いずれも発展し、高度な都市文化を築いた。その遺産としてグラナダ、コルドバ、アルハンブラ宮殿などよく知られている。地中海、大西洋、ヨーロッパ大陸、アフリカ大陸が交差する地理性、文化性からヨーロッパの玄関と呼ばれ、高い文化を持つ民族のエネルギーがうねりだしていた。その後キリスト教徒によるコルドバ奪回、グラナダ陥落によりアンダルシアは広大な地を貴族に分割され、不毛な大地所有が形成された。
 掲出歌はその歴史の変化を思い、実際アンダルシアのおだやかにうねる丘陵の美しさを視野におさめたところの「万の」であり「起伏の変化に沿ひて」という上の句である。(慧子)


      (当日発言)
★「うねり出す」がこの歌の力(崎尾)
★結句の倒置が活きている(藤本)
★レポーターのように歴史とかに深入りしないで、ここは作者が圧倒され感嘆しているダイナミ
 ックな景が見えればよいと思う。「万の起伏」は起伏に富んだ地形の面白さを言っているのだろ
 う。(鹿取)


     (まとめ)
 整然とオリーブの木が植えられている情景の写真をよく目にするが、日本の茶畑のような単純な丘ではなく、起伏に富んだダイナミックな地形なのだ。その地形に沿って植えられた見渡す限りのオリーブの木、「うねり出す」という表現でみごとに情景がとらえられている。(鹿取)