かまくらdeたんか   鹿取 未放

「かりん」鎌倉支部による渡辺松男の歌・馬場あき子の外国詠などの鑑賞

 

馬場あき子の外国詠76(スペイン)再

2015年10月20日 | 短歌一首鑑賞
  馬場あき子の外国詠9(2008年6月)
      【西班牙 2 西班牙の青】『青い夜のことば』(1999年刊)P53
       参加者:N・I、M・S、崎尾廣子、T・S、藤本満須子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
       レポーター:藤本満須子
      まとめ:鹿取未放


76 ただ孤なるみなし子のやうなるザビエルの心乗せたる秋の雲ゆく

       (レポート)
 4句め、5句めにこの歌の眼目がある。宣教師ザビエルはただ一人みなしごのようにインド、日本、中国へと布教のために旅をする。ザビエルの孤独と天空の秋の雲との取り合わせ、特に夏ではなく「秋」と歌ったところに憂愁の気分も漂っている。
 みなし子と自らを称(よ)びし長明の心にありし詩のやうな空  馬場あき子『ゆふがほの家』
        (藤本)


        (発言)
★「秋の雲」は漂白している心(N・I)
★宣教師は次々に日本へ来て、イエズス会にレポートを書いて送っていた。(T・H)
★日本の国で死にたかったザビエルの心。ザビエルの心はスペインに帰ってきていたのかもしれ  ない。(崎尾)


       (まとめ)
 みなし子とは祖国から切り離された布教のあてどなさを言っているのであろうか。もちろん、ザビエルはたった一人で日本に来たわけではなく、仲間もいたのだけれど。作者達のスペイン滞在は六月初旬なので、「秋の雲」はザビエルが日本に滞在した遠い秋のことを思い描いているのだろう。(鹿取)