徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

ノロウイルス対策~わかりにくい塩素消毒の濃度について

2012年12月18日 06時24分12秒 | 小児科診療
 忘年会シーズンとなり、今年もノロウイルスによる感染性胃腸炎が流行しています。
 今年流行しているのは「変異株」とされ、例年以上に感染者が増えることが想定されるようです;

<ノロウイルス>変異型が猛威 嘔吐物処理は手袋つけて
毎日新聞 12月8日(土)

 ノロウイルスが主な原因となって下痢や嘔吐(おうと)を起こす感染性胃腸炎が猛威をふるっている。国立感染症研究所が全国約3000カ所の小児科で実施している定点調査(11月19~25日)では、1地点あたりの患者報告数が13.02人となり、過去10年での同時期としては06年に次ぐ2番目の流行となった。今年は06年のウイルスが変異した新型が全国の患者から検出され、感染力が強まったことが患者増加の原因とみられている。
 感染研によると、感染性胃腸炎は西日本地域で多く報告されており、ほとんどがノロウイルスによるものとみられている。
 厚生労働省研究班によると、今年1月以降、全国の患者から、従来とわずかに異なる遺伝子を持つ新型のノロウイルスが検出されている。感染研の片山和彦室長によると、ノロウイルスは設計図にあたる遺伝子の違いによって40種類以上に分類されており、今回見つかったのは06年に大流行した「G24」と呼ばれるタイプの遺伝子が変異したものだ。この変異によってウイルス粒子表面の形が変わることで、過去に感染したウイルスを攻撃するヒトの免疫システムから逃れるとともに、増殖する場所の消化管に結合しやすくなるとみられる。また、片山さんは「わずかな変異だが、多くの人にとっては未知のタイプで、急激に流行する可能性がある」と警鐘を鳴らす。
 片山さんによるとノロウイルスは感染力が非常に強いため、患者の便や嘔吐物を適切に処理しないと家庭内や保育園、高齢者施設などで感染が拡大する。2次感染を防ぐには、
▽手洗いを徹底し、指の間や親指、手首までせっけんで洗う
▽調理の前後に必ず手洗いをする
▽嘔吐物を処理するときには使い捨てのマスクや手袋を着用し、新聞紙などに嘔吐物を吸い取らせ、ビニール袋に密封して捨てる。処理する人以外は少なくとも3メートル以上離れる
▽「次亜塩素酸ナトリウム」を成分に含む液体の塩素系漂白剤や殺菌剤で消毒する

--と効果があるという。片山さんは「子供が吐いてしまった時などは、シャワーで洗うとウイルスが舞い上がり、手伝った人は高い確率で感染してしまう。とにかく体を紙で拭き取り、捨てることが基本」と注意を呼びかけている。


 ノロウイルス対策のYouTube動画を見つけました(ミルトンでおなじみのキョーリン製薬作成);
ノロウイルス感染対策 基礎と実践

 これ、勉強になりますね。
 さて、ノロウイルスにはアルコール消毒が無効であるという知識が徐々に浸透してきました。吐物処理の際に消毒する場合は「次亜塩素酸ナトリウム」(一般に入手可能な商品名:ミルトンピューラックス)が有効ですが、そのままでは使えません。薄める必要があります。
 消毒に必要な濃度は以下の通り;

ノロウイルスの消毒方法(食品安全委員会)

 塩素濃度として「最低200ppmが必要」と書いてあります。
 「ppm」って何?という方はWikipediaをご覧ください。ppmは「百万分の一」という意味で、200ppm=0.02%だそうです。
 一方、ミルトンの濃度表記は「次亜塩素酸ナトリウム 1.1 w/v%」というもの。この「w/v %」って何?とまたここでハードルが。
 詳しいことは抜きにしてここでは「w/v % = %」と考えてよさそうです。一方のピューラックスは6%(一部製品のみ10%)でミルトンの6倍の濃さがあります。

 ミルトンを使って調整する方法は以下の通り;

ミルトンで塩素濃度200ppmを調整する方法

 面倒だなあ・・・希釈調整せずに使える消毒剤はないのかなあ・・・と探してみると、ありましたありました;

■ 「ウィルバス

 しかし濃度表示を見ると「100ppm」。あれ、これじゃ薄くて消毒効果が期待できないんじゃ・・・人気商品らしく品切れ状態ですが、吐物・汚染物の消毒には不向きなようです。皆様、ご注意を。
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