徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

2019年10月初旬、インフルエンザ流行状況

2019年10月06日 07時41分17秒 | 小児科診療
 2019/20年シーズンのインフルエンザは、9月初旬に小流行がありました。

前橋市内の幼稚園でインフル学級閉鎖 異例の早さ 園児4人感染
2019/09/06:上毛新聞
 前橋市内の幼稚園で複数の園児がインフルエンザに感染し、同園が3、4の両日、学級閉鎖を実施していたことが5日、分かった。県内では今季初。インフルエンザは例年11~12月に流行が始まり、この時季での集団感染や学級閉鎖は異例だ。前橋市保健所などは流行が早まる恐れもあるとして、手洗いやうがいなどの予防対策の徹底を呼び掛けている。
9月に入り東京や千葉、和歌山などでも
 同保健所や県保健予防課などによると、同園でインフルエンザの感染が発覚したのは8月末。診断を受けたのは園児4人で、全員快方に向かっているという。園は医師の判断なども踏まえ、一部の学級を閉鎖し、5日に解除した。
 同保健所は、市内の他の地域では発生していないことから、同園など限られた範囲で一時的に感染したものの、「まだ流行という水準ではない」とみている。インフルエンザの発生動向調査を始めるのは毎年9月以降であることなどを理由に、「今回の発生動向や園の名称などは発表しない」としている。
 季節外れの感染となったルートや原因について、同課は「流行している地域や海外からの感染が考えられる」と指摘する。
 インフルエンザの感染は例年10~11月から報告数が増え、12~2月に流行のピークを迎え、3~4月に終息する。シーズン前の現時点ではワクチンが流通しておらず、例年10月以降に実施される予防接種を受けることはできないという。


 その後小休止。
 しかし9月下旬になってまた流行のニュースが目立つようになりました。
 群馬県内でも、前橋市の中学校で学級閉鎖の記事が;

インフル今季初、群馬県内で学級閉鎖 前橋の中学校
2019.10.1:産経ニュース
 前橋市は30日、市立第七中でインフルエンザの集団感染が発生し、今月1~3日に1年生の1クラスを学級閉鎖にすると発表した。県内のインフルエンザによる学級閉鎖は今季初で、昨季より約2カ月早い。
 市保健予防課によると、クラスの生徒35人のうち1人が9月25日に発熱を訴え、30日に8人が欠席。6人が簡易検査でインフルエンザA型と診断され、2人がインフルエンザのような症状を訴えた。


 A型ですね。
 しかし、当院の近隣の小中学校ではB型が出ています。
 どの型がメインに流行するのか、注視する必要があります。
 なぜかというと、流行する型により、抗インフルエンザ薬を使い分ける必要があるかも知れないからです。
 しかし待てども待てども、学会レベルの指針は公表されていません(早くしてくれないかなあ)。

 さて、全国レベルでも今年は流行の立ち上がりが早いという情報;

インフル、2カ月早く流行の兆し、ラグビーW杯で感染拡大恐れ 
2019.10.5:産経ニュース
 インフルエンザが例年より2カ月近く早く流行の兆しを見せている。9月に沖縄や九州を中心に患者数が急増し、東京でも一時、流行の目安とされる1医療機関当たりの患者数が1人を上回った。国内で開催されているラグビー・ワールドカップ(W杯)にはインフルエンザが流行中の南半球の参加国が多く、来日した外国人患者から感染が拡大する可能性もあり、警戒が必要になりそうだ。
 厚生労働省によると、全国約5千の定点医療機関から報告された1機関当たりの患者数は、9月の2週目に1・17人と流行の目安の1人を超え、3週目も1・16人となった。都道府県別では1人以上が10都県に上り、東京は3週目に1・06人だった。
 9月に患者数が特に目立ったのが沖縄だ。1週目に34・10人と1機関当たり30人を上回る「警報レベル」となり、3週目には52・22人まで増えた。国立感染症研究所(東京)によると、A型H1N1亜型が主に検出されている。
 感染研感染症疫学センター第2室の砂川富正室長は「若年層でよく報告される型で、新学期に学校が始まり、感染が拡大したのではないか」と推測。国内での流行は例年12月上旬ごろだが、「亜熱帯地域などでは1年を通して、インフルエンザウイルスが見つかる。沖縄でも近年夏に流行することがあった」と話す。
 9月の4週目は全国平均が0・92人とやや落ち着いたものの、昨年同時期(0・21人)と比べると4倍を超え、例年より患者数が多いことに変わりはない。砂川氏は「沖縄の患者数が突出して多いため、全国的な流行とはまだ言えない」とした上で、「最近は国内外の人の移動が活発で、海外の流行地からウイルスが持ち込まれることもあり得る」と指摘する。
 W杯観戦など人出が見込まれる場所に行く際は注意が求められる。東京都立駒込病院感染症科部長の今村顕史(あきふみ)医師は「10月は文化祭や運動会などイベントが多く、行楽シーズンでもある。子供や高齢者ら重症化しやすい人や流行地近くに住む人は早めにワクチンを接種してほしい」と呼びかけている。


 従来、冬のインフルエンザは渡り鳥が運んでくると説明されてきました。
 しかしグローバル化した現代社会では、外国から来日する人間が運んでくることが多いような気がしてきます。
 沖縄旅行、外国人観光客、ラグビーワールドカップ、
 などがキーワードでしょうか。

早くもインフルエンザの流行中! 暖かくなる10月以降はどうなる?
2019/10/05:ウェザーニュース
 東京都感染症情報センターは9月27日、都内のインフルエンザ患者報告数が増加し、「流行開始」の目安となる数値を上回ったことを公表しました。
 例年の流行開始時期より2ヵ月ほど早く、都はこまめな手洗いや室内の加湿など、例年の冬場並みの予防策を早めに取るよう呼びかけています。
例年より10倍の流行
 国立感染症研究所の速報データによると、第38週(9月16日〜22日)の全国のインフルエンザ患者報告数は5716人で、定点あたりの報告数は1.16人となりました。過去3年の同時期の報告数(定点あたり)は、0.14(2018年)、0.18人(2017年)、0.12人(2016年)なので、10倍前後の流行状況となっています。
 患者数が多い都道府県を見ると、特に沖縄県が52.22人と突出して多く、佐賀県(2.03人)、宮崎県(1.63人)、福岡県(1.60人)、長崎県(1.14人)、鹿児島県(1.08人)、大分県(1.03人)と、九州各県が続いています。
 九州以外では石川県(1.44人)、東京都(1.06人)、高知県(1.04人)が1.0人を超え、「流行開始」状態となりました。

気象との関連性はいまのところ不明
 例年より早いインフルエンザの流行に、「異常気象のせいでは」「日照時間が短かったのが原因?」など、不安の声も上がっています。
 これについて岡山理科大学生物地球学部の大橋唯太(おおはし・ゆきたか)教授は、「9月の気温が例年に比べて低いとはいえず、気象と今年のインフルエンザの早い流行との関連性は、いまのところ説明がつきません」と話しています。
 気象庁の10~12月の3ヵ月予報によると、平均気温は北・東・西日本で高い確率が50%、沖縄・奄美で平年並みまたは高い確率がともに40%と、暖冬傾向を示しています。大橋教授は「10月以降は比較的暖かい気候が続きそうなため、気象の観点からはインフルエンザの流行がこれ以上の状態で進むとは考えにくいですが、さらなる流行は12月以降の気候がカギになってきます」といいます。
 「12月には例年空気中の水蒸気量が落ち込む時期があり、それがインフルエンザの流行と同期しています。今後も気温や湿度が落ち込むタイミングを注意深く見守っていきたい」と話しています。


 厚労省はワクチン対策を指示しました。

インフル患者、昨年同時期の4倍超 厚労省、ワクチン供給前倒し依頼
2019.10.4:産経ニュース
 厚生労働省は4日、全国約5千の定点医療機関から9月29日までの1週間に報告されたインフルエンザの患者数が4543人だったと発表した。1医療機関当たり0・92人で、前の週の1・16人を下回り、流行入りの目安となる1人を切った。一方、昨年同時期(1021人)の4倍超と例年より患者数が多いため、同省は4日、ワクチン製造メーカーなどに供給の前倒しを文書で依頼した。
 厚労省によると、1医療機関当たりの患者数が1人を超えたのは6県。沖縄が34・72人と突出して多く、鹿児島2・16人、佐賀1・69人と九州が多かった。前の週に1・06人だった東京都は0・96人に減ったが、学級閉鎖は、9月2日からの累計で40施設になった。
 インフルエンザは例年12月上旬に流行入りすることが多いが、今シーズンは9月に沖縄を筆頭に九州で患者数が急増した。
 医療機関では、今月1日からワクチンの接種を開始。厚労省によると、今シーズンのワクチン供給量は、昨年の使用量(2630万本)を上回る約2933万本を見込んでいる。同省健康課は「例年より流行入りが早い可能性に備え、メーカーや卸売業者は在庫分も医療機関に納入し、ワクチン不足を防いでほしい」と話している。


 なぜ早く流行が始まったのか、考察している記事はこちら。
 やはり、訪日外国人が多いことを指摘しています。

沖縄県のインフル夏季流行から見えるもの 変革を迫られる令和時代のインフルエンザ対策
2019/10/3:日経メディカル
 夏休み明けからインフルエンザの大流行が続く沖縄県。9月には、この時期としては10年ぶりとなるインフルエンザ警報が発令された。夏季のインフルエンザ流行では高齢者の重症化が懸念されており、今回の沖縄県での流行を通じて、現行のインフルエンザ対策をシフトチェンジしていく必要性も浮かび上がってきた。
 今シーズンのインフルエンザは異常な立ち上がりを見せている。第38週(9/16~9/22)時点で、既に10都県で流行期入りした(関連記事:今期のインフルエンザ、異常な立ち上がりに)。その中でも、患者総数の過半数を占める沖縄県では、8月に注意報が、9月に警報が発令された。さらに、第37週には定点当たりの患者報告数が50人を超え、この時期としては2000年以降の最高値を記録する異例の事態となっている。
 いったい何が起こっているのか。
 同県における夏季のインフルエンザ流行は、今年に限った話ではない。沖縄県立中部病院感染症内科・地域ケア科の高山義浩氏は「沖縄では、2005年のサーベイランスで初めて夏季のインフルエンザ流行が確認されて以来、数年に1度のペースで夏季に大きな流行を認めている」と話す。一方で、今年はこれまでの沖縄県におけるインフルエンザの流行パターンから逸脱している点が複数みられるとも指摘する。
 1つは流行曲線の違いだ。これまでは、夏と冬の流行期以外は流行が落ち着くような二峰性を示していたが、今年は「春先に鎮静しないまま夏季の大流行につながったという印象」と高山氏は話す。
 また、罹患者の年齢分布も異なっている。これまで冬季は15歳未満の感染が多く、夏季の流行の中心は高齢者だった。だが、今夏の流行では15歳未満の感染が過半数を占めている。

夏季のインフルエンザは海外からの持ち込み例か
 沖縄県において夏季にインフルエンザが流行するメカニズムの詳細は明らかになっていない。高山氏は「インドネシアやシンガポールのような赤道直下では年間を通じて流行しており、6月から9月に吹くモンスーンとともに北上し、他の東南アジア諸国へ拡大していく。こうした地域からの旅行者がウイルスを沖縄に持ち込むことで、沖縄での夏季の流行が起きている可能性がある」と分析している。
 加えて近年、沖縄県ではエアコンの普及が進み、閉めきった乾燥寒冷環境が増えているという指摘もある。夏季のインフルエンザが海外からの輸入感染症であるならば、他の地域で流行する可能性も否定できない。実際、今年の夏は東京でも定点当たり報告数が1.06人となっており、外国人旅行者の影響である可能性もある。「沖縄でなぜとりわけ夏季のインフルエンザ罹患者が多いのかについては、今後も引き続き検討していく必要がある」と高山氏は話す。

夏季のインフルエンザは重症化しやすい
 では、この夏季に流行するインフルエンザに対して、医療現場ではどのように対応すればよいのだろうか。
 夏季の流行においては、ワクチンの効果が減弱していることに注意が必要だ。ワクチンの免疫持続期間は約5カ月といわれており、10~12月に接種した場合、夏前にはワクチンの効果が薄れている。そのため、ワクチン株と夏の流行株が一致したとしても、ワクチンによる集団免疫効果は期待できないし、重症化予防効果もほとんど期待できない。
 中でも留意しなければいけないのは高齢者の重症化だ。「インフルエンザはもともと高齢者にとってインパクトの大きい疾患。当院でも、65歳以上の患者がインフルエンザで入院した場合の死亡率は約5%に上る」と高山氏。実際に、就学児の罹患率が例年よりも高かった沖縄でも、入院患者に占める割合は高齢者が高い。
 高齢者の中でも「生活習慣病のコントロールが不良の患者は、重症化しやすい傾向にある」(高山氏)。新規のワクチン供給がない夏季において高齢者をインフルエンザの重症化から守るためには、「手洗いの徹底やマスクの着用はもちろんのこと、生活習慣病のコントロールが何よりも重要」と訴えている。

令和時代のインフルエンザ対策は変革が必要
 高山氏は、高齢者施設におけるインフルエンザ対策が不十分であることも指摘する。学校や幼稚園・保育所では、学校保健安全法によりインフルエンザの蔓延予防策がとられているが、高齢者施設においては同様の法律は存在しない。各施設での感染対策は現場の判断に任せられており、施設間で感染対策にばらつきがあるのが現状だ。
 「公衆衛生学的な対応が取りにくい高齢者施設で、子どもたちよりも圧倒的に重症化しやすい高齢者が感染の危機にさらされているのが、令和時代のインフルエンザ対策で注目すべきポイントではないか」と高山氏は話す。
 もっとも、高齢者は子どもよりも活動量が少ないため、ウイルスの持ち込みルートを特定し、遮断することは学校よりも容易なはず。「高齢者施設においては、介護職によるインフルエンザウイルスの持ち込みが最も懸念される。介護職に対する公衆衛生学的な介入を行政が主体となって行うことが、救急指定病院や地域医療を守ることにもつながるはずだ」と高山氏は話している。
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