徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

新登場の抗インフルエンザ薬「アビガン®」

2014年09月19日 05時49分39秒 | 小児科診療
 2014年に承認された抗インフルエンザ薬、アビガン®(一般名:ファビピラビル、富山化学)は今までのノイラミニダーゼ阻害薬(NA阻害薬)とは作用機序が異なります。NA阻害薬は細胞内で増殖したウイルスが出ていくところを阻害することにより効果を発揮するのですが、アビガン®は「RNAポリメラーゼ阻害薬」として細胞内増殖を阻害する薬です。
 わかりやすい図をネットで見つけました;

アビガン(ファビピラビル)とタミフル・イナビル・リレンザの作用機序の違いは?
(2014年2月6日:ファーマシスタ)




 その効果、適応についてはこちら;

【新薬】ファビピラビル(アビガン)新機序の抗インフルエンザ薬が承認を取得
(2014/6/20:日経メディカル)

(下線は私が引きました)
 ・・・適応は「新型または再興型インフルエンザウイルス感染症(ただし、他の抗インフルエンザウイルス薬が無効または効果不十分なものに限る)」で、用法・用量は「1日目は1回1600mg、2~5日目は1回600mgを1日2回経口投与し、総投与期間は5日間」となっている。
 ・・・実験レベルではヒト由来のA、BおよびC型の全ての型・亜型のインフルエンザウイルスに対して効果を示し、鳥や豚由来を含めた各種の株に対しても幅広い抗ウイルス活性を示すことが確認されている。さらに、同じin vitroではあるがアマンタジン(商品名シンメトレル他)、オセルタミビルおよびザナミビル耐性インフルエンザウイルスに対しても抗ウイルス活性を示すことが確認された。
 ただし本薬の承認に当たっては、承認条件として国内での薬物動態試験の実施などが求められており、その解析結果が公開されて必要な措置が講じられるまでは、厚生労働大臣の要請がない限りは、製造できないこととされている。また発売後も、国が使用の必要があると判断した場合のみ患者への投与が検討される薬剤であるとされ、通常のインフルエンザウイルス感染症に使用されることのないよう、厳格な流通管理を行うことを求めている。
 なお本薬は、動物実験で催奇形性が確認されていることから、妊婦または妊娠している可能性のある婦人には禁忌である。また本薬は精液中に移行するため、男性患者に投与する際は、投与期間中および投与終了後7日間、性交渉時に有効な避妊法の実施を徹底するように求めている。


 ということは、タミフル、リレンザのようにインフルエンザと診断された患者さんに希望あらば制限なく処方できる、過剰使用が問題になるということにはならないようですね。
 一方、この薬剤は別の観点から注目を浴びるようになりました。エボラ出血熱への有効性が期待されているのです;

【エボラ出血熱】日本のインフル治療薬「アビガン」に脚光 マウス実験で効果
(2014.8.14:産経新聞)
 過去最悪の大流行に、WHOが未承認薬についても一定の条件下で患者への投与を認める考えを表明する中、にわかに注目を集めているのが国内の製薬企業が開発したインフルエンザ治療薬「アビガン(一般名・ファビピラビル)」だ。
 アビガンは富士フイルム傘下の富山化学工業(東京都新宿区)が開発し、今年3月、既存の治療薬の効果が出ない新型インフルエンザなどに限って製造販売が承認された。厚生労働相の要請を受けて製造されるため、流通はしていない。
 富士フイルムによると、アビガンは増殖したウイルスの放出を防ぐ従来のインフル治療薬と異なり、ウイルスそのものの増殖を防ぐ。インフルエンザウイルスと特徴が似ているエボラウイルスにも効果が期待され、海外でのマウス実験ではエボラ出血熱にも効果が確認された。同社は「米国のパートナー企業を通じ、エボラ出血熱の治療にアビガンが使えるよう、米国での治験に向けた協議をしている」と話す。
 国内でもエボラ出血熱の発生に備えて期待が高まるが、現状ではアビガンの使用はあくまでインフルエンザに限られている。
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