BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

Sウェルター級12回戦

2011-07-10 16:09:03 | Boxing
ポール・ウィリアムス VS エリスランディ・ララ

ウィリアムス MDで勝利

考察 ~ウィリアムス~

管理人採点では116-112でララ。
この採点はcontroversyを呼ぶこと間違いない。

初回、いきなりいい右フックをもらった直後にクリンチからの押し相撲で倒されたが、
あの時点ですでに効かされていたのか?
前回の敗北を引きずらないところは流石といえるが、
この路線で戦い続ければアゴがハーンズになるのはもう時間の問題だ。
中盤以降はインターバルごとにコーナーでうがいをしていたが、
吐き出す水の赤いこと赤いこと。
サウスポーの左をもらいまくるという技術的な悪癖が修正されていないのは
予想外とも言えるし、予想通りとも言える。
前回記事でここを直せば地味なボクサーになると書いたが、
陣営がその方針を選ばなかっただけのこと。
花実兼備のボクサーというのは理想ではあるものの、
そう簡単には作れないものだ。

それにしてもまるでS・マルチネスやC・キンタナとの初戦をなぞるがごとくの展開と結果。
これはリマッチが必須だろう。
そのリマッチの結果がどうなるのかは、
一にかかってウィリアムスの変化(≠成長)の有無による。
ちなみにマルチネスとのラバーマッチは確実に遠のいたと断言できる。
(そんな必要はないと管理人は思っているけれど)

とにかく頭に血が昇りやすいという欠点を見事に露呈してしまったわけだが、
これは性格的なもので修正するのは難しい。
我々はよく無責任にスポーツ選手を評してメンタルが弱いとか
精神面に問題があるだとか放言してしまう傾向にあるが、
人間の内面をガラリと変えられるものは世の中数えるほどしかない。
すなわち恋愛と宗教。
ボクシングにはその両方のエッセンスがある。
つまり中毒性(addiction)と献身(dedication)。
下田ともども生まれ変わってほしいが、さて。

考察 ~ララ~

リング上で対峙した瞬間にパッキャオvsデラホーヤ、
そしてヘイvsウラディミールの2つの構図が浮かんだが、
その後の展開として近かったのは前者。

絶望的とも思えるフレームの差をスピードで十二分に埋めてみせた。
リズミカルな動きからスピードに乗ることは日本人の同階級にも
出来る選手は探せばいるだろうが、一瞬の静止状態からネコ科の動物よろしく
一瞬でトップスピードに持っていくことができるのは、
やはりそれだけの身体的素養があるからだろう。
また、マルチネス戦の年間最高KOは対戦相手にウィリアムス恐るに足らずの
念を抱かせるに十分で、ララもポーカーフェイスながら自信を持っていたはず。
リゴンドーがコルドバ戦で最後に流したように、
ララもどこか流した感があったが、修羅場をくぐったという経験は大きい。

タンコブと呼ぶにはあまりにでかすぎる腫れに、
何かの弾みでカット → 大量出血 → 負傷判定という結末も
頭をよぎるも、最終ラウンドまで戦い抜いたことで胸をなでおろした。
内藤が出目金かと見紛うほどの腫れを負ったこともあり、
目にまで腫れが及ばないあたり運も味方していると思ったのだが……

記録の上でケチがついたのは痛いが、この選手はSウェルターにおける
A・ウォード的な存在になる予感すらする。
ニュータイプ戦士ララとか高柳氏は最後に絶叫していたが、
インドで精神修養が必要なのはポールの方だろう。

WBA世界Sバンタム級タイトルマッチ

2011-07-10 15:32:27 | Boxing
王者 下田昭文 VS 挑戦者 リコ・ラモス

ラモス 7ラウンドKO勝利

考察 ~下田~

動き自体はキレキレだったが、無駄が多いというか雑というか。
たとえば同階級最強と目される西岡と比較して、
スピード、スタミナ、パンチ力ですら優っていると思われるが、
総合力(全部を足した力という意味ではなく全部を足す力)では負けている。
序盤からスピードとワイルドさで優位に立ち、相手は動き回るだけになったが、
そういう相手を追い回すばかりで、追い詰める手段には乏しかった。
ジョー小泉が右リードの不足を指摘していたが、その通りだった。
事実、右のショートのカウンターは随所でもらっていたし、
左の飛び込み際には左フックを合わされていたし、
ダッキングからの左→右の返しには右を合わされる予感が漂っていた。
それにしても李戦で見せたスタミナと集中力の持続が、
たった一戦で裏切られる結末になろうとは……
7ラウンドいきなりの失速に見えるが、6ラウンドからその萌芽はあった。
まっすぐ入って単発で勝負するように見えたからだ。
失速の理由、背景には異国の気候風土の違い、日本人初の快挙を狙うという心理的重圧、
指名挑戦者への不安と恐怖、アウェーの雰囲気など様々あろうが、
いずれもが敗因であり、そのどれも決定的な要因にしてはならない。
求めらるのはコンディショニングやスキルやメンタル面ではなく、
それらを複合させる力だ。


考察 ~ラモス~

相手が速ければじっくり見てしまうのは洋の東西を問わないらしいが、
この挑戦者は王者のワンパターンの攻めを逆に責めてきた。
すなわちカウンターの右と左フック。
事前に強調されていた遠い距離からのいきなり左右は一発もなく、
序盤はすべて王者の注文通りに展開していくのかとすら思えた。
欲がない性格なのか、それとも見た目以上のathleticismを持たないのか、
消極的にカウンターを狙うばかりで、これはこれで有効だが決め手になるのか
と疑問を抱き始めたところで唐突にフィニッシュが訪れた。
こればかりは下田本人でないと分からないが、
スタミナ切れなのか打ち疲れなのか打たれ疲れなのか、
はたまた流血の原因となったバッティング(だったような)が予想外に効いたのか。
王者を攻略したというよりは相手が勝手にコケた印象の方が強い。

随所に上手さは見せたが、安定王者の風格はない。
弱みを見せなかったが、さりとて強みも見せられず。
リゴンドーとの統一戦が行われなければ、ドネアの4階級目の格好の標的か。
あるいは帝拳を始め日本から刺客を送り込めるか。