BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBA世界ヘビー級タイトルマッチ

2009-11-09 23:33:18 | Boxing
王者 ニコライ・ワルーエフ VS 挑戦者 デビッド・ヘイ

ヘイ 2-0判定で勝利

考察 ~ヘイ~

"Hey world heavyweight champion!"
"Heh?"

って感じかね?

ヨーロッパの観客はこの試合に『トレドの惨劇』の再来を期待していたのか。
youtubeで観たことがあるが、デンプシーの左右のつま先が
あるいは地を噛みしめ、あるいは地を抉るデンプシー・ロールは
ヘイのような上半身主導のボクサーには使えないだろう。
build up あるいは pump up された肉体ではなく
naturalに仕上がった肉体でないとできないmaneuverだからだ。
閑話休題。
勝ちに徹するのは悪いことではない。
むしろ推奨されてしかるべきだ。
問題なのは戦前の口の悪さで、
そこまで言うならKOするかKOされないと駄目だろう。
鼻先でパンチを回避し続けるのはリズムと集中力を要するが、
カウンターを取る気がないのなら、緊張感は必要ない。
が、相手の巨大さに飲まれたか、自身のプランを遂行しつつも
心身のスタミナは確実に消費されていたように見えた。
最終回に王者を千鳥足に追い込んだが、
このダビデは最後まで投石機を使わなかった。
自分で自分の商品価値を下げてどうする。

ひとまずヘビー級への新風を歓迎するべきか、
それとも新たな停滞の始まりを予感すべきか。
ヘイ対クリチコのcatchphraseは”ジェリコの壁”かね。

考察 ~ワルーエフ~

ジャブに磨きをかけたのが裏目に出た。
結果論だが、ワン・ツーから返しのショートアッパーが有効だったのでは?
ジャブでコントロールするのはセオリーだろうが、
相手は小柄、自身は規格外の巨体ではセオリーは機能しない。
ジャブでコーナー、ロープに追い詰められないなら、
フェイントとプレッシャーを駆使すべきだ。
追いかけるのと退がらせるのでは相手の消耗度はケタ違いで、
前者は心地よい汗、後者は脂汗たらたらとなる。
それができなかったのは自身のアゴに不安があった?
抱きついての密着体勢からボディを打つなどできれば
ヘイをガス欠に追いこめただろうが、何を言っても今は歯がゆい。
ポイントをもらえなかったのは不幸と言えるが、
ジャブをついてポイントを稼ぐのは巨人ボクサーではない。

WBC世界Lヘビー級タイトルマッチ

2009-11-09 23:20:47 | Boxing
王者 ジャン・パスカル VS 挑戦者 シルビオ・ブランコ

パスカル 10ラウンドTKO勝利

考察 ~パスカル~

アンドレ・ベルトをさらに気弱にしたようなボクサーだ。
コンビネーションではなくキレのいいパンチをつなげていくスタイルで、
人種に固有の筋肉のばねとしなやかさはR・ジョーンズに通じるものがある。
ただし、超人ジョーンズとの違いは、相手が打ってこない時にしか打てないこと。
このあたりがベルトを思わせてしょうがない。
跳ねるようなステップワークからはかつてのスタミナ難は伺えなかったが、
打たれ弱さを克服したとは考えられない。
バックギア全開でボディワークを駆使するのは打たれたくない意識の表れ、
諾々とブロックの上を打たせるのは一息つきたい意識の表れに見えた。
ジャブを打たないボクシングはこの選手のフィジカルにマッチしているが、
これで実力者相手に自身の間合いを維持できるのか。
おそらく格下相手には無類のスピードと身体能力を見せつけ、
格上相手にはリング狭しと逃げ回る醜態を晒すのだろう。

考察 ~ブランコ~

引退後は役者にでも転身するつもりか。
何かあるたびにラビットパンチとローブローをアピールするのは
patheticとすら言える。
世界を獲っても防衛できないのはここらへんのメンタリティにある。
43歳なら東洋では不惑のはずだが、イタリアでは戸惑いっぱなしなのか。
スピードに煽られてカウンターを取れなかったのか、
それとも視力や反射の衰えが顕著なのか。
長くボクシングをやるには打たれないことが絶対要件になるが、
この選手のディフェンスは母国ではトップクラスなのだろうか。
ブロックでもボディワークでも一流ならば試合中にadjustする。
ハメド的なボクシングは崩しにくいが、穴も多い。
結局そこを突けるだけの技量に欠けていたということ。