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思索 電子回路 論評等 byホロン commux@mail.goo.ne.jp

技能と品質

2010-11-07 01:28:36 | 安全・品質
ある機器に求められる必要な品質とは、設計時に定められた性能をすべて満足し、動作保証期間において所定の性能を下回らないと判定できることである。

必要な品質は、機器が正しく組み立てられることによって実現する。よって「正しく組み立てられる」ということを、何らかの方法によって保証できれば、機器の品質を保証することに等しい。

では、どのような方法を用いれば、正しく組み立てられることを保証できるだろう。実は、これは理屈としてはさほど難しいことではない。組み立て手順の通りに、また組み立てルールの通りに組み立てればよいのである。もちろん「組み立て手順」「組み立てルール」に一切の抜かりがあってはならない。

一般的には、組み立て手順はマニュアル等の図書によって示され、組み立てルールはマニュアルの中に記述される。組み立てルールは、寸法公差やアライメント誤差など、機器の性能に関係するポイントをすべて指示するものであり、また必要な中間試験等もこれに含まれる。

しかし、いかに秀逸なマニュアルであったとしても、手順の中に、作業のコツや勘所などを含めたすべての工程を示すことはできない。(マニュアルが如何にシンプルであるかということは重要な問題であり、マニュアルの品質を決める)

これから機器を組み立てるベテランの作業者と、まだ新米の作業者を考えてみよう。ベテランはマニュアルの中身はもちろん、作業のコツなども含めてすべて知り尽くしている。新米の方は、まだ時折マニュアルを参照しつつ作業ができるという程度。さて、この二人が各々組立てる機器に品質の差が生じるかどうか。

答えは「品質に差異は生じない」である。なぜなら、両者共に正しく組立てられることを保証する「組み立て手順」「組み立てルール」の通りに作業を行ったからである。ではすべてに差がないのかといえば、そんなはずもない。両者の作業時間、つまり組立てコストには圧倒的な差が生じる。ベテランの知識としての作業のコツや要領は時間の短縮に作用するのである。

ということで、技能レベルは品質に相関するものではなく、コストに相関するファクタとして捉えなければならない。
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